2008.08.12
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大人が壊す子どもの規律

欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー 高柳 新

深夜のコンビニエンス・ストア。若い父親や夫婦に連れられた小学生低学年くらいの子どもを目にすることがはっきりと増えました。平日の午前1時、近くにあるディスカウント・ショップで小さな子どもたちが走り回っていました。
 昭和40年代までは、子ども向けのテレビ番組は午後9時以降にはありませんでした。やがて特例として休日の前日の夜に子ども向けの映画を放送するようになりました。やがて特例は「当たり前のこと」になり、さらには普通の平日でも、子ども向けの番組が9時以降に流されるようになりました。
 夜、寝るのが遅ければ、朝、早く起きられないのは当たり前のことです。小学校では、今でも『早寝、早起き』」の指導をしているはずです。しかし、上記の例では、大人が子どもたちの早寝をスポイルしているように思えます。子どもに教えておくべき規律を大人の都合で(あるときは自分たちの生活時間に合わせるために、ある時は視聴率をあげるために)ないがしろにしているのではないでしょうか。
「昔とは時代が違うんだ。」
という人もいるでしょうが、子どものために本当は何をしなければならないのか、ということが置き去りにされているような気がしてなりません。

 あるレストランで食事していた3人家族。両親は30代後半くらいで、娘さんは中学生くらい。この3人は食事中もそれぞれ別々に黙々と携帯電話を操作していました。見ている限りでは、レストランにいる間、この3人に会話はほとんどありませんでした。
 携帯電話は確かに便利なものであり、その有用性は計り知れません。反面、その使い方によっては、多くのデメリットもあります。とくに十代の若者たちの使用法を見ていると、デメリットを多くの場面で感じます。携帯電話会社やメーカーは、その有用性ばかりを宣伝し、不都合なことが起きたときは「個人の使い方の問題」で片付けようとします。そこには、“携帯電話の有用性を世の中に役立てるため普及させていこう”というよりも“とにかく、みんなに持たせて儲けよう”という意思を私は感じてしまうのです。

 あるお母さんが、小学校5年生の女の子のお母さんにこんな事を言っていました。
「まだ、東京に1人で行かせたことないの? 渋谷だろうがお台場だろうが、行きたいところには1人で遊びに行かせりゃいいのよ。私なんか、小学校の時は、いつも1人で東京に遊びに行ってたわよ。」
 小学校では、今でも“子どもたちだけで繁華街などに遊びに行かない”と指導しているはずです。しかし、大人の中には、このような考え方をしている人もいるわけです。

 子どもの生活の規律は、結局、まわりの大人たちに影響されます。子どもの規律をスポイルさせる大人たちが多くなっているこの時代に、学校や教師は何をどのように教えていくべきなのでしょうか。ひとつ言えるのは“今はそれが当たり前”という言葉に簡単に流されてはいけないということだと思うのですが…。

高柳 新(たかやなぎ はじめ)

欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー
四半世紀の小学校教師経験と小学生卓球チーム指導者として全国大会の出場経験。そして現在は、学校を外から見ることのできる立場を生かし、現場の先生方を応援したいですね。

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