2010.12.03
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鬼のいたずら・・?

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 群馬県人ならば誰でも知っている「上毛カルタ」の五十音最初の「あ」は、「浅間のいたずら 鬼の押出し」です。その「浅間」とは、全国的にも活火山として知られる「浅間山」のことです。では、「鬼の押出し」とは、何でしょうか。

 浅間山は、群馬県の嬬恋村と長野県の軽井沢町の境に位置する標高2569mの活火山で、今でも噴煙をあげています。その浅間山周辺の標高1000-1500mの広大な土地を、浅間高原と言います。その中に、「鬼押し出し」といわれる景勝地があります。
 この「鬼押し出し」は、天明3年(1783年)の大噴火により噴出した溶岩により形成されたもので、その時の様子を見た人々が、火口で鬼が暴れて岩を押し出したように見えたという印象から、「鬼の押し出し」(鬼押し出し)という名称がついたそうです。
 この天明の大噴火は、日本の火山噴火の災害として最大の出来事となり、死者は総計1,600名以上、流出した家屋は1,000戸以上に達しました。浅間山の北斜面は、その時の火砕流と岩屑流・泥流によってえぐりとられ、細長いくぼ地ができました。その火砕流の流れたあと、そのえぐりとったくぼ地に沿って火口から溶岩流が流れ下りました。これが鬼押出溶岩流と言われるものです。巾2㎞、面積約6.8平方㎞、体積0.17立方㎞で、火口から北へ約5.5㎞流れて止まったそうです。

 その「鬼押し出し」の中に、昭和38年に浅間園が開園しました。同園は、鬼押出しの中を自由に探索できる「自然研究路」や浅間火山や浅間高原の自然を紹介する「火山博物館」(昭和42年開館)により成っています。この浅間園の辺りは、塊状溶岩と呼ばれる表面がゴツゴツした大小の岩塊がつみ重なったものが、最も多く見られる所です。

 今回(10月)、私が歩いた自然遊歩道(写真 上)は、奇岩が連なる「鬼押し出し」の中に2500mにわたって設置されているものです。自然研究コースとして、30分から60分までの4種類のコースを選択できるようになっています。また、コースの数カ所に噴火の際の避難壕(写真 中)が設けてあり、これには驚かされました。
 紅葉が見られるこの時期は、赤や黄色に染まる木々の中と、溶岩・浅間山の美しさは、ちょっとほかでは見られない風景(写真 下)だと思いました。

 上信越高原国立公園の中心部にある浅間高原は、その広大な規模と周辺に多様な温泉景勝地があるということで、設立当時は全国屈指の観光地でもあったようです。ところが、最近は、レジャーや観光の多様化により閑古鳥が鳴くような状況にあります。実際、私が訪れた時も、休日にも関わらず1時間ほどの間に数十人の観光客しか来ないのです。
 しかし、自然研究コースの爽快感、「鬼押し出し」の驚くべき景観には、特筆すべきものがあると思います。

 群馬県は、全国47都道府県でもっとも認知度が低く、魅力に欠ける県だと言われています。折しも来年(2011年)は、群馬デスティネーション・キャンペーン(群馬DC)が展開されます。是非、この機会に、群馬のよさの再発見して、全国にこのすばらしさを発信できたらよいと思いました。その核の一つとして、この不易の観光地とも言える「鬼押し出し」を売り出せたらいいなと思いました。貸し切りの自然研究コースでは、やはり寂しいものがありますから。

 群馬県民も「浅間のいたずら 鬼の押出し」と上毛カルタを読むだけではなく、現地を訪れるようにして郷土群馬のよさを再認識するようにすべきだと思いました。
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大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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