私は学生時代からコーヒーが大好きです。家や職場で飲むコーヒーもいいのですが、外出したときに喫茶店で飲むコーヒーは格別なものがあります。おいしい珈琲を飲むためには、やはり豆の新鮮さが第一だと思います。そのため新鮮にこだわる自家焙煎珈琲屋さんを求めて、あちらこちらを探し回っています。
さて、今期の掲載最後はそのコーヒーに関して最近読んだコミックを紹介させていただきます。
『珈琲時間』は、豊田徹也さん作のコミックです。
コーヒーをモチーフにした短編集で、1話が12ページにまとめられたショートストリーが全17編詰まっています。その中の作品で『すぐり』という作品が私のもっとも好きな作品です。すぐりとは、カシスのこと。コーヒーの欠点豆を取り除いて、良質の豆だけをえりすぐるということです。
そのストーリーは――
珈琲豆を焙煎(ばいせん)している叔母さんのところに、姪のはるみが訪ねてくるところから物語が始まります。コーヒーの欠点豆と人間をたとえながら、
「悪い豆は、無いほうがいいんだ」
とはるみが言えば、叔母さんは、
「人と豆はちがうよ」と答えます。
「どうして?何がちがうの?」
と聞くはるみに
「そうね・・・人の社会はもっと複雑だし、人間だってそんなに単純じゃないじゃない?」
と叔母が答えれば、
「でも、おいしいコーヒーをつくるには欠点豆は、はじくんでしょ」
とはるみ。
「うーん 何が欠点かって基準はコーヒーほどシンプルじゃないからね 人の場合」
さらに
「シンプルな基準しか許さない社会は脆弱(ぜいじゃく)で滅びやすいからね」
と答えます。
たたみかけるように、生きる意味について聞くはるみに、叔母さんは、こう答えます。
「やっぱり、変わっていくことかな・・・」
はるみが帰って、姉に電話する叔母さんは、
「あの子は大丈夫だよ。あんまり心配しないで」
と結んで物語は終了します。
短い話なのに、すごく厚みがあるというか深みがあるというか。
はるみの思春期の悩みというか心のざわめきみたいなものが、ちょっとした会話の中からうかがうことができるのが興味深い作品です。
何があったかはわかりませんが、コーヒー豆をよりわけながら、さりげなく人生の意味を優しく教える叔母さんと姪の会話は、コーヒーを味わうように、なかなか味わい深いものでした。
ではしばしのお別れになりますが、またこのコーナーでお会いできる日まで、読者の皆さま、お元気でお過ごしください!
北川 誠(きたがわ まこと)
埼玉県朝霞市立朝霞第十小学校 教諭
「駄洒落」を立派な日本の文化・言葉の見立てと考え、子どもたちからは「先生 寒~い」と言われてもめげず連発してます。モットーは「花には水を人にはユーモアを」。
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