「ずっと働いてほしい」と言われる人の仕事力
先日、本屋さんに立ち寄ったとき、平積みされているのが目にとまり、そのタイトル(というか、表紙のデザイン)に惹かれ、思わず買ってしまった本があります。『「ずっと働いてほしい」と言われる人の仕事力』(山本幸美:著、ぱる出版)がそれです。
特に、オビの部分に書かれていた、選ばれるヒトに共通するのは「一緒に働きたい」と思われること・・・っていうコトバに魅せられてしまいました。
かつて株式会社リクルートでトップセールスとして活躍し、その後コンサルタントとして1万人以上のキャリアカウンセリングを実施してきた著者が気づいた、ビジネスマンとしての最高の評価は、「あなたにずっと働いてほしい」と言われることだそうです。
そのために大切なのは、短期の営業実績を上げることでも、企業が求めている(と思われている)キャリアを積み重ねることでもありません。もっと奥深い、根底にある「日々の経験以上の『気づき』に出会うこと」。
この本では、そういった気づきの積み重ねがあなたを成長させ、「一緒に働きたい」という最高の評価につながっていくのだということを、筆者自身が経験してきた数多くの学びを通して説いています。
ボクの出会った「一緒に働きたい人」
さて、本の内容はともかく、まさにこのことを現実に見たような出会いが、ここ何日か続いています。10日ほど前に出会った、東京からの教育関係者もそうでした。
詳しくは書けませんが、その日のTwitterに、ボクが「夢・・・じゃないな、目的?信念?大切にしたいこと?生きざま?・・・を共有できる人との語らいは、時間を忘れる。と同時に、時間以上の満足感を与えてくれる。この先に向かっての希望もあわせて。」というコメントを思わずつぶやいてしまったほど、充実した時間でした。
そして数日後、またもや「おもしろい?」、いや「ゆかいな?」。う~ん、なんか違うような気もしますが、まあ、ひとことで言えば「真正面からガッツリきたでぇ~」みたいな感覚を、お互いに初対面でありながら感じ取れたような、不思議な出会いがありました。
相手は、某ホテルの営業さんです。その日は後日、本校が主催するイベントの打ち合わせで会うことになっていました。約束の午後3時、彼はやってきました。お決まりの名刺交換と簡単なあいさつの後、テーブルに対面して座り、おもむろに話を始めようとしたところ、何やら目の前でカバンをゴソゴソする彼・・・。いったいどうしたの?
「すいませ~ん」。あまりにも軽い調子で何を言い出すかと思ったら、「今日の資料のファイル、一式忘れてきました」。しばらくこちらの顔色を見て、思案しているような時間が流れた後、「これから取りに帰っていいですか?」。
いやいや、それはないでしょう。「今日は何のために来たん? 資料がなくちゃ、打ち合わせも何もできんでしょ~に!」。
普通ならそういうコトバをかけるべきなんでしょうが、どういうわけかその時のボクは「これから取りに帰るって?(この雨のなか大変やん!)」、「他のお客さんとの予定もあるんじゃないの?(少し先のことやし、今日でなくてもいいんやで!)」といったような曖昧な返事をしつつ、気がつけば二人で大笑い。 まったくもって本来の仕事とは違った次元で、一気にお互いの距離感を縮めてしまったのです。
これが、彼の営業戦略だとしたらスゴイもんです。ただし、時と相手を選ばなければエライ目に遭います。それを含んだ上で、ボクを瞬時に察知し、この手に打って出たとすれば・・・、彼はかなりの大物です。
実際どうだったか、そのことも含めて彼と話した中では、全くそんな意図などなしに、素直に失態を暴露でき、謝ることができた(彼曰く「自分をさらすことができた」)ということでした。ボク自身、どちらかと言えば初対面であろうが、どんな人とも仲良しになれる性格なので、彼のとった対応がすごく自然で、思わず好きになってしまったような感じでした。
その後、資料なしにイベントの打ち合わせを一応したものの、ふだんの仕事のことや、ヒトとの関わり方(営業という立場として)、果てはともにMacファンだということがわかり、パソコン談義をするかと思えば、仕事場でMacをこんなふうに使ってたで~みたいな話になったり、とにかくお互いに話が尽きなかったのです。
まるで無邪気に、大のオッさん二人が応接室の外にも聞こえようかという大声で、お互いの日常生活にも踏み込んだ話をしていたのですから不思議なもんです。何がどう作用し、どちらがどうだったのかわかりませんが、意気投合したという言葉で語るにはちょっと違うような感覚。仕事や周囲の人に対するスタンス、大げさに言えば「生き方のスタイル」が同じような安心感を、お互いに自然と感じ取っていたのかもしれません。
そういう意味では、冒頭に紹介した本にあるような「一緒に働きたい人」というのは、こんな人のことを言うんだろうなと思いました。
翌日彼は、今度はしっかり資料を揃えて出直してきてくれました。
イベント会場としてそのホテルを使う立場のボク(お客さん)と、それを提供する立場の彼。二者の関係でいうなら主客という立ち位置ですが、お互いが協力して招く最大の相手は、そのイベントに来てくださる方々(ゲスト)です。何よりも大切にしなければならないのはゲストの満足感であり、そこに視点を置かなければ何もなりません。
ゲストこそがイベントの主人公であり、そういう意味で言うとボクと彼は招く側の「仲間」だということになります。今回、 資料一式を忘れたという彼の言動の中に、そんな「一番大切なココロ」を感じさせてくれたことが、何よりもうれしかったです。
人と接する上で、何が一番大切か・・・。それがわかっている相手と一緒に仕事ができることに感謝したいと思います。

安居 長敏(やすい ながとし)
滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。
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