2008.06.03
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小さなケガをさせる教育

欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー 高柳 新

今から20年ほど前、ある図工の先生の次の話がとても心に残りました。
「子どもたちにカッターの使い方を教えるときに、ふつうは、ケガをさせないことを考えますよね。しかし、私は小さなケガを経験させることが本当は大切なのだと思います。もちろん、大ケガではいけません。でも、全くケガをさせないこともよくないんです。ケガをしたことのない人間は必ず油断が生まれます。後になって油断から生まれるケガは大ケガになることが多いのです。たとえ小さなケガでも、それでケガをしたことがある人間はいつまでも安全に気をつけるものです。小さなケガをさせないことこそ、過保護と呼べるものなのではないでしょうか。まぁ、とても難しいことですけどね。」

私の手には小学校6年生のときに包丁で切った切り傷が残っています。傷が残っているくらいですから、決して『小さなケガ』ではなかったのですが、とにかくそれ以来、刃物で大きなケガはしていません。少なくとも私は、カッターや包丁を使う頻度はふつうの人の10倍以上はあると思うので、きっと6年生の時のケガの経験が生きているのでしょう。

あのときの図工の先生の話されたことは『カッターの使い方をどのように教えるか』についてでしたが、このことは他のことについても言えそうです。
学校は『失敗すること』の経験の場であり、それが許される場です。学校での失敗は、その後の人生に必ず生きるはずです。それこそが『生きる力』を育む教育だと思うのです。しかし、現在の学校教育では、保護者や社会の傾向から、小さな失敗さえもさせないような方向に進んでいるような気がするのです。上記の図工の先生のお話から考えるならば、学校教育そのものが過保護化しつつあるのではないでしょうか。
先生方、何か思い当たることはありませんか…。

高柳 新(たかやなぎ はじめ)

欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー
四半世紀の小学校教師経験と小学生卓球チーム指導者として全国大会の出場経験。そして現在は、学校を外から見ることのできる立場を生かし、現場の先生方を応援したいですね。

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