2010.12.28
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子供たちを心の底から信頼する

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 4月に新5年生を担任して、2学期が終わりました。
 1学期のころは夢中で子供たちに接し、授業や行事に追われていましたが、時間が経つにつれ、私と子供たち、子供たち同士の信頼関係が深まってきたように感じます。
 
 そのような中で、子供たちを心底から信頼することにより、学習や活動がより充実したものになるということを学ばせてもらいました。もちろん、基礎的・基本的となる学習を行っておくことが前提ですが、応用を求めるような活動の時には、口出しをせずに見守ることが大事だということを、実感した場面がたくさんありました。
 
 その例をふたつご紹介したいと思います。
 
 ひとつ目は、11月初めに行った、特別支援学級との交流会でのことです。
 
 我が校は、特別支援学級の友達と、様々な場面で交流しています。5月に行われた運動会の組体操では、みんなで力を合わせて様々な技を完成させました。友達を思いやり、支え合って演技をやり通したことに、子供たちは大きな満足感を味わうことがでたようです。  

 また、10月には、埼玉県日高市にある高麗の巾着田に飯盒炊爨に行き、カレーライス作りをしました。材料や鍋・網といった道具を持って、電車での移動をしたので、大変なこともありました。でも、その時もよく話し合って分担し、楽しいひとときを過ごすことができました。
 
 さらに、連合音楽会にも一緒に参加し、歌や合奏を力一杯演奏してきました。

 このように、普段から同学年の友達とは、とても仲良くしています。
 
 さて、交流会では、特別支援学級の全ての学年の友達と、自己紹介をしたり遊んだりしました。事前にグループで遊びを考えたり、自己紹介に対する質問内容を話し合ったりしてから、交流会に参加したのです。
 
 私は、子供たちが具体的にどのような話し合いをしたかということに、口出しはしませんでした。話し合った内容の報告は受けましたが、子供たちが、それぞれに思いやりをもった交流会を企画してくれていると信じていたからです。
 
 当日は、私が想像した以上に素晴らしいものとなりました。みんなで円座になり、顔を寄せ合って自己紹介をしあったり、笑いながらゲームを楽しんだりすることができました。
 
 ふたつ目は学習発表会でのことです。5年生は、「森は生きている」の劇に挑戦しました。
 
 役割を決め、歌を教えるといった一連の指導はしましたが、その後は場面毎に分かれて、子供たち自身が劇を創り上げていきました。小道具や大道具も、子供たちのアイディアを生かして作りました。また、照明や大道具の係も、子供たちの自主性に任せ、役割を決めました。
 
 劇を演じるタイミングや歌を歌うタイミングも、子供たちと確認しあうといった指導法を取り、自分たちで考えて行動するように促しました。
 
 公演が終わって振り返ってみると、今回の学習発表会は、私の教員生活の中で、最も素晴らしいものになりました。
 子供たちが力を出し切って、自信をもって表現したことに、大きな拍手を送りたいと思います。
 
 特に、子供たちのとても美しい歌声は、賞賛の的となりました。「森は生きている」「一瞬の今を」「黄金の太陽」などの、全7曲を歌ったのですが、林 光氏らの作詞・作曲による楽曲は、どれも本当に素晴らしく、力強く、私たちに勇気を与えてくれました。それらの歌を歌いきったという経験は、今後の人生において大きな財産になると考えます。

 「信頼してやらせる」、「それが成功したことをほめる」という関係は、対象が誰であっても、よい関係を生む原動力となります。これからも子供たちを信頼し、子供たちも私自身も成長していけるように、努力していきたいと思っています。
 
 最後に、学習発表会をご覧いただいた、保護者の方の感想を掲載します。

「一人一人が、自分の役どころをしっかりと捉え、その子らしく一生懸命に演じている姿に、とても感動しました。本当に歌が上手で、ちょっとしたミュージカルの舞台を観せてもらったような満足感がありました」

「子供たちの歌声が心を打ち、本当に感動しました。一生懸命に役を演じきった最後の曲を聴いているうちに、目頭が熱くなりました」

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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