2009.12.30
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2009「今年の漢字」

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 2009年の「今年の漢字」は『新』に決まり、発表されました。
 「今年の漢字」は、(財)日本漢字能力検定協会が毎年全国から公募して、一番票が多かった漢字一字を選出し、発表時には清水寺の奥の院舞台で森清範貫主により巨大な和紙に漢字一字が揮毫されることで知られています。
 今年の漢字として、応募者が『新』を選んだ理由としては、(1)新政権の誕生、(2)スポーツ界の新記録、(3)新型インフルエンザの猛威、(4)新制度の導入、(5)未来へ向かって新しい時代の幕開け、などをあげています。昨年の漢字が、『変』であったことからも、新しいことや新しい時代へ期待したということでしょうか。

 この「今年の漢字」については、事前にメディアなどで予想をしたり、学校でも授業として取り上げたりしています。私も個人的に予想をしていて、昨年の『変』はバッチリ当てました。しかし、今年の漢字『新』を正解した人は、少なかったのではないでしょうか。私も今年は外してしまいました。
 ところで、今年はどんな年だったのでしょうか。ちょっと振り返ってみました。

 今年は年明けから、電気・自動車など多くのメーカーで赤字決算の報告があり、多くの企業が従業員の削減を発表するなど、暗いスタートになったように思います。そこに、芸能人をはじめ大学生までに蔓延する大麻などの薬物使用のニュースが続きました。
 以下、気になったことを思いつくままに並べてみると、
・3月 ETC利用で高速道路休日1,000円が発表され、ETC車載器騒動
・4月 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の世界的拡大
・5月 裁判員制度開始
・7月 九州北部と中国地方西部で記録的豪雨
・8月 台風9号で兵庫県佐用町などに被害
・9月 鳩山総理が誕生し、新内閣が発足
    前原国土交通省が八ッ場ダムの建設中止を表明
・10月 日本航空が国の管理下に置かれる
・11月 政府の行政刷新会議による「事業仕分け」
・12月 新語・流行語大賞に「政権交代」

 こう見てみると2009年は、確かに新しいことやこれまでになかったことが始まった年だと言えそうです。表面的には新しいことは始まりましたが、その『新』は明るい希望の持てるという意味合いは少なかったように思えます。
 たとえば、ETC1000円にしても、車載器騒動あり、高速道路渋滞による環境悪化の懸念が拡がりました。新型インフルエンザの流行は、混乱を招きました。豪雨災害は、地球温暖化の影響が日本でも着実に増えていることを印象づけました。新政権は期待を持って誕生しましたが、その手法や施策は?であり、「政権交代」が流行語として位置づけられたこと自体にも不安を感じさせられました。

 このように考えると、「今年の漢字」は建前として『新』でもよいでしょうが、本音は『困』ではないでしょうか。
 理由は、日本経済悪化やデフレによる様々な困苦の増加、COP15に象徴される地球温暖化に対する歯止めが非常に困難になっている現状、地球規模における貧困層の増加、政権は取ったものの実際の政権運営に困窮している首相と政府、といったところです。
 身近なところでは、授業の増加だけでなく事務処理や一層難しくなる子ども達への対応などで疲労困憊(こんぱい)し、困殆(こんたい)・困頓(こんとん)としている教師が増えていることにもよります。

 2010年は、本当に期待の意味での『新』が訪れることを願いたいと思っています。そして、『真』であり、『信』じられ、『心』が、『伸』『進』していける教育であるようにしたいと考えています。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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