2010.01.13
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冬の光

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 不景気や暗いニュースの続くこの頃ですが、各地各所におけるイルミネーションは、それぞれに趣向を凝らした光のデザインとなっていて、何かホッとするものを感じさせてくれます。
 一昨年、東京タワーをはじめ、恵比寿ガーデンプレイス、六本木けやき坂、東京ミッドタウン、丸の内の東京5大イルミネーションを見てきましたが、すべて無料で楽しむことができました。

 この冬、東京5大イルミネーションの感動をはるかに上回る「冬の光」に出会うことができました。それは、自然のホタルの光を見ることができたことです。これまでも、人工飼育で育て、研究上、季節をずらして、冬に成虫になるようにしたヘイケボタルの光は、見たことがありました。しかし、今回は正真正銘、自然のホタルの光なのです。

 私は30年近くホタルの観察や研究をしてきました。ここ10年ほどは、よく知られているゲンジボタル・ヘイケボタルから、その祖先とも言えるホタルを調べています。このホタルは一生を陸の上で暮らすので、陸生ホタルと言われています。日本には50種類ほどいます。
 ホタルは南方系の昆虫なので、南のあたたかい地方にたくさんの種類や数がいます。日本の南には南西諸島がありますが、この島々には固有の種も生息していることが知られています。

 こうした南西諸島に生息するホタルが見たいと思い、一昨年の12月に沖縄本島に出かけました。沖縄本島には、7種類以上の陸生ホタルが生息していて、12月でも1種類のホタルが成虫で見られると言われています。しかし、残念ながら、冬のホタルは見つけることはできませんでした。6~7月は、いくつかのホタルがよく見られるという情報だけをお土産に帰ってきました。

 そこで、昨年の12月は沖縄本島より約400キロ南西に位置し、東京からは約2000キロも離れている先島諸島に行くことにしました。その先島諸島の石垣島には3種の固有種、西表島には2種の固有種をはじめ、両島にはさらに5種の陸生ホタルの生息が確認されているからです。そのうち、12月でも成虫が見られるホタルが3種類もいるということで、期待を持って出かけていきました。

 まず、石垣島から船で西表島に向かいました。あいにくの雨模様でしたが、仲間川ではマングローブの密林(写真上)や日本一のサキシマスオウノキ(写真中)を見ることができました。しかし、残念ながら、ホタルは見つけることができませんでした。雨を避けて、隠れてしまったのでしょうか。そこで、「イリオモテヤマネコに注意」という看板を見ながら、昼食をとるために東部の美原という所に移動しました。レストランでの昼食を食べ終わって、ふと近くの椅子を見ると、あやしい昆虫がいるではありませんか。おそらく雨を避け、あたたかい店内に入ってきたと思われるホタルです。はやる気持ちを抑えながら、捕獲しました。
 夜になって見てみると、かなり強い連続光を放っています。ゲンジボタルやヘイケボタルの光とは明らかに違うものでした。2年越しで追い求めてきたホタルの光に会えた瞬間でした。本当に感激しました。ただ、この時点では、このホタルの種は同定できませんでした。とりあえず、大事に持ち帰らなくてはという思いでいっぱいでした。

 翌日は、石垣島西部の川平湾に移動しました。ここは、七色の海で知られる観光地ですが、観光客の服に付いていたというホタルを紹介しているバスガイドさんを見かけました。話によると、そのホタルはオオシママドボタルだということでした。私も海岸付近を必死に探しましたが、残念ながら見つけることはできませんでした。
 ただ、前日に西表島で捕獲したホタルも、オオシママドボタルではないかということがわかりました。

 西表島で捕獲したホタルは、2000キロ以上も離れた群馬県に生きたまま持ち帰ることができました。自宅で、写真やビデオ撮影をするとともに、同定を行いました。種は、やはりオオシママドボタル(写真下)で、全長16ミリ、最大幅長6ミリのオスでした。

 この冬のホタルとの出会いは、南北に細長い日本のよさを、あらためて感じさせてくれました。季節の変化とともに、気候・自然・風土・文化など大きな違いがあり、それぞれのよさを同じ日本人として共有していくことが、日本人としての誇りを一層感じることになるのではないかと思いました。

 冬のホタルの光をながめながら、日本のよさや日本人としての誇りを大切にできる教育を実践していきたいと、強く思いました。
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大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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