2010.05.03
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褒めることと叱ること

横浜市立中田中学校 英語科 教諭   石山 等

 私は軟式テニス(現在のソフトテニス)、バスケットボール、剣道、卓球、女子ソフトボールと運動部の顧問を続けてきました。その中でも一番長く続けたのが女子ソフトボールの顧問です。鬼顧問として有名だった私は、大きな声で選手を怒鳴り飛ばすような厳しい雰囲気を好みました。その厳しい指導の下で、いくつものいいチームが育ったのは確かですが、今思えば、もう少し褒める場面を作っていたら、もっともっと素晴らしいチームができていたかも知れません。私が大声で叱りとばすことで、選手を萎縮させてしまったケースが少なからずあったでしょう。褒めることと叱ることのバランスをとることは、非常に大切なことだと思います。

 ところが、最近では褒めることの大切さを強調する余り、叱ることよりも褒めることに重点が置かれすぎている場合がないでしょうか。「褒めること」=「やる気を出させること」という公式が常に正しいように勘違いされたために、どんな場面でも子供たちにプラスの評価を与えてしまって、「褒めること」のインフレ状態が起きてしまうこともあります。そのような状況の中では、子供たちは褒められても心から喜ぶことができません。子供たちは私たち大人が思う以上に、厳しい評価を求めることがあります。要するに、レベルを落として簡単に褒められたくないわけですね。

 また、何でも褒めることで子供を育てようとすると、ストレスに弱い子供が育ってしまうことはないでしょうか。いつも優しい言葉をかけられることに慣れきってしまうと、ある日突然厳しい言葉に接してパニックを起こしてしまうということです。ある科学者の言うところでは、人間が正常に成長していくためには、ある程度のストレスが必要だそうです。そういう意味でも、子供たちを甘い環境で育てすぎるのは決してプラスではないような気がします。

 私の家では室内犬を飼っていますが、彼が私たちの注意を惹こうとしてわざと悪さをすることがあるのです。そういうとき、こちらが忙しくてイライラしていたりすると、ついつい強く叱ってしまう。でも、はっとして彼の目を見ると、目に恐怖と悲しみの色が浮かんでいるのが手に取るようにわかります。そして、すぐに彼に謝るのです。「大きい声を出してごめんね」子供たちにも、同じような場面がないとは言えません。ですから、褒めることと叱ることのほどよいバランスは常に考えていなければいけないのだと思います。

あるとき、学校に来ていた外国人講師に対して、冗談で大変失礼な言葉をぶつけた生徒がおりました。私は大声で一喝。クラスが静まりかえりました。もし、私がにこにこしながら注意していたら、子供たちの反省はなかったと思います。ですから、そういう叱り方も必要なんですね。もちろん、一喝した後で、なぜ悪かったのか、私は子供たちにきちんと説明しました。沈んだ雰囲気をいつまでも引きずるのは決していいことではありませんからね。

 ただ、やはり注意したいのは、最近は子供の人権が叫ばれる余り、子供たちを怒鳴り飛ばす場面が極端に少なくなったということです。何をやっても諭すような叱り方を続けていたら、子供たちは学校の教師を、悪い言葉で言えば「なめる」ようになるばかりでしょう。「怒ると怖い」というイメージは、どの先生も持っていた方がいいと私は思います。もちろん、褒めるときは思いっきり褒めてあげたいですけどね。

石山 等(いしやま ひとし)

横浜市立中田中学校 英語科 教諭
52歳。4年半のブランクを経て、教育界に復帰しました。最初に担任したのが3年生の素晴らしい子どもたちで、昔の元気一杯だった自分を思い出させてくれて、心から感謝しています。

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