6月は全国的にホタルのシーズンです。今年は、春先の天候不順により、ゲンジボタルの発生が1週間ほど遅れたところが多かったようですが、発生数としては例年並みだったようです。
ホタルは、日本では夏の風物詩として親しまれ、かつては竹箒やホタル篭、あるいはホタルを入れるためのネギを片手にホタルを追いかけるといった風景が見られました。また、ホタルは古くから書に記され、詩歌に詠まれるなどしてきました。たとえば、日本書紀には「彼地多有螢火之光神」(ソノクニホタルヒノカガヤクカミニアリ)とあり、平安時代の枕草子(清少納言)や源氏物語(紫式部)にもホタルに関するものがあります。このように、日本人はホタルを見ると郷愁を感じ、何かをしたくなる民族であると言えましょう。
ところが、最近はこうした風景がほとんど見られなくなり、同時に口承により民間伝承されてきた「ホタル狩りの唄」も衰退してしまい、今どきの子ども達は知らないという事態にもなってきています。
私は20数年にわたり、ホタルの生息・生態研究と保護活動を続けていますが、毎年、ホタルに出会うと、つい口ずさんでしまうのが、この定番の「ホタル狩りの唄」です。
ほー ほー ほーたるこい
あっちの水は にーがいぞ
こっちの水は あーまいぞ
ほー ほー ほーたるこい
誰でも知っていると思っていたこの「ホタル狩りの唄」が、いつ頃から知られるようになったのか調べてみました。
それは、この唄が昭和初期の国定国語教科書『小学国語読本 巻一』尋常科用に、採用されたことが大きな要因となっているようです。そこには、次のように記されていました。
アチラ デモ コチラ デモ
ホタル ヲ ヨブ コエ ガ シマス。
ホ、ホ、ホタル コイ。
アッチ ノ ミヅ ハ、
ニガイ ゾ。
コッチ ノ ミヅ ハ、
アマイ ゾ。
ホ、ホ、ホタル コイ。
しかし、この「ホタル狩りの唄」は、全国各地でいろいろな形で伝承されていたものがあるのです。一見、同じように見える唄でも、歌詞の一部に微妙な変化があり、吟味してみると、その唄が歌い継がれてきた地域の環境や時代、生活習慣を映し出し、ホタルと人々の関連を唄っているのです。たとえば、私の郷土である群馬県のある地域に伝承されている歌詞は、次のようです。
ほうたるこい かんねんこい
かの木に止まって まわってこい
あっちの水は にがいぞ
こっちの水は あまいぞ
ほ ほ 蛍こい かんねんこい
この歌詞の中に出てくる「かんねん」は、ホタルの呼び名です。この馴染みのない「かんねん」というのは、神聖な力を身に付けた超人的な山伏の異名、あるいは転訛した用語のようですが、地域住民の何らかの信仰や願いが隠されている言葉だと思います。
全国に伝わるこうした「ホタル狩りの唄」は、「あっちの水」形式、「山見て来い」形式、「昼は草場の露飲んで」形式の3つの系統におよそ分けられるとされていますが、これらの形式を混合したものも多くあります。
また、唄のほとんどが、ラドレミの4音からなる陽旋法(田舎節)の曲であり、多くのわらべ唄と同じで、正に庶民の中から生まれた唄と言えます。
30年近く前から始まった活発なホタルの保護や復活運動は、環境問題や環境教育、あるいは地域の活性化といった意味で行われてきました。しかし、日本のホタルは、環境指標や季節的な生物といった意義だけではなく、実は多くの文化的な側面も持っているのです。つまり、ホタルは記憶にも記録にも残る文化的なものを生み出すという意味で「文化昆虫」とまで言うことができるのです。もっとわかりやすく表現すると、「いやし系昆虫」と言えるのです。
私たちは、これから、日本における「ホタル文化」も継承していかなければならないのではないか、と思っています。みなさんの住む地域には、どんな「ホタル狩りの唄」がありますか、そして、ホタルを見て何を感じますか。
ホタルは、日本では夏の風物詩として親しまれ、かつては竹箒やホタル篭、あるいはホタルを入れるためのネギを片手にホタルを追いかけるといった風景が見られました。また、ホタルは古くから書に記され、詩歌に詠まれるなどしてきました。たとえば、日本書紀には「彼地多有螢火之光神」(ソノクニホタルヒノカガヤクカミニアリ)とあり、平安時代の枕草子(清少納言)や源氏物語(紫式部)にもホタルに関するものがあります。このように、日本人はホタルを見ると郷愁を感じ、何かをしたくなる民族であると言えましょう。
ところが、最近はこうした風景がほとんど見られなくなり、同時に口承により民間伝承されてきた「ホタル狩りの唄」も衰退してしまい、今どきの子ども達は知らないという事態にもなってきています。
私は20数年にわたり、ホタルの生息・生態研究と保護活動を続けていますが、毎年、ホタルに出会うと、つい口ずさんでしまうのが、この定番の「ホタル狩りの唄」です。
ほー ほー ほーたるこい
あっちの水は にーがいぞ
こっちの水は あーまいぞ
ほー ほー ほーたるこい
誰でも知っていると思っていたこの「ホタル狩りの唄」が、いつ頃から知られるようになったのか調べてみました。
それは、この唄が昭和初期の国定国語教科書『小学国語読本 巻一』尋常科用に、採用されたことが大きな要因となっているようです。そこには、次のように記されていました。
アチラ デモ コチラ デモ
ホタル ヲ ヨブ コエ ガ シマス。
ホ、ホ、ホタル コイ。
アッチ ノ ミヅ ハ、
ニガイ ゾ。
コッチ ノ ミヅ ハ、
アマイ ゾ。
ホ、ホ、ホタル コイ。
しかし、この「ホタル狩りの唄」は、全国各地でいろいろな形で伝承されていたものがあるのです。一見、同じように見える唄でも、歌詞の一部に微妙な変化があり、吟味してみると、その唄が歌い継がれてきた地域の環境や時代、生活習慣を映し出し、ホタルと人々の関連を唄っているのです。たとえば、私の郷土である群馬県のある地域に伝承されている歌詞は、次のようです。
ほうたるこい かんねんこい
かの木に止まって まわってこい
あっちの水は にがいぞ
こっちの水は あまいぞ
ほ ほ 蛍こい かんねんこい
この歌詞の中に出てくる「かんねん」は、ホタルの呼び名です。この馴染みのない「かんねん」というのは、神聖な力を身に付けた超人的な山伏の異名、あるいは転訛した用語のようですが、地域住民の何らかの信仰や願いが隠されている言葉だと思います。
全国に伝わるこうした「ホタル狩りの唄」は、「あっちの水」形式、「山見て来い」形式、「昼は草場の露飲んで」形式の3つの系統におよそ分けられるとされていますが、これらの形式を混合したものも多くあります。
また、唄のほとんどが、ラドレミの4音からなる陽旋法(田舎節)の曲であり、多くのわらべ唄と同じで、正に庶民の中から生まれた唄と言えます。
30年近く前から始まった活発なホタルの保護や復活運動は、環境問題や環境教育、あるいは地域の活性化といった意味で行われてきました。しかし、日本のホタルは、環境指標や季節的な生物といった意義だけではなく、実は多くの文化的な側面も持っているのです。つまり、ホタルは記憶にも記録にも残る文化的なものを生み出すという意味で「文化昆虫」とまで言うことができるのです。もっとわかりやすく表現すると、「いやし系昆虫」と言えるのです。
私たちは、これから、日本における「ホタル文化」も継承していかなければならないのではないか、と思っています。みなさんの住む地域には、どんな「ホタル狩りの唄」がありますか、そして、ホタルを見て何を感じますか。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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