2009.04.23
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ICTは、進み過ぎ?

栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭 鷺嶋 優一

「みなさーん。情報化を推進しましょう。」
という掛け声は、現在あらゆる職場で頻繁に叫ばれています。
前回のつれづれ日誌「つながってよかったー。」を読んでいただければお分かりの通り、私も学校の情報化を推進する者の一人です。
 膨大な情報が氾濫する現在、ペンで紙に書く作業よりパソコンに打ち込んだほうが速い。また、表計算ソフトの正確なこと!そして何といってもインターネット!!世界中の情報がこんなに手軽に手に入るなんて、私の子どもの頃(現在44歳)と比べたら夢のようです。だからもっともっと情報化を推進しましょうということになるわけです。
 私もパソコンソフトの楽しさや、ネットワークがつながったときのおもしろさがたまらなくて、グループウエア(コンピュータやネットワークを利用してグループで作業するためのソフトウェア)の導入や、校内Webページと校内放送の連携(後日詳しく掲載します。)などを提案してきました。

 でも最近、「そんなにどんどん推進しちゃっていいのかなー。」ということを自身の反省も込めて述べてみたい気持ちになりました。
 そう考えるきっかけとなったのは、1ヶ月前の3月半ば、職員室でのこんな会話です。
「最近、いろいろなところからの文書提出期限が速くなってきているね。」
「そうそう、以前よりも期間が短くなったり期限が早まったりしていますよね。」
私もそう感じていました。皆さんの職場でも同じような会話はありませんか?

 いったいどうしてそうなってきたのでしょう。
 それは、職場の情報機器やネットワークがある程度整備されてきた証拠であると言えるでしょう。でもその結果、文書の提出を促す側は、
「○○を使えばすぐにできるはずだ。」
との思い込みが生まれるのでしょう。更に、
「処理も正確にできるはずだ。」
との思い込みも更に追い打ちをかけます。
 でも提出する側は、例えば機器の操作が苦手であったり、それを教えてくれる人がいなかったりするかもしれない。仕事の優先順位を考えると必ずしもすぐにできない状況かもしれない。
 そういう相手側への配慮や気配りを考慮せずに、このまま情報化が先走ってしまったらどういうことになってしまうのでしょう。
 仕事への多忙感はますます高まり、子どもと向き合う時間も確保できず、心身ともに疲弊する人が続出してしまうでしょう。
 以前に、故河合隼雄氏の書かれたエッセイを読んだとき、この文章が心に残りました。
『科学技術における方法論で安易に人間に適用しようとして問題を生じさせていることが多い。・…』(「縦糸横糸」新潮文庫)
つまり「システムは人」だということでしょうか。いかに技術的にすぐれたシステムでも、それを利用する人のことも十分に考慮した上で、使い易くなって初めてシステムとして成立するのです。きっと今はその過渡期なのでしょう。

 情報化推進担当の皆さん。何事も「及ばざるは、過ぎたるより勝れり。」
 進み過ぎには十分注意しましょう。

鷺嶋 優一(さぎしま ゆういち)

栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭
この春、勤務校が変わりました。異動したての新鮮な気持ちをダイレクトにつづりたいと思います。そして「ICTと幸せ」についても小学校教育の視点から考えます。

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