北海道は現在、過ごしやすい季節を迎えました。ライラックの甘い香り。僕は6月の札幌が一番好きです。6月はこちらでは運動会シーズン。この記事も運動会を終え、軽やかな気分で書き始めています。
さて、前回の記事に「特別支援教育コーディネーターが学級懇談に入ってくれれば‥」というような事を書きました。特別支援教育コーディネーター(以下コーディネーターと略)の仕事は地域、学校によって微妙に違います。今回は学級づくりの記事から離れて、少しコーディネーターについて(僕の知っている範囲で)書かせて頂きます。
ご存じの方も多いとは思いますが、特別支援教育体制がスタートし、現在ではほぼ全ての学校にコーディネーターが配置されています。細かな数字はこちらをご覧になって頂くのがよいかと思います。
【参照:文部科学省HPより:平成22年度特別支援教育体制整備状況調査 調査結果】
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1306927.htm
幼稚園、小中学校及び高等学校のコーディネーターの方は主に校内の問題に対応されます。お子さんに何か学習上、学校生活上の困難さが見られる場合、保護者や関係機関との調整にあたってくれます。前任の地域では小中学校では特別支援学級の担任の先生が任命されるケースがほとんどでした。山間部などの小規模僻地校では教頭先生が兼務されているケースも多く見ました。配置があっても機能していなかったり、配置が無くても良い支援をしていたりなど数字からはなかなかそこにいる子ども達の事が見えませんね。ちなみに「個別の教育支援計画」の策定状況の調査は学校で一人でも作っている実績があれば○がつくので(こちらの地域ではそのような集計方法でした)必要な子全てに作られているのかどうかはわかりません。
特別支援学校のコーディネーターは主に「特別支援学校のセンター的機能」を担っています。特別支援教育の地域における相談所といった所でしょうか。相談業務や教材等の貸し出し等‥細かい部分は下記リンク参照ということで割愛させてもらいます。
【参照:文部科学省HPより:平成21年度特別支援学校のセンター的機能の取組に関する状況調査について】
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1298041.htm
僕の所属する学校は特別支援学校ですので、コーディネーターは外部対応が主な仕事になります。内部の調整は学部主事の仕事になります。学校によってはコーディネーターを外部担当と内部担当を分けて配置しているところもあります。複数の配置があってもそれぞれ仕事の内容が違ったりしますので、配置数がそのまま地域支援に力を入れている数とはなりません。数字は本当に難しい。
さて、僕が業務に就いていたのはH19~H21で、助走期間を経て本格的に特別支援教育の普及と体制整備を進めていた頃です。業務的には上からは「『個別の教育支援計画』『個別の指導計画』を作らせなさい。それがあなたの仕事です。」などとハッパをかけられていました。事業の予算づけの根拠は上記資料の数字の低い部分を上げるためですので当然といえば当然です。しかし現場のニーズとの差も感じました。 体制といった形はとりあえず作ることができます。発達障害等の理解も研修を何回かした実績があれば「やりました」と言えます。僕が最後まで業務で行っていた中心となる部分は「理解」のお手伝いでした。
はじめの年は地域の療育機関に赴き保護者から直接相談を受ける事が多かった為、現場の状況が良くわからずにいました。はじめは「理解の無さ」に対する怒りに似た感情を保護者と共に現場に感じた事もありました。福祉機関の方とお話しできる機会が多かったため、「こういう相談が来たが何とかならないか」といった依頼もありました。しかし、現場にニーズがない限り、押しかけていって支援させて下さいと言うわけにもいきません。形があっても何をして良いか分からない時期を過ぎ、徐々に学校からの相談にシフトしていきました。信頼を得るようにつとめて口コミ的な広がりを見せていたように感じています。
こういうタイプの子にはこうしたら良いと言ったことは本に書いてあります。マニュアル的な物を現場で話して帰ってくる事にあまり意味合いを見いだせませんでした。スーツを脱いで授業の様子を見せてもらい、休み時間一緒に遊ぶ。保護者や先生の話を徹底的に聞く。目の前のその子を理解するために現場の先生と一緒に悩みすぐできることから段階的に作戦を練りました。その時には担当の先生の良いかかわりや良い指導を見つけストレートに褒めるよう意識していました。上手くいかないからこそ相談し自信を失っている先生方も多く、悩む先生ほど良い指導をしようと努めている方が多かったと記憶しています。
受け持ちエリアが広いため1回の支援先への訪問が往復100kmなんてこともざらでしたし、旅費の制約上多くても年間5回程度の訪問。間接的な支援に過ぎないのでできるかぎり現場が考えて動いてもらうようにしなければなりません。目の前の子を理解し、何が必要かを理解し、どのように考えて行けばよいかを理解できれば自然と行動が伴います。それと力づけていくこと(エンパワメント)。久しぶりの訪問で「自分たちで考えてこうしてみました。」「先生と考えた指導をこう改善してみました。」という瞬間と子どもの生き生きとした表情を見られた時が一番「役に立てたかな」と思える時でした。今はここが一番大事だったと思います。コーディネーターの仕事はエンパワメント~子どもを 保護者を 先生を 学校を 地域を
「形」の話はその後。組織を効率的に進めるためにとか、計画と評価をまとめておけるためになど、入れる中身があって初めて器の話ができたような気がします。管理職から「今更『理解』の時期じゃないだろう?」とか「まだ支援計画作れてないなら、作らなければ支援しませんって言えば?」などと冗談交じりにアドバイスをいただきましたが、遠回りの方法でしかできませんでした。
2名で年間300件以上の相談業務をおこなってきましたが、やる気の問題ではなく僕のいた所の地域性もあったのではと思います。大都市と違い相談できる場所も少なく、また小さな県一つ分のエリアを1校でカバーしましたので業務的には上限ギリギリの件数でした。支援の方法も良かったかどうかはわかりません。一緒に悩まれるより、もっと「こうして下さい。」といった的確かつ専門的な物を求められていたのかもしれません。自分のできること自分がして欲しいことしかできませんでしたから。
本校にも対外的な業務を行うコーディネーターは1名配置されています。政令指定都市の市内にのみ学区を持つ道立学校ですので予算の関係での難しさがあるようです。旅費等は道のお金であること、道教委の事業と市教委の事業は関係しないこと等もあります。基本は市のことは市でやるわけですから本校の対外的な支援件数は低くなっています。ならば校内支援をとも思うのですが「人にとやかく言われたくない」的な風土も現場にまだまだ残っているようですし、支援会議の司会なども人数的に無理なようです。
ただ、現場に戻ってみて外部との連携は個人でなく窓口を通した方がやりやすいと感じたり、指導について誰かに相談したいと思うこともあります。懇談や支援会議等は司会を立てた方がスムーズに進みます。しかし、なにより今は僕のことを褒めてくれたり力づけてくれる人が欲しいですね(笑)。
青木 一真(あおき かずま)
北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。
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