4月8日に入学式が行われ、新入生を迎えることができて、ようやく3つの学年が揃いました。これまで当たり前のように、卒業生を送り出し、新入生を迎え入れていましたが、今年は当たり前のように行われていることに対して、喜び、感謝をしなくては、と改めて思いました。
入学式後、職員紹介があり特別支援教育Coとして紹介され、その後、新学期の準備でドタバタしていたところ、新入生の女子生徒の保護者の方が来られて、ご相談がありました。
事情をお聞きしたところ、小学校や中学校時代にいじめにあっていたようだが、本人は特に気にすることもなく、いじめやからかいとは認識していなかったようです。しかし、周囲からすれば明らかにエスカレートした行為であり、教師への通報で発覚したようでした。問題は大きく分けて2つあり、一つは面白半分にはやし立てる側で、一方的にいじめとは決めつけにくいことで、もう一つは本人がいじめやからかいと認識していないことで、本人からすれば友達が少ない面、一緒に遊んでいる感覚であることです。
しかし、保護者の立場からすると、同年代の子どもから理不尽な要求をつきつけられたわが子のことを思い、怒りをどこかにぶつけたくなる気持ちも整理されながら、ありのまま話をされていました。これまでいろいろな辛い経験をされたのだろうと思いました。
校内で早急に委員会を発足させ、中学校時代の情報収集もということで、4月13日に本人の出身中学校に養護教諭、担任、私と3名で話を伺いに行きました。
一通りお聞きした後に、中学校から高校へなぜ連絡がなかったのかを聞いたところ、小学校からはこれまでのエピソードを聞いていたが、中学校ではちょっと変わった個性という程度でしかとらえてなく、高校へ連絡するほどでもないとの認識だったようです。
個別の支援計画の作成や個別の教育支援計画の策定の重要性が、言われ続けているにも関わらず、また、わが子が理不尽な要求に応じてしまう保護者のくやしさが、変わった個性ととらえられていては、特別支援教育の意義も理念も吹っ飛んでしまいます。中学校から高校へは97%以上が進学しますが、高校からは約半数は就職します。言い換えれば、中学校を卒業した半数の生徒は、3年後には社会に出て、自立を始めるようになります。したがって高校では自立や自己確立にむけての指導が始まります。高校を通じて就職する時、生徒の身体に関する内容は、多くの場合、伝えるような仕組みになっています。 これは生徒本人と職場の安全を守るためです。
他校の話題で恐縮ですが、高校では症状が一切でなかったのですが、職場でてんかん発作を起こした生徒の企業先から強く抗議を受けたというエピソードを聞いたことがあります。 中学校では何度かあったようですが、高校へはそうした情報が提供されなかったようでした。
ここでいつも話題に上るのが個人情報の保護です。個人情報の保護は、尊重されなければならないことは言うまでもありません。しかし、個人情報が活用されなければ単なるストッカーにすぎません。個人情報ではなく教育情報として提供されるべきで、現在のステージではここまで実施し、評価はこれで、残された課題はこれでといった内容を次のステージへ引き継ぐべきです。
表題であえて、「個人情報VS教育情報」と書きましたが、個人情報の保護の観点からも教育情報として提供しますという旨の、保護者と学校関係者との信頼関係のもと、学校側から教育情報の提供を行うものだと考えます。
高校で奇抜な行動があっても保護者に対しては、なかなか本質は切り出しにくいものです。中学校からの保護者了解のもと、情報提供があれば、高校でいいスタートが切れると思います。
中学校の先生方にお願いです。高校ではどんな情報でも歓迎です。これは個人情報の漏洩ではなく、教育情報の共有です。その生徒の将来を考えるならば、高校に合格だけがゴールではなく、ひとりひとりの高校生活を有意義にさせ、ひとりひとりの進路保障を行ううえでも、有効な情報共有や交流が必要だと考えます。
中学校には中学校の難しさがあることと思いますが、高校にも厳しい現実や難しさもあります。ニーズの必要な生徒には、自尊感情を高めて「生きにくさ」の軽減を図る必要があり、高校でも、高校だからこそ、できるだけことは誠意をこめてやりたいと思っています。
<<本文中に掲載されている事例やエピソードは、個人情報保護の観点から 一部編集しています>>

田杼 弘行(たどち ひろゆき)
神戸市立兵庫商業高等学校 教諭 特別支援Co
すべての学校に特別支援教育をという文科省通達から5年目。しかし高校現場でのギャップ。一教師として、できることを探りながら、様々な「話題提供を」と、思っています。
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