2011.06.02
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学級づくり(3)~保護者との懇談

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

 先日まで僕の学校はちょうど懇談週間で、1週間で毎日のように個別懇談が行われていました。
 時間の制約がある中では、学校からの一方的な説明に終始してしまいがちです。
 学校側にまくし立てるように「こうします」「こうしたいんです」と言われてしまうと何も言えずに終わってしまう保護者の方もいるのではないでしょうか。家庭訪問でも同じですよね。(そう言えば、先日妻が息子の家庭訪問のことで似たようなことを言っていました。)
 逆に、こちらからニーズを探ろうと色々投げかけても「おまかせします」というスタンスを崩されない方もいらっしゃったりすると、本当によいのだろうかと不安を覚えることもあるかもしれません。信頼をいただいているのなら良いのですが、何か話をしづらい原因は無かったのかどうか。
 
 通常の小学校、中学校での教育内容は学年進行で決まっていますが、特別支援学校では個々の発達に即して何を教えるかが決まりますから、その点はしっかり説明する責任があります。どのような目標で各教科などでどう教えていくか。こちらは(北海道では)「個別の指導計画」からの説明になります。
 一方、子どもを中心として保護者、学校、福祉や医療などの支援者が手をつなぎ、目標や情報の共有化を行う物が「個別の教育支援計画」になります。こうした「横のつながり」を表す他に、幼児期から成人期までの間の学齢期の情報のリレーのため、バトンとしての役割「縦のつながり」を表す物でもあります。

 今回の懇談週間は「個別の指導計画」作成後ですので「学校からの説明と保護者の同意」が中心です。しかし顔を合わせてじっくり子どもたちの話をする機会はなかなかありません。家庭の様子の聞き取りも含めて話をする事も大切に思います。
 
 学校は一日の1/4程度を過ごすところ。3/4は家庭もしくは地域の中で育ちます。
放課後の福祉サービスを利用している場合もありますが、家庭での生活を抜きにして子どもたちの育ちは語れないと思います。目標を共有し連携を図りながら指導に当たれるのなら理想的ですよね。しかし、家庭は子育て以外の家事や他の家族の生活もあります。学校での取り組みを家庭でもと安易に考えてもなかなか難しい現実もあります。うまくいかなさを抱えつつ、なんとか折り合いを付けながら生活を送っている方もたくさんいらっしゃいます。
 何に困っていて、家庭でもできることは何か、優先順位を付け一つずつ解決できるよう少しでも手伝えるのなら、そのための時間は少しでも作れればと思います。しかしそれは学校の仕事では無いのかも知れません。地域で家族まるごとを支援されている方もいらっしゃるでしょう。ただ、つながっていない場合の連携の穴は誰かがカバーをすることが現実的です。

 指導計画の説明の時間、連携を図るための話し合いの時間、そして学校での姿と家庭での姿を共有する時間。懇談の場ではそれぞれの役割を持たせそれに伴って名称を変えている場合もあります。今回の懇談週間は一年間のスタート、初めて保護者と向き合ってお話しができる場でした。僕自身は懇談が良い共通理解の場になるよう、傾聴と共感を心がけながら必要なことにポイントを絞った説明ができるよう心がけてはいます。そしてなるべく家庭での大変さがあるのならその事を教えてもらう時間もとるようにしています。連絡ノートや登校時に顔を合わせるときでは話せないこともありますから。

 懇談を終え、「しっかり説明ができた」とか「たくさん話しをしてもらえた」とか自分では評価しているのですが果たしてどうだったんでしょう。第三者が同席していると違うのかなと思うことがあります。互いの思いの摺り合わせをしてくれるような。まあ、特別支援教育コーディネーターが役割的には考えられるのですが、小さな個人懇談では難しいでしょうね。

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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