2011.06.13
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人権作文への取り組み

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 先日、子供たちに人権をテーマにした作文を書いてもらいました。

 法務省のホームページには、『法務省と全国人権擁護委員連合会では,次代を担う中学生の皆さんが,日常の家庭生活や学校生活等の中で得た体験に基づく作文を書くことを通して,人権尊重の大切さや基本的人権についての理解を深め,豊かな人権感覚を身につけることを目的として,昭和56年度から「全国中学生人権作文コンテスト」を実施しています』とありますから、中学生を対象にした、本格的な人権作文のコンテストが行われていることがわかります。

 近隣の自治体で小学生対象の人権メッセージ発表会があるため、それをいい機会と捉え、6年生にも作文を書いてもらうことにしたのです。

 「人権」の意味するところは広くて深いものがありますが、私は子供たちに、人権を尊重しあうことを通して、よりよいクラスを創っていこうと提案しました。

 ですから、テーマは「あいさつ」や「協力」、「いじめ」、「個性の尊重」といった、身近な題材を選んだ子供たちがほとんどでした。

 

 さて、作文を書いた後、それをクラスの中で発表しあってはどうかと話しました。でも、私は事前に子供たちの作文を全部読んでいたので、彼らが賛成するかどうかは疑問でした。

 なぜなら、いじめなどについては具体的な指摘が多く、クラスの問題が明確になってしまうし、それを発表することによって、発表した本人の立場が悪くなるのではないだろうかという心配があったからです。

 しかし、それは杞憂にすぎませんでした。子供たちは、自分の考えを発表してのけました。

 中には、「クラスの中で陰口を言う者がいるけど、自分自身は言わないようにしたい」とか、「男子が給食準備中にふざけているのは、協力的ではないから改めてもらいたい」といった内容がありました。

 力強い声、きっぱりと言い切る姿に、大きな成長を感じました。

 

 全員の発表が終わってから、子供たちに感想を言ってもらいました。これからどんなことを、どんなふうに頑張っていきたいかという内容で話すように促しました。

 子供たちは友達の意見を謙虚に受け止め、自分自身の反省等も含めて感想を述べていました。

 私は、彼らを担任して以来、毎日様々な角度から、ずっと彼らの心を耕すような指導を心がけてきました。でも、まだまだ課題はあります。そのような中で、今回は担任からの指導ではなく、友達からの指摘によってクラスを見直そうという、有意義な取り組みになりました。

 

 こんなにも、子供たちの心に染み込むような取り組みなら、もっと早い時期に行っておけばよかったのではないかとさえ思いました。担任からの指導だけでは、大きなインパクトを与えられないのだと反省もしました。

 しかし、自分の意見を堂々と言えるような雰囲気や、友達の意見を素直に受け入れられる心が育つには、長い時間が必要だったのだろうとも思いました。

 

 ところで、今月末から行われる榛名への移動教室を控え、6年生はあわただしい毎日を過ごしています。今回ご紹介した人権作文への取り組みだけではなく、様々な授業を通して仲間作りの充実を図っています。友達と二泊三日という長い時間を共にするのですから、さらによい人間関係を築いてから出発したいと思います。

 「自分にもいい、相手にもいい」

 そんな関係を強固なものにして、移動教室の思い出をたくさん作ってほしいと願っています。

 

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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