2010.12.16
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子どもが社会を変える

横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表 住田 昌治

「今、人々の価値観が変わってきた。3欲を持たなくなってきて、とりあえず食べられればいいと思うようになっている。不況のせいでしょうか。」

先日の立教大学でのESDカリキュラムのシンポジウムで、ある大学教授が話していました。私は、その「人々」と言うのは、学生をはじめ若者に多いのではないかと思います。最近、海外でボランティアをしている学生と話し合っていて、我々の価値観とは違うんだなと感じたことがありました。少し前までは、学生に何をやりたいかと聞くと「別に」と答えていました。最近は、「ボランティアをやりたい」という学生が増えてきました。海外にも、小学校にも、地域にも、NPOにもたくさんいます。そこで、どうしてボランティアをやりたいのか聞いてみました。その答えは、「今の大人のようにはなりたくない」「今の大人のような生き方はしたくない」ということでした。自分が食べられる分だけあれば、後は、人の役に立つ生き方がしたいというのです。私には、理解しがたい価値観です。何と、大人は反面教師の役割をきちんと果たしていたのです。私もこの歳になると、学生たちのような価値観を持つことはできません。お金は欲しいし、車も欲しい、ちょっとだけ名誉も欲しいと考えてしまいます。今よりももっといい家に住んで、いい暮らしをしたいとも思ってしまいます。欲張りな大人は、今、学生や若者たちに学ばなければいけないのかもしれません。
人の役に立つことに喜びを感じるということからは、本当の幸せとは何かを考えさせられます。

さらに、自分でアルバイトをしたお金で、なぜ海外でボランティアをするのか聞いてみました。すると、「小学校や中学校の時に、総合的な学習の時間で出会った人や見たり聞いたりした資料からショックを受けたことが、ずっと気になって、何とかしたいと考えていた」と話していました。あれだけ、総合は根付かなかった、ぽしゃったと多くの学者が言っているのですが、しっかり評価をしてみる必要があるようです。教育は、簡単に結果が出るものではありません。それなのに、PISAショックで、短絡的に見える学力向上にばかり目を向け、それを主張する学者の考えをメディアが大げさに伝えています。もっと、現場の子どもたちの姿をよく見ていかないと、未来からの留学生としての子どもに、早い段階で追い越されます。

子ども主役の時代。子どもが社会を変える時代が来ていることに、大人は早く気づき、もっと関心を示すべきです。

住田 昌治(すみだ まさはる)

横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表
学校の持続可能性を求めて、日々挑戦しています。これから日本版ESDスクールのデザインを描き、実現していきます。皆さん一緒に考えていきましょう。

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