2009.11.12
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なんでもない特別な日

軽井沢SOBO 代表 今野 篤

11月に入って直ぐに雪が降った。例年にない早さである。軽井沢は標高1,000mに位置するので、寒波が来ると雪になりやすい。本州で一番寒いところとも言われる。

そんな冬間近の軽井沢、我が家でも冬支度に大忙し。そんな中、長女の息が荒い!そう迫ったスケート大会の準備に余念がない。

長女(小2)の美鈴が、陸上トレーニング(通称陸トレ)をやると言い始めたのが確か、春先だったと思う。これは、長女が所属するアイススケート部の、体力作りのための朝練である。春から冬のスケートが始まるまでの火曜日と木曜日は、毎朝七時半から朝練がある。

家から学校まで、ゆうに30分はかかるから、6時半過ぎには家を出ることになる。小2になったばかりだというのに、大丈夫かなと不安な親の気持ちもよそに、この半年間休むことなく、陸トレを続けてきた。

いつもは近所に住むお友達と、うちの娘はいっしょに行くのだが、先日に限ってお友達はお休みで、娘一人で朝練に行くことになった。これには困った。なぜなら、この地区は通学路に熊が出没するのである。特に今年は熊がよく出る。

今まで、彼に娘のボディーガードを頼んでいたわけだが、頼もしい彼は今日いない。それじゃとばかり、力不足だが、僕が娘の付き添いで学校に行くことになった。眠い目を擦りながら、娘と共に自転車を転がした。

道中、壮大な浅間山の姿も彩る紅葉の美しさも関係なく、娘はとにかく喋りまくった。おしゃべりの子だと思っていたが、ここまでお喋りとは。おかげで娘の周りの様子がよくわかった。

後輩の子に間違って「みみず」と呼ばれたこと。ライバルの子より、早く学校に着きたいから走って行くこと。その他、友達の家の場所や交友関係、担任の女性の先生の年齢(!?)など、僅かだが有益な情報もあった。

いつも夕食を共にしているのに、初めて聞く話ばかりだ。夕食の時、いったい何を話しているのだろうかと、思わず考え込んでしまった。そんなこんなの調子で、ようやく学校に到着。

素早く校門を駆け抜けていく娘を、後ろから見守ったが、彼女はそのまま振り向くことなく、昇降口に入ってしまった。少し前なら手を振りながらバイバイしたのに。

帰りの自転車は、爽快そのものだった。朝の森は、気持ち良い。すれ違った少年と「おはよう!」と朝のエール交換。少し遠まわりをして帰ってみた。なんでもない日が、僕にとっては特別な日だった。
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今野 篤(こんの あつし)

軽井沢SOBO 代表
学生時代、自転車でアラスカ1,500kmを縦断。2008年、住み慣れた千葉から、大自然で子どもを育てるべく長野の軽井沢に移住。毎日がアウトドア、四人の子どもを持つ。

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