2021.02.03
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カリキュラムの構成要素

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任 石丸 貴史

新学習指導要領のカリキュラム編成を進めるうえで、改めて「カリキュラムの構成要素」を考えました。今回は、「カリキュラムの構成要素」を再検討してみたいと思います。

①育成する資質・能力
②教育内容
③配当された授業時数
④教材・教具・施設・設備

の四つにまとめられると考えます。それぞれ少し詳しく考えます。

①育成する資質・能力

これまでこの場でも書いてきましたが、学校全体のカリキュラム編成を進めるうえで、二つの方向からの育成する資質・能力があると思います。

ひとつは、授業を担当する教員として自分の授業で育成する資質・能力です。これは以前の投稿でも「授業で育成する資質・能力」として書きました。

もうひとつは、学校の方針としての育成する資質・能力です。勤務校は私学なので、建学の理念はもちろん、めざす学校像・めざす教員像・めざす生徒像として明文化されたものがあります。これらは相反するものであってはいけないことはもちろん、両者が相互に往還し作用し合うものであるべきと思います。建学の理念やめざす学校像・めざす教員像・めざす生徒像は、不易なものとしてある一方で、いま在籍している生徒の状況や社会情勢など現代的な諸課題に応じて変化する、流行に合わせて育成する資質・能力は変化する側面もあるはずです。

これら不易と流行の間にあるものが、学校においてはカリキュラムであると考えます。

②教育内容

教育内容と書くと、教科書の内容や教科教育指導計画を思い浮かべるかもしれません。もちろんそれらのものも教育内容ですが、他にも、キャリア教育として行われる教育内容や、グローバル教育、モラルやリテラシーを含んだ情報教育、道徳教育や防災教育も含んだ環境教育など、これからの時代を生き抜くために必要な知・徳・体の育成に関わる全てのものが教育内容です。また、SDGsの達成のために何ができるかを考えて、実践していくことも教育内容です。

これまでは、教育内容とは「教員が何もかも教えるもの」という発想が教員にあったのかもしれません。しかし、コロナ禍で学校に通う意味・意義が見直されている中で、教員は「学校でしかできないこと」と「学校でなくてもできること」を明確に区別して内容を検討していくべきだと思いますし、個人が解決すべきこととして「個別最適化」されたことと一人では解決できない「協働的な学び」の両立を図っていくことも教育内容の課題であると思います。

③配当された授業時数

これまでのカリキュラム編成は、配当された授業時数に注視・注力しすぎていたと考えています。上でも書いたように、「教員が何もかも教えるもの」という発想に基づくと、時間は豊富にあった方が良いのは明らかですが、教員が働き方改革に代表されるように限られた時間内で最大限の効果を上げることを考えていかなければいけないのと同様に、生徒も限られた時間内で最大限の効果を上げることが求められていると思います。

冷静に客観的に見ると、生徒達はやるべきこともやりたいことも多くあり、慌ただしい時代を生きていると思います。そのような生徒達を時間で縛ることなく、最大限時間を与えた上でそれをどのように使っていくかを考えさせなければならないと思います。そのためには、教員の発想転換が不可欠であると思います。

④教材・教具・施設・設備

もうひとつ、教材・教具・施設・設備もカリキュラムの重要な構成要素です。

ここで改めて考えたい教材・教具の代表的なものとしては、タブレットやパソコンが挙げられると考えます。例えば、教科書を与えれば生徒はそれを使って順調に学習を重ねていくのかと言われれば、答えはノーであることが明らかであるように、タブレットやパソコンを与えれば生徒はそれを使って勝手に課題解決が図れるのかと言われれば、その答えがノーであることも明らかです。教科書だろうがタブレットだろうが、与えるだけではダメで、それに対して教員の果たすべき役割があります。タブレットやパソコンが全てを解決してくれる万能な道具でないことを忘れてはいけないし、タブレットやパソコンこそルールや手順を守って活用しなければ機能しないものであるとの認識は重要です。

また、施設・設備もこれからの教育には重要なカリキュラムの構成要素です。例えば、教室にプロジェクタが設置されているのかいないのか、校内にWi-Fiが通っているのかいないのか、グループ学習に適した場所があるのかないのか、プレゼンテーションを実施するのに適した場所があるのかないのかといったことは重要です。ただし、無い物ねだりをしても仕方ないので、ないものはない中で、どのように創意工夫を取り入れているかも教員の力量の見せ所だと思います。

石丸 貴史(いしまる たかふみ)

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。

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