「本物に会わせるだけでなく、偽物にも会わせる。」
今まで、教師は、授業中本物に出会わせるよう準備してきました。子どもたちは、本物が本気になって語る話に感動し、学びを拡げてきました。教員以外の大人に出会わせることは、それだけでも教育的に効果があると考えていました。確かに、子どもたちは、本物との関わり合いを深めながら、劇的に変化していきました。しかし、それだけでいいのでしょうか。子どもたちが社会に出て、出会う大人は本物ばかりでしょうか。残念ですが人を騙す人もいます。口ばっかりで、言ったことを責任持ってやらない大人もいます。正しいことばかりが、認められるわけでもありません。そう考えていくと、ある程度育った子どもたちには、偽物に出会わせることも必要なのではないかと考えます。出会わせないもでも、考えさせることは必要です。
ESDで身に付ける力に、批判的思考力があります。この高次の思考は、子どもたちの視野を広げます。一方向からの考えでは、バランスが崩れます。たとえば環境教育の場では、人間の立場での考えを中心に据えているので、虫や動物の立場に立って考えることができません。人間にとって都合の良い環境教育になっていることが少なくありません。せっかく住みよい環境でいるヤゴの池を、きれいに掃除してしまって、住み処を奪ってしまうことがあります。それは、人間から見て、藻や落ち葉で汚い様子でも、ヤゴにとっては隠れ家や餌が豊富にある場所なのです。また、トンボの種類によってヤゴは同じ池の中でも住み分けているのです。そういうことを知って、ヤゴの立場で考えたら、藻や落ち葉を掃除することは、環境破壊であり、生態系を崩すことになるのです。きれいにすることはいいことだと言うことを、本当にそうかと疑ってみることも大切なのです。そういう意味でも、この人の言っていることは立派だけど、本当なのだろうか。本気で言ったり、やったりしている人なのだろうかと疑ってみることも、時には必要なのです。そのためには、出会わせる人とは、単発のつきあいではだめです。何度も、子どもたちと関わりをもって分かり合うことが必要です。それが、できない人がいるとすれば、それこそ偽物です。そういう意味で、私は、今まで単発のつきあいや出前授業はお断りしてきました。
ある大学の先生から聞いた話では、ラオスでのESDの中心は、批判的思考力をつけることだそうです。生きるために、善悪の判断がきちんとできなければいけません。大人の言うことを何でも間に受けていてはいけません。正しいことか間違ったことか判断する力が最も求められているということです。グローバル化が進む時代、他国の問題とばかりは言っていられません。日本の子どもたちにとっても、疑ってかかることから、真偽を明らかにすることは生きる力を育むことにつながります。日本の子どもも大人も自己肯定感が低いことが国際的な調査で明らかになっているのですが、単純に、自己肯定感で満たせばいいのではなく、いいことと悪いことを知った上で、自尊感情として自分を高めていくことが大事なのではないかと考えます。
子どもたちには、いいものにも悪いものにも、バランス良く出会わせましょう。
今まで、教師は、授業中本物に出会わせるよう準備してきました。子どもたちは、本物が本気になって語る話に感動し、学びを拡げてきました。教員以外の大人に出会わせることは、それだけでも教育的に効果があると考えていました。確かに、子どもたちは、本物との関わり合いを深めながら、劇的に変化していきました。しかし、それだけでいいのでしょうか。子どもたちが社会に出て、出会う大人は本物ばかりでしょうか。残念ですが人を騙す人もいます。口ばっかりで、言ったことを責任持ってやらない大人もいます。正しいことばかりが、認められるわけでもありません。そう考えていくと、ある程度育った子どもたちには、偽物に出会わせることも必要なのではないかと考えます。出会わせないもでも、考えさせることは必要です。
ESDで身に付ける力に、批判的思考力があります。この高次の思考は、子どもたちの視野を広げます。一方向からの考えでは、バランスが崩れます。たとえば環境教育の場では、人間の立場での考えを中心に据えているので、虫や動物の立場に立って考えることができません。人間にとって都合の良い環境教育になっていることが少なくありません。せっかく住みよい環境でいるヤゴの池を、きれいに掃除してしまって、住み処を奪ってしまうことがあります。それは、人間から見て、藻や落ち葉で汚い様子でも、ヤゴにとっては隠れ家や餌が豊富にある場所なのです。また、トンボの種類によってヤゴは同じ池の中でも住み分けているのです。そういうことを知って、ヤゴの立場で考えたら、藻や落ち葉を掃除することは、環境破壊であり、生態系を崩すことになるのです。きれいにすることはいいことだと言うことを、本当にそうかと疑ってみることも大切なのです。そういう意味でも、この人の言っていることは立派だけど、本当なのだろうか。本気で言ったり、やったりしている人なのだろうかと疑ってみることも、時には必要なのです。そのためには、出会わせる人とは、単発のつきあいではだめです。何度も、子どもたちと関わりをもって分かり合うことが必要です。それが、できない人がいるとすれば、それこそ偽物です。そういう意味で、私は、今まで単発のつきあいや出前授業はお断りしてきました。
ある大学の先生から聞いた話では、ラオスでのESDの中心は、批判的思考力をつけることだそうです。生きるために、善悪の判断がきちんとできなければいけません。大人の言うことを何でも間に受けていてはいけません。正しいことか間違ったことか判断する力が最も求められているということです。グローバル化が進む時代、他国の問題とばかりは言っていられません。日本の子どもたちにとっても、疑ってかかることから、真偽を明らかにすることは生きる力を育むことにつながります。日本の子どもも大人も自己肯定感が低いことが国際的な調査で明らかになっているのですが、単純に、自己肯定感で満たせばいいのではなく、いいことと悪いことを知った上で、自尊感情として自分を高めていくことが大事なのではないかと考えます。
子どもたちには、いいものにも悪いものにも、バランス良く出会わせましょう。

住田 昌治(すみだ まさはる)
横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表
学校の持続可能性を求めて、日々挑戦しています。これから日本版ESDスクールのデザインを描き、実現していきます。皆さん一緒に考えていきましょう。
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