2011.05.05
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学級づくり(1)~自閉症のお子さんのために

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

 慌ただしく始まった新学期も1ヶ月を過ぎようとし、大人も子どもも落ち着いた毎日が過ごせるようになってきたかと思います。

 今回からは、僕の学級経営について少しずつ書いていこうかと思います。

 今年度、5年生5名を担当しています。全員「自閉症」の診断を持っています。
 自閉症は、 1.コミュニケーションの質的な障害 2.言葉(意思伝達)の著しい異常またはその発達の障害 3.活動と興味の範囲の著しい限局性 といった特徴を持ちます。
  これらは診断基準にもなっている物ですのが、実際それにいたる原因や脳の中でどのようなことが起きているかは色々な説が言われています。原因はどのような物であっても表れてくる状態像としては、「発達の遅れ」です。原因ははっきりしなくとも、「発達の遅れ」に至る道筋は想像できます。
 
 発達は周囲(環境)への働きかけとそのフィードバックから成り立ちます。体験を蓄積し知識で整理され次の行動に生かされます。

 

周囲(環境)から受ける情報を上手に処理できていない状態で行動し
         ↓
周囲(環境)への働きかけが上手くいかず
         ↓
働きかけ自体の正否といった結果情報を判断できないまま次の行動にいたる

 

 このような状態が起きると発達はスムーズに行きません。

 私達とは学習の仕方が少し違う子ども達です。上記のような道筋に至るバリアとなる物が脳の中ではなく、環境の中に存在するとすれば、調整することが可能なはずです。

 そこで、僕は次の二つを意識し指導するようにしています。
  

(1)構造化
  環境からの重要な情報を目立たせ、無駄な情報を排除する。視覚的に、具体的に理解する事の方が得意な子ども達ですので、求められていることのわかりやすさを大事にしています。僕らにとっての机上整理やマーカーをひく事。標識や案内表示も構造化されたもの。僕らも日常で便利に感じますよね。
  
(2)応用行動分析の手法
  良い行動をほめて伸ばすことで、子どもからの環境への働きかけに明快なフィードバックを与える。叱ることは行動を止めるには有用ですが、どう行動すべきかは指し示していないことが多いですよね。


 もちろん、子ども達一人ひとりにとって、どのような物が解りやすいかは違います。子ども達一人ひとりに合わせた手立てが必要になります。 

 

 4月になり、担任することが決まった時点で一週間で手立てを考え、学級の設営をし、すぐに使う教材の準備が必要です。ほぼ毎日入っている会議の合間を縫って行いますので必要な買い物に行くのも至難の業です。実際は僕も「仮の形」としてスタートを切りました。
 前年度まで行っていた手立てがある子どもは極力同じ形にしました。自閉症のお子さんは「変化」に弱いため、担任も代わり、教室の場所も変わり、内部の構造も変わりといった状況は酷なことです。しかし「極力」ですので新しいことは教えなければなりません。幸いなことに前年度からの持ち上がりのお子さんが3人もいたので、残り2名のニーズを組み入れる形で学級設営ができました。ただし、「帯に短し~」的な感はぬぐえません。一日の予定を伝える教材も昨年度、子ども達一人ひとりが使っていたものをそのまま利用しています。新たに組み入れたい物もありますが、変化は少しずつと思い欲張らずに。

 

 あくまで仮ですので、これからどんどん改良していく予定ですが写真を一枚貼っておきます。

 次回にでも細かい部分を紹介しますね。

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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