2011.01.12
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新年の風景

滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長 安居 長敏

大晦日からの雪で、真っ白に飾られた景色が空気の冷たさを一層際立たせるような新年の始まり。いつにも増して気合いが入りそうな2011年のスタートだった。

毎年、1月1日に行うこと。

朝一番に家の神棚や仏壇に灯明をあげ、お雑煮をお供えして、今年一年が無事に送れるようお祈りした後、家族そろってお雑煮とおせちを食べる。それが済むと、町内(といっても戸数わずか100軒あまり)をぐるっと巡って年始回り。どの家でも家長の役目として、代々受け継がれている、いわば伝統のようなものだ。

まずは、氏神さん「豊田神社」にお詣り。午前8時からの歳旦祭が終わったところで、人影も少なく、ひっそりとしていた。続いて町内にある3つのお寺を東から順に回る。禅宗、浄土宗、浄土真宗とそれぞれ異なる宗派で、願い寺である浄土宗のお寺はともかく、他の2つは子どもの頃に境内で遊んだ程度で(もちろん同じ町民として、日頃からご住職さんとはお付き合いはあるが)、特にこれといって義理立てすることもない。しかしそこは田舎の風習とでも言おうか、町の恒例行事になっている。どのお寺も歴史を感じさせる佇まいで、本堂に上がって手を合わせると身も心を引き締まる。

その後は、町内にある7軒の親戚を回ってお仏壇を拝み、年始のご挨拶。どの家もご主人は年始回りに出ておられるので、奥さんや子どもさんと挨拶を交わすことになる。以前はどの家でもお酒を飲みながらゆっくり話をしていたが、年々それも少なくなり、年始の言葉を交わすだけで終わってしまうようになった。これも時代の流れかな・・・と寂しく思う。

そんなこんなで始まった2011年。集配業務の広域化で手が回らなくなたのか(もしかしたら雪の影響かも)、お昼をだいぶ過ぎてから届いた年賀状に目を通しつつ、思い出したことがあった。

ある日の朝、封筒詰めした海外研修先(オーストラリア)へのお礼状と写真を近所の郵便局に出しに行った時のこと。秤に載せて重さを量っている局員さんに「少しでも安くして下さい」と言うと、「ハイ、わかりました」とすぐに返事が返ってきて、「さすが若い局員さん!」その対応のよさにとても気分が良かった。

8通で合計1920円を支払い、「1週間ぐらいで着きますよね」と聞くと、「え~っと、たぶんそのくらいだと思います。まだ新人なもんで・・・」との返事。最初のテンポの良さと比べて、今度はえらく不安げだった。で、その場はそれで終わり、夕方、やがて5時になろうとする頃、自宅に朝の局員さんが尋ねてきた。

「すいませ~ん、朝の郵便のことで・・・」
「えっ? いったいどうしたの?」

てっきり料金不足でもあったのかと思っていると、「私どもの手違いで、もう少し安くなったはずなのに見落としていました。申し訳ありません」と、差額70円を手に握りしめ、「まだ新人なもので、ご迷惑をおかけしました」と頭を下げられた。

「うちの家まで来る、車のガソリン代の方が高いでしょうに・・・」

思わず苦笑いしながらも、その、きっちりした対応とさわやかな態度に、思わずぐっときた。

朝、払ったのが1920円。よく調べてみると、実際には1850円でよかった。で、70円安くなるのがわかり、その差額をわざわざ勤務時間が終わるまで待って、自宅まで届けてくれたのだ。それも、自分が通勤に使っている自家用車で・・・。

以前は、郵便局なんて親方日の丸で、のんきなもの。一般企業に比べて甘く、緊張感に欠けているなんて言われていたけど、民営化に代表される時代の流れに、イメージを一新ってこと??

確かに、そういうことも関係しているんだろうけど、それ以上に「人」の問題だと思う。つまるところ、相手に対してどれほど《思いやり》をもち、誠実に接しているかということなのだ。

いかなる立場で、どんな仕事しているにせよ、この新人郵便局員さんのような心がけを忘れてはいけない・・・。そんなことを思い返したひとときだった。

安居 長敏(やすい ながとし)

滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。

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