2009.06.17
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美しいという感性

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 6月は『環境月間』です。これは、1972年6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して、6月5日を『環境の日』(「環境基本法」=平成5年)と定められたことに由来し、平成3年から6月の1ヶ月間を『環境月間』としています。それ以前の昭和48年度から平成2年度までは、6月5日を初日とした1週間を『環境週間』としていました。
 また、国連では、日本の提案を受けて6月5日を「世界環境デー」と定めています。
 この1カ月間は、環境に関するイベントが官民を問わず展開され、新聞やテレビなどでも大きな特集が組まれています。

 私も環境省の環境カウンセラーとして、環境教育や環境学習を行おうとする主体(学校や公民館活動、民間団体)に対して、アドバイスや実地指導等を行うなどのカウンセリングや環境保全活動を行っています。
 特に、30年近くゲンジボタルの生息生態調査やホタルの生息する環境づくりを行ってきました。最近は、陸上(山地)にすむホタルの生態調査を行っています。
 また、学校教育においても、勤務した中学校に科学部や環境科学部を創設したり、ホタルの人工飼育をしたりして、ホタルや生き物を通して子ども達と一緒に環境を考える活動もしてきました。

 さて、6月はホタルのシーズンでもあります。梅雨の合間を見て、ホタル祭りやホタル鑑賞会が全国的に催されています。私も東日本のホタルの生息地を巡っていますが、どこへ行っても、ホタルの放つ光を見た人は、誰もが無条件に「きれいっ!」と表現しています。これは、日本全国共通です。
 ただ、唯一、例外だったのが、ホタルの光を間近に見せられた幼児が、その光の大きさに驚いて「こわい」と表現したことがありましたが・・。
 
 価値観が多様化している現在、誰もが同じに感じ、表現する物や事柄は少なくなってきています。学校教育においても、様々な感じ方や表現を個性として認めています。ところが、ホタルの光に関しては、子どもも大人も「美しい」と感じられるのです。
 この「ホタルの光を美しいと感じる感性は、日本文化の一つ」と言ってもよいのです。日本以外の国では、どんなに多くのホタルが光っていようが、興味を持つ人は少なく、したがってその光を「美しい」と表現する人も少ないからです。もっとも、日本以外の国に生息するホタルの多くは、山地に生息することが多く、日本のホタルの生息する風情とは大きく異なることもあります。
 ゲンジボタルは、日本固有種でもあります。平安時代の女流作家、清少納言は枕草子の中で、「夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ螢のおほく飛びちがいたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。」と記しています。このように、日本人はホタルを『文化昆虫』(人間と共に文化を育む昆虫)にまでにしてしまってるのです。

 環境月間のシンボルにもなったこともあるホタル。環境カウンセラーとして、ホタルの光を「美しいと感じる共通の感性」を、地球規模にまで拡げることができたらよいと考えています。
 また、教師として、ホタルの光で子ども達の「美しいという感性」を磨くことができたら、子ども達個々の輝きが増すのではないかと考えています。
 今年も多くの子ども達とホタルの飛び交う環境の中で出会い、ホタルを通しての会話を楽しんでいます。
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大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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