群馬県には『上毛カルタ』という郷土の歴史上の人物や名所、名品などを取り入れた郷土かるたがあります。この『上毛カルタ』の上毛とは、上毛国と書いて「かみつけのくに」と読み、群馬県を指します。
『上毛カルタ』は題材を公募し、昭和22年に発行され、学校や地域の子供会・育成会などで習い練習します。年末から練習会が始まり、年明けになると「かるた大会」が各地区で行われ、県大会まで行われています。
全県的に熱心な取り組みが行われているために、群馬県出身者は『上毛カルタ』のほとんどを暗記しているのです。時代劇などで忍者の合い言葉で、「山と言えば川」というのがありますが、群馬県民の合い言葉は、「あ」と言えば「浅間のいたずら 鬼の押出し」となるぐらいなのです。
おそらく大人になっても覚えているはずなので、県外に出ていっても、上毛カルタを言えることで「群馬県民の証」にもなっているのです。
ところで、全国的にも有名な「草津温泉」ですが、一般的には「くさつ」と読み、正式にも「くさつ」です。しかし、群馬県民は「くさづ」と読むため、県外で言うと指摘されることもあるそうです。なぜでしょうか。
それは、『上毛カルタ』の「く」は、「草津よいとこ 薬の温泉(いでゆ)」だからです。読み札には、読み仮名がふってありますが、「草津」には「くさづ」とあり、当然、読み手は「くさづ」と読みます。子どもの頃から何十回、何百回と「くさづ、くさづ」を聞かされているわけですから、群馬県民は「くさづ」と言うわけです(写真)。
かるた大会には、団体戦があり、特定の札の組み合わせを集めると役になり、得点が増します。群馬県の5大都市の「おかめきけ」、群馬県を代表する上毛三山の「すもの」、群馬県の地形・人口・県庁所在地の「つちけ」です。
こうした意味を持ったかるたに、子ども時代から親しんでいくことで、子ども達は自然と群馬県の歴史・人物・名所・名品などをよく知り、郷土を愛するようになります。
学校教育の中では、4年社会科での郷土学習の際に役立っています。『上毛カルタ』をもとにした市町村や名所・名品調べなどが、スムーズに行われるからです。
『上毛カルタ』の「つ」は、「つる舞う形の群馬県」です(写真)。群馬県の形状を鶴にたとえた古来の表現を生かし、子ども達に「貧しさは恥じることではない。めでたい鶴の背に乗っている君たちには未来がある。胸を張って堂々とはばたいてほしい」と大きな願いが込められているそうです。
私が一番好きな札は、「ら」の「雷と空っ風 義理人情」です(写真)。前半は、夏と冬の風物詩である雷と季節風のことであり、群馬県の地形が生んだ特色を表しています。後半は、そうした厳しい自然風土でありながら、人情に厚く義理に固いという県民性を表しています。
社会のためには、自分を忘れ、公共のために利益をかえりみない美風を、真の上州名物として伝統にできたらよいと思っています。
『上毛カルタ』をしながら、郷土を愛する子どもの本当の姿を想像してみました。各県や市町村にも「郷土カルタ」があると思いますが、その制作の過程や願いを見直し、郷土を愛する子ども達の育成の一助としてみてはいかがでしょうか。
(注)文中の「く」「つ」「ら」の絵札と詠み札は、財団法人群馬文化協会発行による『上毛かるた』から引用
『上毛カルタ』は題材を公募し、昭和22年に発行され、学校や地域の子供会・育成会などで習い練習します。年末から練習会が始まり、年明けになると「かるた大会」が各地区で行われ、県大会まで行われています。
全県的に熱心な取り組みが行われているために、群馬県出身者は『上毛カルタ』のほとんどを暗記しているのです。時代劇などで忍者の合い言葉で、「山と言えば川」というのがありますが、群馬県民の合い言葉は、「あ」と言えば「浅間のいたずら 鬼の押出し」となるぐらいなのです。
おそらく大人になっても覚えているはずなので、県外に出ていっても、上毛カルタを言えることで「群馬県民の証」にもなっているのです。
ところで、全国的にも有名な「草津温泉」ですが、一般的には「くさつ」と読み、正式にも「くさつ」です。しかし、群馬県民は「くさづ」と読むため、県外で言うと指摘されることもあるそうです。なぜでしょうか。
それは、『上毛カルタ』の「く」は、「草津よいとこ 薬の温泉(いでゆ)」だからです。読み札には、読み仮名がふってありますが、「草津」には「くさづ」とあり、当然、読み手は「くさづ」と読みます。子どもの頃から何十回、何百回と「くさづ、くさづ」を聞かされているわけですから、群馬県民は「くさづ」と言うわけです(写真)。
かるた大会には、団体戦があり、特定の札の組み合わせを集めると役になり、得点が増します。群馬県の5大都市の「おかめきけ」、群馬県を代表する上毛三山の「すもの」、群馬県の地形・人口・県庁所在地の「つちけ」です。
こうした意味を持ったかるたに、子ども時代から親しんでいくことで、子ども達は自然と群馬県の歴史・人物・名所・名品などをよく知り、郷土を愛するようになります。
学校教育の中では、4年社会科での郷土学習の際に役立っています。『上毛カルタ』をもとにした市町村や名所・名品調べなどが、スムーズに行われるからです。
『上毛カルタ』の「つ」は、「つる舞う形の群馬県」です(写真)。群馬県の形状を鶴にたとえた古来の表現を生かし、子ども達に「貧しさは恥じることではない。めでたい鶴の背に乗っている君たちには未来がある。胸を張って堂々とはばたいてほしい」と大きな願いが込められているそうです。
私が一番好きな札は、「ら」の「雷と空っ風 義理人情」です(写真)。前半は、夏と冬の風物詩である雷と季節風のことであり、群馬県の地形が生んだ特色を表しています。後半は、そうした厳しい自然風土でありながら、人情に厚く義理に固いという県民性を表しています。
社会のためには、自分を忘れ、公共のために利益をかえりみない美風を、真の上州名物として伝統にできたらよいと思っています。
『上毛カルタ』をしながら、郷土を愛する子どもの本当の姿を想像してみました。各県や市町村にも「郷土カルタ」があると思いますが、その制作の過程や願いを見直し、郷土を愛する子ども達の育成の一助としてみてはいかがでしょうか。
(注)文中の「く」「つ」「ら」の絵札と詠み札は、財団法人群馬文化協会発行による『上毛かるた』から引用
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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