2011.01.18
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柔道・篠原選手の言葉~5年生道徳の授業より(授業本時・・・後編その1)

厚沢部町立厚沢部小学校 教頭 久慈 学

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
 今年は「暖冬・少雪」の予報が出ていた北海道ですが、年が明けるとその期待?!を大きく裏切り、しっかりと寒くしっかりと雪が降り続く毎日です。個人的には「冬=雪」という図式が染み付いているので、全く問題なし・・・。
 
 さて、本題に入ります。前回の教材研究編に続き今回は本時編(その1)です。
 (1)導入
   授業前日にとったアンケート「スポーツ(少年団など)やゲーム(家や学校での遊びもふくむ)、体育の時間などで負けて『くやしい』思いをしたことがありますか」の結果を紹介しながら、導入に入った。
   元気よく遊ぶのはいいがわんぱくぞろいで、トラブルも絶えないこの学級。予想では男子8人皆が「くやしい思いをしたことがある」と答えると思ったら、意外にも半分の4人だけ。これには、担任も私も(本当かよー?)。一方女子は10人中9人が「ある」、と答えている。ここで、揺さぶりをかける。
「男子で『ない』と答えた人、本当にないの? なんか担任の先生に聞いたら、ジャンケンの勝ち負けでさえ揉めてるって話だけど。」
 女子がくすくす笑っている。
 「まあいいけど、女子は正直だなあ。9人があるって答えてるよ。本当にないのかなあ、変だなあ、先生なんかみんなくらいの時は、勝負に負けたら悔しくてたまんなかったけど・・・」
  と揺さぶると、ぽつぽつと本音が出てきた。
  次にアンケートのもう一つ「負けてくやしくて、八つ当たりしたり他人のせいにしたことはありますか」の結果も伝える。
 「これは、6人の人が『ある』そうです。例えば、お母さんや弟に、他には算数がわからなくて八つ当たり、なんてものあったよ。」
  みな、友だちのアンケートなので、うれしそうに聞いている。

 (2)展開
  これから授業の中心に入る。導入は子どもたちが自分たちの生活を振り返るために行ったのである。その点では、やや振り返りが浅かったのが反省である。
  柔道の篠原選手のシドニーオリンピックでの闘いについて書いてあるプリントをまず配布した。篠原選手について知っている児童は数名だったが、プリントの写真で「テレビで 見たことがある」という子もいた。
  プリントを用いて、篠原選手のこのシドニーオリンピックにかける思い、特に3年前のパリ世界選手権の決勝で、このドイエ選手(フランス)に不可解な「反則負け」で敗れていることを理解した。
 「3年間もこのオリンピックのために練習してきたんだね。みんなならこんなに長い間努力し続けられるかな。」
 と、篠原選手の立場に立たせる。「きっとつらいけどがんばったんだね」
 「3年間の悔しさをぶつけるオリンピックでの決勝戦に、見事篠原選手は進出しました。しかも、相手はあのドイエ選手です。」
 ここで、必殺の秘密兵器?!「決勝戦ビデオ」を大きなモニターに映しだす。児童はみな、のめり込むように画面に食いつく。10年前の闘いなのに、「がんばれ!」という声援を送る子も。
  闘いは進み、時計は1分35秒。奥襟をとったドイエ選手は内股にきた。これを逃さず篠原選手は内股すかしで見事1本! と誰もが信じた。ふたりとも大きな弧を描いて倒れてはいたが、明らかに背中から落ちているのはドイエ選手の方である。
  ところが篠原選手の一本の判定どころか、主審は相手のドイエ選手の有効を認める。テレビの解説者の怒りの声に、子どもたちも
 「おかしい!」
 「えーっ、なんでだあ?」
 と口々に声を上げる。
 「教頭先生、もう一回見せて!」
 と求める子もいるほど、やはり篠原選手が有利に思えたのだ。
  しかし判定はこの後も覆るわけではなく、篠原選手は判定負けしたのだった。

  さて、篠原選手はこのあとのインタビューで、どう答えただろうか。それを予想させて書かせた。自分が篠原選手のつもりで、、、。
 
  A 負けて残念だが、判定だからしょうがない。
  B 納得がいかない。
  C 今回は負けたけれど、この次は絶対勝つ。
 
 大きく分けると、上の3パターンであった。さて、多かったのは? ・・・意外にも、Aの負けを受け入れる、という子どもたちだ。ここでもう一度揺さぶりをかける。
 「ほんとに負けを認めるの? オリンピックは4年に一回しか無いんだよ。次は4年後だよ。それにこの日のために3年間苦しい練習をしてきたことはどうなるの?」
と。するとやはりAの答えを書いていた男子が、ぼそぼそ何かつぶやきだしたので、指名して発言させた。
 「くやしい、うらんでやる!」
 周りの子も、本音を代弁してくれたからなのか、笑顔で聞いている。
 「そうだよね。これは受け入れられないんじゃない? 先生なら悔しくて悔しくてたまんないなあ。」
  ここで、だいぶ子どもたちにも篠原選手の悔しさが共感できたのではないか、と表情を見て感じた。そして実際の篠原選手のインタビューへ・・・。

   ここで、紙面がつきました。次回授業本時・・・後編その2へ続きます。

久慈 学(くじ まなぶ)

厚沢部町立厚沢部小学校 教頭
北海道で小学校教員、今年は教頭職三年目。ニューデリー日本人学校での経験を生かし、片田舎から世界を、世界から片田舎を見つめつつ発信したいと思います。

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