2009.09.23
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学校現場にネガティブリスト主義を

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 9月から10月にかけては、多くの小学校で運動会が行われます。その運動会に向けて1学期から種目や演目を考えています。近年、運動会の実施時期が早まる傾向があり、決められた期間の中で、準備をするようになってきています。期限や時間を守り、その中で十分な演技や活動ができるように仕組むことが大事になってきていると思います。
 ところが、かつて十分な期間と時間があった時代のプログラムを、そのまま踏襲していることがけっこう多いのです。現在の決められた期間と時間では、絶対無理なのに職員会議の場では何も言わないのです。では、どうして仕上げるつもりなのでしょうか。それは、最初から教科等の授業の振り替えを考えているからなのです。
 確かに、時には、予定されている教科等の授業を振り替えてでもしなければならない、緊急の指導もあります。しかし、できないことを始めから計画するのです。振り替えを念頭においてです。こうしたことは、運動会に限ったことではありません。
 なぜ、こんなことが繰り返されるのでしょうか。

 学校という所はポジティブリスト主義で、よいと思われるものはどんどん取り入れていきます。しかし、止めることは、ほとんどしません。ですから、仕事量が増すばかりで、教師は自らの首をしめているようにも思えます。よいと思うことをやればよいのではなく、目の前の子どもを育てるために重点化した指導・施策が必要なのではないでしょうか。新たに導入する行事があれば、従前の行事を一つ以上減らすことが大切でしょう。
 確かに、これまでも「重点化した指導をするように」という通達や指導があり、学校でも言葉としては言われていますが、ほとんど実行していません。学校現場での決め事は、長い時間をかけて話し合ったとしても結局、「悪いことではないので、やりましょう」といったポジティブリスト主義で終わってしまいます。何時間も会議にかけた時間と労力は何だったのかということが、繰り返されています。これでは、教師が疲れるわけだと思います。

 学校の役割は、『子どもを育てる』ことですが、あれもこれもの手だてばかりでは、教師も児童も疲弊してしまいます。
 では、「重点化した指導の本質」とは、何でしょうか。それは、「ネガティブリスト主義」ではないかと考えています。

 学校行事でも学年行事でも、そして授業においても、ねらいは何かを押さえ、ねらい達成のための手だてを1つにして、それを確実に実施する計画を立てるのです。これで、よいのではないでしょうか。つまり、一本の柱をしっかりと立てることだけを考えるのです。もし、ゆとりがあったら、付加していくという考え方が、ここで言う「ネガティブリスト主義」の考え方です。
 もちろん、すべてがこのようにはいかないことはわかっています。しかし、基本的な考え方・姿勢として持つべきではないでしょうか。そうすることで、教師も児童も楽になってくるのです。
 最初から目標やゴールが高いと、達成するためには多くの指導や支援が必要で、目標やゴールにたどり着くまで達成感や満足感は得られません。「ネガティブリスト主義」の考え方を用いると、最初のゴールは比較的近くにあります。ですから、すぐに喜びを味わうことができます。その喜びが、次への意欲にもなります。限られた期間と時間の中で、精一杯やり、その時のゴールを表現すればよいのではないでしょうか。

 よりよい教育活動にしようとするのは、「ポジティブリスト主義」でも「ネガティブリスト主義」でも同じです。ただ、学校の現状(児童の実態と教師の仕事量、新学習指導要領の趣旨など)と学校現場を取り巻く情勢(家庭環境や社会環境など)を考えると、「ネガティブリスト主義」の考え方が、これからの教育のキーワードになるような気がします。
みなさん、いかがでしょうか。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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