2010.12.02
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なぜ、環境保全か?

横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表 住田 昌治

「CO2の排出量が増えました」「温暖化対策をしましょう」「地球環境が大変です」「自然や生態系を守りましょう」「地球にやさしく」「リサイクルしましょう」…地球環境の危機を伝える情報と、この問題への取り組みを呼びかける言葉が今、世の中にはあふれています。エコという言葉を見ない日もありません。

 新聞やニュースでは毎日のように、何か環境にかかわる報道があり、雑誌やインターネット上でも多くの情報が発信されています。学校でも子どもたちが授業で環境のことを習い、関心と知識とをたくわえる機会に恵まれています。

 しかし、なぜ、環境を保全しなくてはいけないのか、という理由を、誰かが納得のいく形で明確に示してくれることは、なかなかありません。環境と言っても、人によって捉えている内容も違うかもしれません。答えは簡単だという人がいるかもしれませんが、果たしてその答えは合っているのでしょうか。もし、合っているのなら、とっくに解決しているのではないでしょうか。でも、ますます状況は悪くなるばかりです。なぜなら、その本当の理由は、一人ひとりの心の中にあるからです。それに気づかない限りは、解決しない問題なのです。もしかすると、もう大人では無理かもしれません。

 心の中で、醸成されるもの。それが意志となって環境保全への取組を続けていく人になります。そこでは、どれだけ知識をもつかと言うことではなく、いかに危機感を持つかということです。そういうことから考えると、子どもたちの教育に力を入れて、本気で取り組むことでしか解決の道はないでしょう。PISAショックから抜け出すために学力向上に向かうのではなく、ESDに向かって行くことが必要なのだと考えます。体験・参加重視の方向に進むことが、持続可能な社会の担い手を育成することにつながるのです。

 世界には、またもっと違った理由で、環境問題に取り組む人たちがいるでしょう。環境というものの捉え方や考え方もさまざまですし、時には全く相反する見解を持つ人たちもいるに違いありません。そういう人たちの考えに触れることも大切です。将来に影響を与えるということは、今、何か行動を起こすことだけでなく、なぜ危機感を感じたのか、なぜその問題を解決したいと願うのか、自分なりの理由を、探し続けてみることが大切です。

 小学校で望むことは、考えたり、話し合ったり、活動したりして、振り返ってみたとき、自分のやってきたことに価値を見いだせることです。人と人とのつながりをつくり、世界に大きなうねりを起こす。今、子どもたちの手で!

住田 昌治(すみだ まさはる)

横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表
学校の持続可能性を求めて、日々挑戦しています。これから日本版ESDスクールのデザインを描き、実現していきます。皆さん一緒に考えていきましょう。

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