2009.10.23
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オンサイト・サポートで自分磨き?

滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長 安居 長敏

前回、ラジオの仕事にひと区切りをつけた数年前の一定期間、主に個人宅を訪問して、パソコンの設定業務やウィルス除去、ソフトウェアの操作指導などを行う仕事をやっていたことを書いた。

業界では「オンサイトサポート」とよばれていて、製品購入者に対して行われるアフターサービスの1つで、出張修理サービスをさしている。

Yahoo!BBやeo、NTTなどにインターネット接続回線を申し込むと、無料でセットアップサービスがついてきたり、パソコンを買った際、ウィルスに感染しても一定期間なら無料で除去してもらえるとか、ジャパネットたかたでPCを買うと、接続からインターネット設定までついてくるとか、そういったサービスを提供する仕事だ。

本来は、大手PCメーカー、家電量販店、インターネットプロバイダーなどが、自前でそういうスタッフを抱えるところだが、それではあまりにも効率が悪いので、そういった仕事を取りまとめて紹介してくれる会社があり、多くはそういうところと契約して、仕事を回してもらう。

各企業の社員ではないが、その企業の名前で仕事をするわけなので、かなり厳しい制約があり、接客マナーはもちろん、一定の技術レベルも要求され、定期的に審査などもあった。

当時の僕は、大阪にある2社と契約し、一日平均個人宅なら午前に1件、午後に2件、夕方(夜)に1件の、計4件をまわって仕事をしていた。エリアは基本的に滋賀県内一円で、ときに岐阜や福井、京都などにも行っていた。

会社のサーバから、自分の行きやすいお客さんを探し、エントリー。早い者勝ちだ。その後、お客さんに電話して自分でアポ取り、訪問の時間調整をし、自家用車で回る。

作業内容は、インターネット接続設定、トラブル診断・修復サービス、操作指導など多岐にわたり、クライアント企業によって、その作業範囲も料金も、報告書も微妙に違う。

同じような仕事をしている人(多くは、いわゆるSOHOなどの個人事業者)が滋賀県内に数人いて、みんなが、やりやすく、報酬の高い仕事を競って取り合うわけで、毎日、PCとにらめっこしながら仕事を取っていた。

仕事がなければ当然、収入はゼロ。いかに近場で、効率よく訪問できるところを探し、一筆書きのようにまわり、スムーズに仕事を切り上げるか。すべてはそれにかかっていた。

いくら簡単な接続設定といえども、朝イチに湖北、昼に大津、そのあと彦根で、夜は草津・・・なんていう回り方では無駄が多いわけで、近くのお客さんを、いかに同じ日に組み合わせるか。当然、お客さんの希望日時が最優先だから、そこはアポ取りがうまくならないと、どうしようもない。

また、お客さんの目の前で、お客さんのパソコンを操作し、その視線を浴びつつ作業をしなければならないという緊張感がある。もちろん「できません」「わかりません」とは口が裂けても言えないわけで、「こんなことぐらい簡単さ~」というノリで、ささっと手際よくこなし、ついでにプラスアルファの操作説明なんかできたら、相手は大感激! ぜひまた今度もアナタに・・・ということで、好感度アップ。

仕事が終わると、そこで料金をいただく場合もあり、作業内容に納得してもらえないと、気分よく払ってもらえない。「え~、こんなに高いの?」なんて言われたら最悪だ。

当然、こういったサービスにはつきものの「お客様アンケート」もあり、お客さんがどれくらい満足したか、会社宛にその声がハガキで届くシステムになっていて、満足度が高い
スタッフには報酬の高い仕事、VIPなお客さんを優先的に回してもらえることだってある。

また、急遽「今日、近場でもう一つこの仕事をやってくれない」と本社サイドから依頼があったりして、単価3000~4000円の仕事であっても、数が増えれば大きな収入になる。

また、年末年始など企業が連続休暇になるときなど、大手企業の本社や支社での仕事もあった。いわゆる法人のお客さまで、サーバ設置・メンテナンス、キッティング、POS端末展開なども、それはそれでなかなか面白かった。ふだんは入れない超大手企業の裏側?を見られるってだけでも、いい経験なのだ。

とにもかくにも、その仕事のプロとして、お客様の目の前で仕事を完結し、その対価として報酬をもらう。仕事を回してくれた会社、そこと契約している企業が常について回り、両方に気に入ってもらわなければ、たちまち仕事がなくなる。

挨拶、身なり(もちろんスーツにネクタイ。パソコンの裏側ってホコリだらけの家って多いから、靴下もすぐに汚れる。一日数足履き替えたことも)、言葉遣い、笑顔、スキル・・・などなど、アポ取りの電話から始まり、報告書を送るまで、すべてそれらがついて回るといってもいいくらいの、見かけ以上に「気を遣う」仕事なのだ。

仕事をしているその場で、お客さんの表情・反応がダイレクトにわかるから、自分の仕事がうまくいっているか、気に入られているか・・・などがリアルに伝わってきて、まさに「真剣勝負」。それも、自分の会社じゃなく、相手の家なので、当然こちらは「よそ者」。

相手の土俵で、相手の要求することを100%叶え、プラスアルファの作業をつけて、相手に返す。そして満足をしてもらわなければならない・・・

教員として必要な資質、ひいてはどんな仕事にも通じる「対人関係の基本」がそこにはあった。

安居 長敏(やすい ながとし)

滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。

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