学校現場は、いわゆる学習内容を習得させればよいのではなく、小社会としての学級や学校の中で、ルールや人間関係を学ぶところです。教師は、授業づくりだけをすればよいのではなく、学級づくりも並行して進めなければなりません。
しかし、学習指導要領が変わり、授業時間に対する学習内容が多くなり、詰め込まざるを得ないような状況が生まれています。したがって、学級づくりをする時間は圧迫されていると言えるでしょう。
では、どうしたらよいのでしょうか。
私は、授業づくりと学級づくりを一体化させた「まるごと教育」を実践し、その解決を図っています。その一例を、4月18日の学級通信に載せた文から紹介します。
国語 今年度から約1.5倍のページ数となった国語の教科書をどう使いこなすかが、大きな課題となっています。いくつかの工夫をしながら、教科のねらいを達成するようにしています。その工夫とは、次のようなことです。
(1)新出漢字200字の学習は、「漢字スキル」(新出漢字学習ワーク)を使いながら、教科書の進度に関係なく進めます。とりあえず、一通り学習して、繰り返し反復することで、読み書きの習得率を上げていく予定です。
(2)音読プリントを用いて、古文や漢詩・名文・俳句・和歌などを音読暗唱し、声を出す習慣をつけるとともに、声の響き合いやリズムの美しさを感じる心を育てるようにしています。また、授業の始めに声を出すことで、脳の活性化を促し、学習活動の効率を高めます。
(3)教科書の順番にこだわらず、言葉の学習や音読教材は、適宜、授業に取り入れます。先週も先行して、国語辞典の使い方(p24,p25)や「音読み・訓読み」(p27)、「部首」(p116,p117)に触れる学習をしました。こうした学習は、漢字と同様に、一度習ったからと言って習得できるものではありません。触れる機会を多くとり、繰り返すことが大事だと考えています。
一方、学び方も重要だと考えています。教師が言ったことを覚える学習では、自ら学ぶ力はつきません。そこで、自分たちで考え、追究する学習を行っています。たとえば、国語辞典の使い方で、「あお」「あう」「あか」の中で、最初に出てくる言葉はどれかを考えてもらいました。まず、自分の答えを選んだ後、理由が言える子に説明してもらい、その正しさをみんなで考える活動をしました(写真)。
考えを言える子は、言うことで更に考えを深め、考えが言えない子は、説明を聞いてその考え方と説明の仕方を勉強するのです。どちらも学ぶことになります。
どの子も伸びるような学習を心がけています。この学び方「ティーチ学習」は全教科共通のものです。
算数 算数の第一単元は、「九九を見直そう」です。九九の習得を前提に学習を進めていくわけですので、宿題として「いつでもどこでも九九」を毎日、出しています。細かくチェックをして頂き、ありがとうございます。まずは、九九がよどみなく言えなければ、この学習はもちろん、5月から始まる「わり算」の学習に支障が出ます。授業では、「チャレンジ45」というプリントで、九九を書く学習をウォーミングアップとして行っています。月末には、「百ます計算」に移行したいと考えています。
算数は、だんだん個人差が大きくなってくる教科です。その個人差をできるだけ小さくしながら、どの子も伸びる学習として「チーム学習」(写真)を行っています。簡単に言うと、先にできた子が、つまづいていそうな子に解き方を教えるというものです。「ティーチ学習」と同様に、できた子は解き方を教えるために更に考え、つまづいている子はつまづきを明確にし、少しずつ教わることで理解していくことになります。したがって、どの子も伸びることになるのです。
どのチームが一番早くわかったかを競う形(チーム対抗)をとっているので、「チーム学習」と呼んでいます。ただし、他のチームと比べるのではなく、自分のチームの全員がわかった・できたことを喜んでいます。
つまり、「ティーチ学習」と「チーム学習」により、「学習内容の習得」と「人間関係づくり」ができるのです。教師は、教育の根本・本質・源を教えるとともに、ファシリテーターとして子どもと子どもたちのよさを発揮させれば、子どもと子どもたちは自ら伸びていくのです。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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