2011.01.11
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若い先生たちへ

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 皆さま、穏やかな新年をお迎えのことと思います。
 今年もよろしくお願いいたします。

 さて、今年もお正月に、たくさんの年賀状をいただきました。20年以上も教員を続けていると、担任した子供たちの行く末が気になるものです。ですから、近況を知らせてくれる年賀状は、とてもありがたいと思っています。
 
 若い頃に担任した子供たちは社会人となり、忙しい毎日を送っているようです。その様子を本人や保護者の方が知らせてくださるのも嬉しいです。
 
 私が東京都に正式採用された直後に、初めて担任したクラスの男の子は、新幹線の運転手になるという夢をもっていました。彼は今年、その夢をかなえるべく、研修に入るとありました。就職からずっと様子を知らせてもらってきただけに、感無量です。小学校低学年から夢を追い続けた彼に、拍手を送りたいと思います。
 
 ところで、元日のある新聞の一面には、教育が取り上げられていました。不安定な社会情勢の中で、教育の果たす役割が重要視されていることに、心が引き締まる思いです。
 
 その日、たまたま若い学生さんのブログを目にしました。教員を目指していらっしゃるのか、その新聞記事に関して思いを綴られていました。そして、現役の教員や保護者の方々に向けて、教育方法を変えれば悩みがなくなるといった内容をも書いておられました。
 
 情熱があり素晴らしいと思った反面、机上で考えていることと現場には、かなり隔たりがあるのにと思わずにはいられませんでした。
 

 どの仕事でも同様だと思いますが、教員の仕事も一朝一夕で身につくものではありません。
 
 私たちは、年間に約1000時間の授業を行っています。それでも、ようやく一人前になれたと思ったのは、10年以上経ってからだったと記憶しています。
 そして20年以上が過ぎた今でも、改めて教育のもつ力の深さに気付かされることが、たくさんあるのです。
 
 教員にとって、若い時に教育に関して深く学ぶことは、とても大きな財産になると思います。私自身も、理想の教育観をもち、意気揚々として教員になった記憶があります。先輩の先生方から見れば、とても生意気だったに違いありません。
 ですから、自信をもって教育を語ることは素晴らしいと思います。
 
 しかし、教員の仕事は授業ばかりではなく、子供たちの成長の全てに関わります。信頼関係を築き、心を耕し、共に生きることを通して教えなければならないことの数々は、短い言葉では言い尽くせるものではありません。そして、子供たちが、大人になってどのように成長してくれたかにも、大きな責任があると思うのです。
 
 年賀状をいただくと、不思議とその子供たちとの授業や活動の様子が、鮮明によみがえります。若くて未熟だった頃には身体を使って一緒に遊んでやっていたなとか、総合的な学習の時間には体験的な学習をして楽しかったなとか、思いは様々です。そのひとつひとつの授業や、子供たちとの関わりが、今の私をつくってくれたのだと感謝しています。
 
 理想としていた教育を、どのようにして実践していくのか。そのためには、経験という試練を乗り越えなければならないということも、若い先生たちには、わかっていてほしいと思います。


 今年も子供たちの心に寄り添い、より一層いい教育ができるよう、研鑽を積み重ねていきたいと思っています。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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