2009.09.10
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ネット上での言葉のやりとりの難しさ

栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭 鷺嶋 優一

 夏休みが終わり、私の勤務校でも子供達の元気な声が戻ってきました。
この時期教師は、子ども達を注意深く観察するのが常です。夏休み中、大きなけがや病気をしなかったか。友達関係や家庭環境は変化したか。などなど。大きな変化はなくとも、「A君、声変わりをしたな。」「Bさん身長がぐんと伸びたね。」など自然な変化も敏感に感じ取りたいものです。
 でもそんな変化を捉えにくいのが『ネットの利用状況』ですね。夏休み中は自由時間が多い分、子ども達のネット利用技術も進歩します。以前注意を促していた学校裏サイトや出会い系サイトに代わり、プロフやメールが要注意となっている状況ですが、どんな場合でも、ポイントは『言葉のやりとり』ですね。今回はその「言葉のやりとりの難しさ」について考えてみたいと思います。
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 言葉だけで感情を正確に伝えるのはかなり難しいことです。私もこうしてつれづれ日誌を書いていますが、
「みなさんにきちんと伝わっているだろうか。」
それ以前に私自身、
「本当に伝えたいことを伝えられているだろうか。」
と不安になりながら、何度も読み直して投稿しています。言葉だけで即座に真意を伝えられるとしたらそれは「言葉のプロ」でしょう。作家やアナウンサーなどはそうなのかもしれません。
 「メラビアンの法則」をご存知の方も多いでしょう。
 対面で人が人を判断するとき、その55%を視覚から。38%を聴覚から、そして7%を言語から判断するという法則です。つまり93%は非言語(ノンバーバルコミュニケーション)で決まってしまう。
 私は、次のことを情報モラル教育に取り入れることを提案します。
(1) この法則のようなことを分かりやすく子どもに知らせていくこと。
(2) その上でネットによる言葉のやりとりを学習させること。(危険性を安全に体験させる:例としてバックナンバーの「その一言効くなあ」を参照していただければ幸いです。http://www.manabinoba.com/index.cfm/8,11278,21,136,html
(3) そして注意深く利用するように呼びかけること。メールなどは、できるだけ連絡を中心に利用させること。
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感情を言葉にすることはとても難しいことです。
以前私が参加していたメーリングリストでも、昨日まで紳士的に仲良くやりとりをしていた方が、たった一つの自分の考えと違う意見によって、突然、
「このメーリングリストから退会させていただきます。」
とか、言葉づかいがけんか腰になってしまうとかいうことがあり参加者の私としては、大変ショックを受けた経験があります。
また、「ブログが炎上する。」ということも最近では珍しくなくなってしまいました。
 言葉以外の情報がない。言葉がすべての世界ってある意味恐いと思いませんか。
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 冒頭に述べた『子ども達を注意深く観察する』際には、言葉以外の情報がとても重要です。
 言葉がすべてではない。
 言葉で何かを伝えるとき、人は真実と言う樹木のほんの数枚の葉っぱを使っているに過ぎない。
 けれど葉っぱもその樹木の一部。
 大切な一枚一枚。
 だからこそ、言葉を大切にしていきたいものです。

鷺嶋 優一(さぎしま ゆういち)

栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭
この春、勤務校が変わりました。異動したての新鮮な気持ちをダイレクトにつづりたいと思います。そして「ICTと幸せ」についても小学校教育の視点から考えます。

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