2011.06.09
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センス・オブ・ワンダーとデジタルコンテンツ

栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭 鷺嶋 優一

レイチェル・カーソンを知っていますか?

小学校学習指導要領の完全実施に伴い、各教科の教科書も新しくなりました。

私の勤務する地区で採択されてた某教科書会社の理科の教科書。うれしいことに表紙に顕微鏡をのぞいているレイチェル・カーソンのカットが挿入されているではありませんか!

ご存知の方も多いでしょうが、レイチェル・カーソン(1907~1964)はアメリカの海洋生物学者でありベストセラー作家です。私が生まれる前に亡くなられていますが、自然の美しさ、素晴らしさと共に、その頃から人間が引き起こす環境汚染について警告を発し続けた人です。

著書のタイトルでもある「センス・オブ・ワンダー」とは、不思議さに目を見張る感性という意味です。彼女は子どもが幼いうちからこのセンス・オブ・ワンダーを育てることはとても重要であると説いています。私はこれまでに「失われた森」という本を娘に勧められて読んでいましたが、センス・オブ・ワンダーは未読でした。先月、町立図書館でこの本を見つけました。子供向けに書かれたこの本は60ページほどのかわいい本。あっという間に読み終えてしまいました。レイチェルの文章は詩的であり自然のすばらしさを称える美しい文章が宝石のようにちりばめられています。私はその世界にあっという間に引き込まれてしまいました。読んでいる途中いてもたってもいられず、読むのをやめて双眼鏡を片手に散歩に出たくらいです。

「じっとみる」忍耐強さを育てること

その彼女が、センス・オブ・ワンダーを磨くためには、忍耐強さを育てる必要があると言っています。つまり自然の中で目を見張る事象に出会うためには、時間をかけてじっと見る作業が必要だということでしょう。忙しい現代人が苦手とする部分ですね。しかしだからこそ重要なのだと思います。彼女はその本の中で次のように述べています。

「地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活の中で苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通じる小道を見つけ出すことができると信じます。」(「センス・オブ・ワンダー」新潮社より引用)

理科の授業の基本は、実験・観察

そこで我々教員がふり返ってみる必要があるのは理科の授業です。センス・オブ・ワンダーを育てるためには、学習指導要領にもある通り自然に親しませ実感を伴った理解を図ることが重要です。理科では実験・観察は欠かせません。実験・観察の中で、「じっとみる」忍耐強さも育てていけるはず。しかしそのための努力がどれだけできているか。なかなか難しいところです。忙しい毎日の業務の中で、しっかりと実験・観察の準備をすることは並大抵のことではありません。

デジタルコンテンツをどう活用するか

私は情報教育を推進する立場であり、デジタルコンテンツの効果も実感しています。ただ教科の特性を踏まえて活用していかなければそれはねらいからずれてしまいます。理科に関しては、センス・オブ・ワンダーを育てることを授業の柱に考えていくと、デジタルコンテンツの適切な活用が見えてきます。つまりコンテンツには、実験観察の補助的な役割に徹してもらうということです。またそうしなければいけないのだと思います。私自身これまで安易に使ってしまった反省も踏まえてそう思うのです。

鷺嶋 優一(さぎしま ゆういち)

栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭
この春、勤務校が変わりました。異動したての新鮮な気持ちをダイレクトにつづりたいと思います。そして「ICTと幸せ」についても小学校教育の視点から考えます。

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