2010.06.16
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たかが電話、されど電話

滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長 安居 長敏

5月下旬から、中学校では土曜日の午前中を使って小学5・6年生を対象に「開放講座」を実施している。コンピュータ入門、英会話入門、おもしろ理科実験の3講座で、僕の担当する理科実験は6月12日からの3回シリーズ。40人を超す希望者があり、急遽2分割して行うことにした。

さて、その実験材料に必要だということで、写真のフィルムケースが学校にどれくらい残っていたかを同僚に尋ねると、「う~ん、どうでしょう? 数個はあったと思いますが・・・」とのこと。「確認してきましょうか?」の声に、「いいよ、いいよ」と答え、どこかありそうなところ(写真屋さんとか)を考えてみる。

出入りの写真屋さんに電話したところ、「ウチも3年前からデジタルにしてますし、最近ほとんどのお客さんがデジタルカメラなんで・・・」と、ケース自体をめったに見ないという返事だった。「確かに、そうだよな・・・」と納得しつつも、ダメもとで市内にある大手カメラチェーン店に電話を入れてみた。

応対に出てくれた声のきれいなお姉さんに、「あのぉ~、ちょっとおたずねしますが・・・、写真のフィルムケースって、あります?」。こちらの不安げな声をかき消すような明るくやさしいトーンで、「ハイ! ストックありますよ!」と即、返事が返ってきて、「たぶん1箱ぐらい。小さな縦長のケースですけど、それにいっぱいあったはずです」。

おっ、やったね。

僕:「40個くらいはありますか?」
店:「どうでしょう・・・。いま確認して、あとで折り返しましょうか?」
僕:「いえ、そこまでしていただかなくても・・・。あっただけでうれしいんで」

どうです、この親切な対応。何もカメラを買おうってお客さんじゃなく、フィルムケースをタダで譲ってもらいたいという、いわば何の儲けにもならない相手に、当たり前のようにここまでサービスしてくれる。さすがだね。

僕:「じゃあ、明日、時間がはっきりしないので、改めて電話してから取りに行きます。残しといて下さい」
店:「いえ、別に直接来てもらってもかまいません。数を確認してお取り置きしておきますので。滋賀学園の安居先生でしたね、わかりました。ありがとうございます」

いやいや、ありがとうを言うのはこっちだよ、と恐縮しつつ、最後は両方が頭を下げながらお礼を言い合って電話を切った。どこか温かい雰囲気を感じつつ、笑顔いっぱいの中で実験材料が手に入った。

ダメだと思っていても、確認してみるもんやな・・・ということを改めて思うと同時に、電話ひとつの応対でここまでいい印象を持てるのかということを痛感した出来事だった。

もちろん、カメラのことで何かあったら、真っ先にこの店に相談しようって思う。

たかが電話、されど電話・・・

直接、顔が見えないがゆえに、言葉の使い方、声のトーンなどの応対ひとつで、その印象は大きく変わってくる。

我々も今一度自分を見直し、生徒や保護者、出入りの人などにキチンと対応できるよう、常に意識しないとダメだな。

安居 長敏(やすい ながとし)

滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。

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