10年ほど前から、算数における指導の充実のために、小学校ではTT(ティームティーチング)の授業が始まりました。
TTとは、担任以外の教師が授業に参加し、二人で授業を展開するやり方です。
どちらか一方が主に授業を進め、もう一方が補助的な役割をして、個別的に声をかけたり指導をしたりする方法が一般的です。
TTが始まった当初は、教師は大人に授業を観られることにあまり慣れておらず、二人一組で授業を行うことに戸惑いがあったように感じられました。もちろん、授業参観や研究授業という形で授業を観せることはしていたのですが、日常的に大人が入るということにプレッシャーがあったのだと思います。
私自身も、ある学校で毎時間TTの授業を続けたときには、慣れるまで緊張していました。
「こういう授業でいいのか」、「こんな発問でいいのか」、「子供たちは授業内容を理解してくれているのか」といった振り返りは、常に念頭に置かなければならないことですが、TTの形態によってその振り返りが持続的なものになってしまうのです。
そういうプレッシャーを乗り越えて、自信をもって授業をしなければならないと、今更ながらに自分に言い聞かせています。
さて、最近ではTTではなく、少人数による授業が推奨されるようになりました。
例えば同じ学年が2学級編制である場合には、それを3学級に編成し直し、算数の授業だけ3人の指導者が授業を行うというやり方です。
編成の基準は、それぞれの学校が工夫していますが、おおむね習熟度によって行われます。
テストなどによって習熟の度合いを確認したり、子供たちの希望を尊重したりすることによって、クラス分けが行われるのです。発展的な内容を積極的に教えようとするクラス、基礎的・基本的な内容を確実に定着させようとするクラス、個別的な指導を視野に入れて丁寧に授業をしていこうとするクラスなどに分けることが多いようです。
うちの学校も、この4月から少人数指導が始まりました。準備期間を経て、今は3~6年生の各2クラスを3クラスに編成して算数の授業を行っています。
私は十数名の子供たちと、毎日楽しく授業をすることができ、幸せな気分を味わっています。少人数だと一人一人に声をかけることができるし、じっくり教えることもできるから、成果があがると感じます。
「人数が少なくなったから、先生にいっぱい見てもらえた。算数が前よりできるようになった」
「人数が少ないから気軽に発言できるし、手を挙げると当たりやすいので、自信がつきます。算数が今まで以上に楽しく、とても好きになりました」
クラス全員で学んでいる時には、ほとんど発言をすることがなかった子供たちが、フレンドリーな雰囲気の中で、自信をもって発言している様子が伺えます。
しかし課題もあります。私は今、6年生を持ち上がりで担任しています。それに、5年生の時には算数を私一人で教えていました。だから、子供一人一人の算数の力を、ある程度は理解できています。
ところが、以前に少人数の指導を行った際には、担任した子供たちに対して一度も算数を教えなかったため、子供たちの学力を把握できずに苦労した経験がありました。その時、担任として国語と算数の2教科だけは責任をもって教えたいという思いが残りました。
そんな課題も踏まえつつ、少人数指導の成果を上げるために、これからも頑張っていきたいと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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