2010.11.04
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何も知らない私たち

横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表 住田 昌治

 5年生は、世界に目を向けて、現在どのような問題が起こっているのか知り、自分たちにできることをやっていこうと考えました。そこで、知り合いのカンボジアで教育支援に当たっている学生ボランティア「カンボジアの教育を支える会」のメンバーに連絡を取り、出前授業をしてもらうことにしました。

 学生ボランティアも、子どもたちの前で話をするのは初めてということで大変緊張していましたが、準備してきたクイズをやっていくうちに、だんだんうち解けてリラックスして授業を進めることができました。教師の思いとしては、カンボジアの様子を話してもらうより、「なぜカンボジアの教育を支援しているのか」「実際に支援に当たっている学校で行っていることは何か」「支援をして思ったことや考えたことは何か」「今後どういう支援をしていきたいと考えているのか」と、その学生さんたちの生き方や考え方について語ってもらおうと考えました。子どもにとって、教師以外の人と出会うということは、その人の生き方・考え方に触れることです。紹介をしてもらうだけでは、子どもたちの心に響きません。

 子どもたちは、学生ボランティアの悩みを聞く中で、自分たちがやろうと思ったことは、カンボジアの子どもたちにとっていいことなのだろうかと考えるようになりました。また、物があるということが幸せなのか、学校に通えない子どもたちはかわいそうなのか、募金や物資の援助にはどんな意味があって、実際にはどんな様子なのかと立ち止まって考えました。おそらく、カンボジアの子どもたちの様子を紹介してもらって、自分たちにできることは何だろうかと聞くと、「募金をしよう!ノートや鉛筆を送ろう!」ということで、すぐに行動に移すのだと思います。しかし、それは、子どもたちに何の学びもありません。本当に相手のことを知って、募金や物資援助をすることがどんな意味があるのか考えて、お互いの学びになるのはどんなことだろうか試行錯誤する中で答えを見つけ出していくことが子どもたちの本気の学びになります。安易に行動に移させてはいけないのです。

 結局、子どもたちは「自分たちは、何も知らなかったんだ」ということに気づき、もっと調べ、もっと考え、人間にとって大切なものは何かということに行き当たりました。ここからの学びでは、さらに生き方について本気で考えている大人と出会わせて、視野を広げさせたいと考えています。

 本気で考える大人と子どもがつながって、実践していく取組は、子どもたちに確かな意志と高い意識を醸成し、将来につなぐ生き方の基盤となります。

住田 昌治(すみだ まさはる)

横浜市立永田台小学校 校長 ESD横浜代表
学校の持続可能性を求めて、日々挑戦しています。これから日本版ESDスクールのデザインを描き、実現していきます。皆さん一緒に考えていきましょう。

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