3月11日の金曜日に、日本最大規模の大地震『東北地方太平洋沖地震』が起き、訓練ではない本物の「避難」を初めて行いました。かつて経験したことのない状況が継続しています。群馬県内の多くの公立学校では、比較的被害が少ないために、週明けの月曜日から通常授業が行われています。
ところで、大地震後、登校してきた子どもたちと向き合って、どのようなことをすべきでしょうか。朝の会などで地震に触れる話は、どの学級でもしたことでしょう。その後の授業は、どうするでしょうか。
こうした中でも、時間割にある授業を淡々とこなしていくことは、学校の責務として必要だと思います。
しかし、私はそれよりも大事なことがあるのではないかと考えました。学校=教育の目的は『人格の完成』です。そのために、必要な知識や社会性を学び、『生きる力』を身に付けていくところです。そう考えると、月曜日は単に国語や算数の授業をするより、やるべきことは他にあるのではないかと思いました。そこで、3時間予定の道徳の授業を行いました。
テーマは、『今、できること ~東北地方太平洋沖地震~』です。
まず、日曜日のテレビ番組表を子どもたちに見せ、気付くことを発表してもらいました。2年生でも、いろいろと気付くことができます。
[アニメがやっていない。ニュースばかり。地震のことばかり。白いところがある。]
つまり、異常さに気付くのです。そこで、
「1.今、何が起こっているのか?」
を考え、原因を押さえさせました。もちろん、地震です。(「東北地方太平洋沖地震」)
その次に、
「2.どんなことが起こっているか?」
を、まず、個人レベルでまとめさせました。続いて、4人のチームにして情報交換をするとともに、共有するようにしました。大変なことが起きているという、共通認識を持つようにしました。ただ、恐怖をあおることにならないようにしました。また、ここでは、子ども自身が体験したことを話してもらい、地震によるストレスを解消させるねらいもありました。
そうして、共通の土壌ができたところで、
「3.今、できることは何か?」
ということを考えて書いてもらいました。そして、再び4人のチームになって、「みんなで考えた自分でもできること」をまとめてもらいました。そして、1番よいと思うものを発表してもらいました。
残念なことに、次のような考えが出てきました。
[おはしもを守る。地震が起きたら机の下に隠れる。助かるように祈る。]
そこで、もう一度、今、起きている大変なことを確認し、それに対して、何ができるかをチームで考えてもらいました。すると、
[感謝して食べる。]
という意見をきっかけに、いくつもの意見が出てきました。
それを「4.今、本当にできることとその意味」をワークシートにまとめました。それは、次のようなものです。
(1)電気をむだにしない→足りない分を協力する。
(2)食べ物などもむだにしない→お互いに助け合う。
(3)仲良くする→友だちと協力することが日本を救う。
(4)勉強する→知恵を持つことで、困難に負けない。
(5)できたら募金する→直接、役に立つ。
行動計画を立てて、行う意義を知り、そのための行動であることを理解した上で、さらによりよい行動へとつなげていくようにと考えました。こうした行動が、当然のことのようになってほしいと思っています。
今回の大地震とその被害は、日本史上だけでなく、世界史上にも残る大災害となるものです。それに対して、小学校2年生でも、できることがあるという自覚と実行力を持ってほしいという願いが、この授業にはあります。
また、家庭にも、こうした学級での学習内容を知らせ、支援・協力をお願いしました。加えて、次のようなお願いもしました。
地震情報は、テレビに頼ることが多くなっていると思います。テレビに映し出される映像は、確かに事実です。しかし、事実の一部でしかないことも事実です。マスコミが意図的な編集をしている場合もあります。それが、不安や恐怖をあおることになったとしたら、人間の思考を余計にマイナスに向かわせることにもなります。時には、テレビを消して、必要な情報を家族で考えることが必要ではないかと思います。
子どもの心には、金曜日(3月11日)の暗くて寒い夜のことが傷として残っていることと思います。そこに、テレビの衝撃的な映像は、ストレスにもなりかねません。この点を、よくお考えいただき、家庭での主体的な対応をお願いいたします。
そして、自分に(家庭で)できることを考え、少しでもこの状況に貢献しようとする前向きな姿勢を育てていただきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。
今、私たちは、日本人として誇りを持って行動することが求められていると思います。私もできることを全力で行っているところです。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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