2010.09.21
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藤岡市民討議会 2010

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 今年の8月28日、第3回藤岡市民討議会(群馬県藤岡市)に参加してきました。

 この「市民討議会」というものは、ドイツで住民自治の手法として行われているプラーヌンクスツェレを日本風にアレンジし、取り入れたものです。日本では2005年に、社団法人東京青年会議所(東京JC)が初めて東京千代田区で試行実施し、その後、各地の青年会議所を中心に広まりつつあるものです。

 この市民討議会のやり方は、一般的には以下のようです。
(1)無作為抽出された市民を参加者として確定する。
(2)5~6人のグループをつくり、進行係・記録係・発表係など役割分担を決め、討議会のテーマに沿った討議をする。
(3)その際、専門家や行政などから、データなどを用いて客観的に現状や課題について説明(情報提供)が行われる(2と3は、逆であることもある)。
(4)討議テーマに基づいた各人の解決アイデアを付箋などの用紙に記入し、グルーピングする(いわゆるKJ法)。
(5)(4)を元に、よりよい課題解決に向けてグループで討議し、3つくらいのアイデアに集約するとともに、模造紙などの大型の紙に見出しなどを書いて、掲示する。
(6)その掲示物を元に、グループ毎に討議結果を発表する。
(7)全ての発表を終えた後、他のグループも含め全ての結果の中から、自分がよいと思ったアイデアに各自が投票する。
(8)休憩時間をはさみ、メンバーをシャッフルして、また別の討議テーマに臨み、(2)~(7)のサイクルを繰り返す。

 過去2回の藤岡市民討議会は、ドイツの形式をそのまま踏襲して行われました。私は、昨年の第2回の時に無作為抽出され参加しましたが、常に緊張感が伴い重く堅苦しい雰囲気の中で、丸一日を過ごしました。よい経験をしたと感じましたが、この雰囲気では、二度は参加したくないと思っていました。
 そうしたところ、今年の2月に一般市民を交えた「藤岡市民討議会実行委員会」を立ち上げるという話が、藤岡青年会議所(藤岡JC)来ました。私としても、もっと明るく自由に話し合える討議会にして、参加者が参加してよかったと思え、討議会としても成果をあげたいと思い、実行委員になることにしました。

 それから毎月2回程度の実行委員会を持ち、次のようなことを決めていきました。
(1)3回目の藤岡市民討議会は、ファシリテーション型市民討議会として、「藤岡2010タイプの市民討議会」を提案・実行し、検証する。
(2)討議テーマを追究するとともに、「楽しさ」と「参加者のスキルアップ」も大切にしたプログラムをつくる。
(3)チラシも会場づくりも楽しく、ワクワクするようなものにする。
(4)実行委員も参加者も「協働」をキーワードとして、交流を通して目的を達成するようにする。
(5)実行委員会メンバーは、ファシリテーションを専門家から学ぶ。

 実際に、堅苦しい「藤岡市民討議会」の愛称を、考えることにしました。決まった愛称は、「想いの交差点(クロスロード) 好きですふじおか」です。一見、ふざけているようですが、これを聞くだけで「えっ、何?」「楽しいことが起こりそう・・」という興味関心を高めるのに、十分な効果を発揮しました。チラシにも工夫を凝らしました(写真 上)。
 そして、会場づくりですが、コンセプトを「夏」として、いろいろ考えました。会場の真ん中にキャンプファイヤー風のやぐらを組み、右壁面は夏の海、左側面は夏の山の様子を表現することにしました。「夏の海」には波・浮き輪・ボート・シュノーケルなどが並び、「夏の山」には手がきの風景画にちぎり絵の花火、テントやバーベキューセット、昆虫採集の道具も並べられました。入り口付近には、夏祭りの屋台を作り、飲み物を用意しました。
 丸一日をかけて、会場の雰囲気を盛り上げるためのセットをつくりました。

 そして、当日。参加者は会場に入った瞬間、若干の戸惑いを見せていましたが、スタッフが声を掛けるたびに、その表情も緩み、グループワークになってからは笑い声も出るようになってきました(写真 中)。
 もちろん、『みんなで一緒にすすめる 楽しいまちづくり』のテーマに沿って、3回のKJ法を用いた討議内容・結果も充実したものになりました。グループ発表では、真剣な中にもなごやかさがあり、参加者の満足感も伺えました(写真 下)。

 大成功のうちに、第3回藤岡市民討議会「想いの交差点(クロスロード) 好きですふじおか」を終了することができました。
 結果のまとめと今後について、まだまだ課題はありますが、一定の成果を出すことができたと思っています。

 ファシリテーション型市民討議会のテクニックは、職員会議や校内研修にも十分活かすことができるものです。その活性化に期待が持てます。同時に、授業や児童の活動にも活用できるところもあると考えています。

 どのように活用法があるか、考えていきたいと思っています。
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大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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