2011.02.10
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かんてんぱぱガーデン

横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表 住田 昌治

 長野県伊那市駅に降りると雪はそれほどでもないが、道路はピカピカに凍っている。タクシーで「かんてんぱぱガーデン」(伊那食品工業)へ。雪で隠れているが、整備された施設内の様子がよく分かる。自然林を利用した傾斜地に本社、工場、ホール、レストラン、売店などが並ぶ。レストランや売店、本社で出迎えてくれる人たちは、身なりを整え、笑顔で対応。大変気持ちいい。

 外がよく見える応接室に通され、2時間に渡って秘書室長と対談。さすがに日本一と言われる会社。会長は優秀経営者として多くの表彰を受けている。あるべき姿を社員の幸せとして、48年間増員増収増益を続けている。年功序列・終身雇用とかつての日本の雇用を守り続けている。今では、この会社に入るためには大変な競争率だそうだ。聞けば聞くほど、こんな会社もあるんだなと感心した。

 企業というと、利益を追求することが会社のあるべき姿と考えているものだと思っていた。こういう素晴らしい会社の社員教育はどうしているのだろうか知りたいというのが、単身視察に乗り込んだ理由である。「いい会社にしよう」そのために「人に迷惑をかけない」と教えている。それだけだと説明があった。何とシンプル。「立派な社会人になること」が大切なのだとも言われた。

 そして、新入社員への会長の指導には、「教育勅語」と「二宮尊徳の言葉」が使われている。日本で昔から大事にしてきたことがここに記されているという。それが今の教育からは忘れ去られていると嘆いておられた。

 よき社会人といっても分かりにくいので、「人に迷惑をかけない」ということを規準として行動させている。たとえば、通勤時渋滞を避けるために右折しない、買い物に行った時は、一番遠くの駐車場に停める。そして、これらのことは、時間もアイドリングも短縮されると言う。言われてみればなるほどと思う。掃除や広い緑地の整備も毎日始業前に自主的に行われる。綺麗にするということにしても、ただ気持ちいいからということだけではなく、綺麗にしておくと事故や故障を防げたり、次に使ったり、掃除したりする時にスムーズで効率がよい。また、綺麗な所は汚さないし、犯罪も少ない、人も集まる…と続く。

 こういう指導が、社員の意識を変え、会社を生活の場として真摯に取り組むことに繋がっているのだろう。月曜日というのに、昼食時は訪れる人が多く、ゆっくり流れる時間の中で過ごしていた。社員の幸せを希求する経営が、長い目でみると会社を継続的に成長させている。
われわれは学校のあるべき姿をどのように描いているだろうか。子どもの幸せを希求することがきちんと描かれているだろうか。あるべき子どもの姿を求めて、学校の現在の姿をきちんと点検して新指導要領実施の年度を迎えたい。

 「かんてんぱぱガーデン」一度訪れてみてください。大事にしなければならないことがはっきり分かりますよ。たまには、学校の視察だけでなく、優秀と言われる会社の経営から学ぶこともいい。素晴らしい気づきを与えていただいた「かんてんぱぱガーデン」の皆様に感謝!

住田 昌治(すみだ まさはる)

横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表
学校の持続可能性を求めて、日々挑戦しています。これから日本版ESDスクールのデザインを描き、実現していきます。皆さん一緒に考えていきましょう。

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