2023.05.09
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『つなぐ・つながる』運動と、どうつながるのか?

皆さんは、運動好きですか?
子どもたちはどうですか?
運動ってどうして必要なのでしょうか?
運動の意義や運動とつながることの大切さについて考えてみました。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

どんな連休を過ごしましたか?

最大9連休と言われたゴールデンウィークも、終わってしまえば、あっという間でした。
皆さんは、どのように過ごされたでしょうか。
私は、休みの前には、あれも、これもとやりたいことに思いを巡らしていたのですが、過ぎてしまうとできなかったことが山となって、後悔の念が募るばかりです。唯一愉しめたのは、中一の息子と温水プールに行けたことでしょうか。久しぶりの水の感触が心地よく、ゆったり、のんびリズムで数名の利用者しかいないゆとりの空間を愉しみました。体育を教えていながら、デスクワークに追われ、運動の習慣化という言葉からほど遠い生活をしている私。運動することのよさをあらためて実感したのでした。
ということで、今回は、「運動」との「つながり」について、つれづれ語ってみたいと思います。

あらためて「運動の意義とは何か」

大学では、「体育(教職科目)」や「初等教科教育法(体育)」を担当していますが、授業の導入では「運動の意義」について、学生と一緒に考える時間を持つようにしています。運動の経験は、学生それぞれに異なりますから、運動に対する意識や構えも、三者三様です。特に、「小学校の時は、こうだった」「中学校の時には、こんなだった」と、指導を受けた教員とのかかわりなどもまじえ、運動に対する思いを聞いていくと、一言では括れない深いものを実感します。
では、学生たちは、運動することの意義をどのようにとらえているのでしょうか。

学生は、運動の意義をどう考えるのか?

授業で、それぞれに運動の意義について考えた後、グループワークでお互いの考えを聴き合いました。そして、全体の場で紹介してもらいました。学生が語った「運動の意義」をキーワードで紹介してみます。

○ 体力 〇 病気にならない体 〇 けがをしない体 ○ 丈夫な体 〇 健康  ○ 命 
〇 集団行動 〇 協力 〇 仲を深める 〇 団結 〇 コミュ力 〇 信頼関係 〇 仲良く 
〇 知る 〇 動かし方を知る 〇 学びを深める
○ すっきり  〇 気分転換   
〇 強い心 ○ 頑張る力 〇 できる(克服) 〇 自信 〇 あきらめない 〇 達成感

体づくりという側面よりもむしろ、それ以外の面で多くの意義を見出しているようですね。
そして、このことは、学生自身がそうした実感を持っているからこそ言葉に出てきたことなんだろうと思います。ですから、これからの運動指導、とりわけ小学校における体育科の授業においても、こんな実感が小学生に生まれてくるような指導をしていきたいな、期待していきたいなと思うのです。

子どもが「運動」とつながるために

以上、述べてきたような、運動の意義、子ども視点で言い換えるならば、運動のよさを子どもが実感するために、乗り越えるべき、課題には何があるでしょうか。

私が考えるのは、以下の4つです。
① 運動時間と運動する場と共に運動する仲間を確保すること 
② 生活習慣改善に家庭と連携して取り組むこと
③ 学校・園での指導者を育成すること
④ 子どもの育ちと学びについて園と小学校の連携を緊密に図ること

それぞれに詳述はしませんが、とりわけ③の指導者育成や④の園と小の連携は、急務の課題であると考えます。
私が令和3年に行った小学校1年の学級担任及び園の年長担任を対象としたインタビュー調査によると、運動遊びに関して、次のような語りを聴くことができました。

〇 「実際に指導していて困ったことは、一人一人の子どもによって、経験が違うので、指導が難しい。出身園によっても違うのが難しい。鍵盤(ハーモニカ)の経験とかもそうなんだけど」(A小学校教諭))

○ 「幼稚園でどういうことを経験してきたかを十分に把握できていない」(B小学校教諭)

つまり、相互に、指導の具体や子どもの姿がなかなか見えていない、適切に伝わっていないことが、問題として挙げられます。これは、運動に限らず、生活全般に言えることです。
小学校に入学してくる子どもたちは、20園以上に及ぶ学校もあり、それらと等質に結びついていくことは困難なことと言えますが、園での運動経験を全く知らずに指導するのと、おおよその子どもが経験していることを知って指導するのでは、全く異なる授業になるでしょう。そのためにも、小学校の教員がもう少し園に足を運び、保育に対する理解を進めること、同時に保育者と小学校教員が子どもを介して語り合う場を創っていくことが、課題解決の糸口になるんじゃないかと思うのです。
このことは、子どもを理解することともに、教員・保育者の力量形成にもつながっていくことであると考えます。

むすびに

「平成28年度体力・運動能力調査の結果について」スポーツ庁

最後に、スポーツ庁から報告されているデータ(平成28年度体力・運動能力調査の結果について)の一部を紹介します。
男女ともに、入学前に外遊びをしていた頻度が高い群ほど合計点は高く、入学前に週6日以上外遊びをしていた群と週1日以下の群とでは、大きな得点差が見られるのです。つまり、幼児期の運動遊びが入学後4年間も(もしかしたらその後も)影響を及ぼすと言ってよいのではないでしょうか。
皆さんは、この結果をどのように受け止めますか?


川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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