2011.04.21
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研修から感じたこと 連携 ICT活用について少しだけ

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

 先日、研修会に参加してきました。自閉症児へのコミュニケーション指導法の一つである「PECS」の定例会です。新年度始まってすぐの日程。参加者は保護者が10名程に教員3名、児童デイサービス職員数名でしたが有意義な時間を持てました。

 PECS(Picture exchange communication system)というのは自閉症児へのコミュニケーション指導法の一つで、自閉症の特性に合わせ応用行動分析学(行動主義心理学)の考え方に基づいた代替コミュニケーション指導です。簡単に(かなり乱暴にですが)言うと、言葉という抽象概念を理解しやすい「絵カード」を用い具体的な理解を図りつつ「言葉を相手に届ける」というコミュニケーション行動とともにステップを踏んで段階的に指導していくものです。

 今回は札幌市周辺で取り組みを進めている家庭・教育・福祉のそれぞれの立場から、日頃抱えている指導上の悩みも含めた実践報告がありました。話題に上った中で印象的だった部分は、やはり「連携」でした。

 コミュニケーションの機会は日常全般にあります。学校の机上だけでもなく、家の中だけでもありません。一日を通して必要な時に必要なことを伝える安定的な力を育てる事が必要です。 コミュニケーションの困難さを抱える自閉症の子どもたちにとって、まず今ある力で使え、みんなに通ずる、またどこでも使えるツールが必要になります。
 
 つまりは学校・家庭・地域(福祉サービスなど)で共通のツールを使えるなら、その子の生活上のバリアを下げつつコミュニケーションを教えていける事になります。

 会の中での保護者に子どもたちの成長を見てもらうことで、成長を信じてもらい協働の意識を持ってもらおうとした事例や、支援会議を重ね学校、地域、家庭での支援方法の共有化を図った事例を聞き、思いを新たにしました。

 現在、様々な課題に対し様々な指導方法があります。どこに価値を置くかも立場によって変わってきます。そう考えると思いをそろえることが一番難しいのですが、子どもの成長を中心に置き話を重ねていく事でより良い方向を目指していくしかないですよね。当たり前といえば当たり前の話なのですが自分自身を含め、まだまだ求めていかなければ行けない部分ではないでしょうか。


 最後に余談にするにはもったいない話を一つ。

 タブレット端末や携帯ゲーム機など、自閉症のお子さんの支援にICTを取り入れた話題がありました。タブレット端末などは、コミュニケーション指導の他、スケジュール提示にも余暇にもと一台で何役もこなしてくれるものとして自分自身押さえていました。絵カードなどをデータ化することによって携帯も便利になりますし、端末を使いこなしながらコミュニケーションを図ったり、スケジュールを確認し行動する将来の「かっこいい」子ども達の姿を想像し、可能性の大きさに思いをはせてしまいます。
 話の中で「ウチの子は一つの機械には一つの役割でしか使いたがらない。」との話が参加されている保護者の方からありました。
「なるほどなぁ」と。
 いかに便利な存在であろうとも多機能というある意味抽象的な性質を持ってしまうと、本人にとって把握しきれない存在になってしまうという事でしょうか。
 もちろんお子さんによっての違いは考慮しなければ行けないところ。支援は個に合わせるのが基本。いずれにせよ、特性は学び個性は見つめることの大切さを感じさせてもらったひとときでした。

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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