2010.02.24
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

コア・ネットワーク・デザイン

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 平成21年度もあと1カ月余りとなってきました。この1年間、子ども達がどれだけ伸びたか、教師自身が自己評価するべき時とも言えます。
 教師のミッションは、教育基本法に示される教育の目的に向かって、子どもを育てることです。そのためには、様々な考え方や手法・実践があります。
 最近の私は、「コア・ネットワーク・デザイン」という考え方を持って、実践しています。これは、私の造語ですので、どのようなものかを、実践例を挙げながら紹介します。

 例えば、5年生の社会科では、国土や産業にかかわって「国土の様子」「食料生産」「工業生産」「情報産業」について、国民生活と関連づけながら学習していきます。
 本校で使用している教科書の配列に従うと、「食料生産」「工業生産」「情報産業」「国土の様子」となっています。4月は「食料生産」の単元を農業・水産業の順に学習していきます。農業では、主に米づくりについて学ぶことになっています。
 私はこれまで、5年生を担任した時は、教科書に従い、調べ学習を交えながら、実際に米作り体験や自動車工場見学をさせることで満足してきました。
 しかし、子ども達にとってみれば、教科書通りに習っただけ、教科書に載っているからやっただけという感じだったのではないでしょうか。

 そこで、今年度は、何のために学ぶのか、何でその順番で学ぶのかなどを考えさせ、子ども自身が納得して、学びを進められるようにしてきました。この「学びを納得して進める」を、「学びのコア」と呼ぶことにしました。

 これまでも、単元や題材の学習を始めるときに、「動機付け」ということはしてきました。しかし、この動機付けは、その1時間ぐらいならば効果的ですが、時間が立てばたつほど、薄れてくるものです。これを継続させることができるのが、この「学びのコア」でもあります。つまり、「学びのコア」は、何のために学ぶのかを、子ども自身が自覚し、行動化する源であり、それを持たせることで、自ら学び始める子どもになるのです。

 そう考えると、年度始めの各教科の授業開きが、非常に重要となってきます。ここでは、先にも取り上げた5年社会科について紹介します。
 まず、社会科とは、何を学ぶのかと問いました。子ども達は、3・4年生でしたことの一部しか言えませんでした。つまり、社会科という教科をまったく知らないし、分かっていないのです。根本・本質・源がないのです。そこで、黒板に「社会科とは?」と書き、国語辞典を引かせて、その意味を書かせました(写真)。そして、そこに書かれた3つのうち、1つ目の内容は主に3~4年生で、2つ目の内容は主に5年生、3つ目の内容は主に6年生で学ぶことになっていると話しました。こうして、社会科を学ぶ大きなコアをつくりました。
 次に、教科書の目次を見ることにしました。上の教科書には、「食料生産」と「工業生産」の2単元しかありません。まず、なぜ、この配列かを考えさせました。
 人間生活と関連させることで、食べることの方が大事だからという結論になりました。ここで、中くらいのコアができました。
 そして、食料生産の内容を見ると、米作りに関連した学習内容が大きなスペースを占めています。これは、なぜかを考えさせました。子ども達から決定的な答えは出ませんでしたが、大事なことは考えたり、予想したりすることだということ(学び方)を学ぶことができました。
 米作りについて詳しく学習するわけは、日本人は本来、農耕民族であるからだとし、詳しくは6年生の社会で学習する(学習の系統性の理解)と話しました。これは、5年生としては小さなコアですが、6年の社会科学習に向けての大きなコアでもあるのです。

 5・6年生の社会科は教えづらいと言われています。具体的な調べ学習が難しかったり、暗記が増えたりして、子ども達の興味・関心も薄くなるからだと言われています。
 しかし、教師がすべて教えようとするのではなく、このように、子ども達一人ひとりの中に、「学びのコア」をつくってあげることで、子ども自身が学び始めるようになると考えています。

 3学期に入り、「日本の国土」についての学習を始めることになりました。
「なぜ、沖縄や北海道のことを勉強しなければならないのか?」
と、いつものように問いました。
 皆さんならば、何という答えを用意しますか。私は、
「これからの国際社会の中で、日本人として恥ずかしくないように、自国のことについて 知るために学習するのだ。」
と話しました。

 このように、大小のコアをつないで、学びの意欲の相乗効果をねらった構想(コア・ネットワーク・デザイン)を展開して、子どもを育てています。
 現在はその最終構想を発動し、最高学年に向けての仕上げをしているところです。
100224.jpg

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

同じテーマの執筆者
  • 安居 長敏

    滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長

  • 樋口 万太郎

    京都教育大学付属桃山小学校

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 深見 智一

    北海道公立小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop