2011.05.24
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すごい話

神戸市立兵庫商業高等学校 教諭 特別支援Co 田杼 弘行

GW明けに予定されていた体育大会は、雨で順延。さらに順延した日にも無情にも雨。あっさり前夜から朝にかけて雨だったので、迷うことなく雨天プログラム。昨年あたりから、試行錯誤の上、体育館での運動会。全校生徒は収容できないので、学年ごとに2時間ずつ体育館をシェアしながら実施可能なプログラムだけを実施し、他の学年は通常授業。

後々に予定されている総体予選や保護者面談等に影響が出てくるので、順延の順延はないので、体育大会がまるまる抜けるよりは、いいかな? 体育館の外は土砂降りでしたが、何とか時間通り無事にプログラムが終了し、生徒たちも一生懸命取り組んで、環境が十分ではなかったけれど、それなりの成果を残してくれたのではないかと思います。

それなりの成果ということで、1,2年前の学会で発表があった話をご紹介します。ずいぶんとひどい話だなぁと感じたので鮮明に覚えています。

1学期の職員会議の生徒情報交換会の中で、1年生のMr.K君がアスペルガー症候群であると担任が報告しました。小学校4年生の時、担任に「様子や行動が少し変わっているので、専門機関にかかっては?」と水を向けられ、保護者もこれまで気になる面があったのでしょう、子どもセンターに相談したところ、心理判定員が知能検査をしその判定は、「アスペルガー症候群の特性はあらわれているが、一つの個性としてとらえてはどうでしょうか? もし気になるのであれば、Dr.の診断を受けることをお勧めします」とのことだったらしい。

保護者が小学校へ報告し、小学校が誤った理解をしたまま、中学校へ、中学校が高校へ報告し、これによりMr.K君は小学校高学年から高校1年とアスペルガー症候群として扱われていました。

一方、高校では療育手帳を使った就労の希望の有無を確認する必要があり、コーディネーターが手帳取得の確認をするため、改めて保護者と面談をしたところ、具体的な診断は受けていないので、手帳は取得していないとのことでした。

これを聞いて、私はひどい話だなぁと思いました。小学校4年生の担任の気づきはよかったのでしょうが、フォローアップができていなかったのでは? 中学校時代の担任やコーディネーター、養護教諭等も保護者面談をしているのだろうと思います。だとすれば、Mr.K君のアスペルガー障害については一切の質問も対応もなかったのではないでしょうか。

続けて学会の発表者は、前段部分には当然驚きましたが、実は後段部分のほうが衝撃的ですと、話を続けてくれました。

発表者は、MR.K君の学年主任や担任から、集団内での行動面の違和感を感じていたことを、コーディネーターとして報告を受けてました。コーディネーターは、それらの事実、今後の就職についても、保護者にフィードバックしたいので保護者に連絡を取ってほしいと依頼してから3か月後に、担任から保護者に連絡されたようです。連絡が遅くなった理由としては、その間、担任がMr.K君を観察されていたようで、アスペルガー障害の特性が解消され、集団生活において特に問題がなかったので後回しになっていったということでした。

その後、保護者も含めた個別の支援会議の中では、個人の積極性や真面目に取り組む姿が報告され、最後まで集団生活においての違和感について報告もなく終了し、進路は一般就労ですすめ、今後も観察を継続するということで終結したということでした。

以上の発表内容から私は、「アスペルガーと聞いただけで鵜呑みにする教師がいたのだろうか? しかも小中高、いずれの担任も?」と、疑念と憤りを感じました。幸い、本校では理解ある教員が増えつつあります。しかし、外部ではまだこういった話をよく耳にします。高校での特別支援教育の現状を再認識させられた一例でした。

田杼 弘行(たどち ひろゆき)

神戸市立兵庫商業高等学校 教諭 特別支援Co
すべての学校に特別支援教育をという文科省通達から5年目。しかし高校現場でのギャップ。一教師として、できることを探りながら、様々な「話題提供を」と、思っています。

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