2004.08.18
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キャリア教育アンケート・サマリ(vol.2)

厚生労働省の調べによると、パートや派遣、アルバイトなどで働くフリーターは、全国に400万人以上いるという。また、就職もせず進学もしないNEETと呼ばれる若者が急増し、問題となっている。このような中、 学校におけるキャリア教育の重要性が高まっているが、その現状はどうなっているのだろうか。学びの場.comでは財団法人社会経済生産性本部と共同で2004年2月から3月にかけて、キャリア教育について、インターネットによるアンケート調査を行った。

Q6.キャリア教育を行う場合、どの教科・活動での実施が適切だと思いますか?

キャリア教育を行う場合は、「総合的な学習の時間」が適切だとする回答が、全体で183件の回答のうち81%にあたる148件となり大半を占めた。これは校種に関わらず、いずれも80%前後の高い数値となっている。ただし、高等学校では「課外学習」でキャリア教育を実施するのが適切だとする意見も19%に上っている。

また、その他の意見として自由記述で書かれた中には、「すべての教科にわたってスキルを意識した授業を行うべき」「教科の枠にかまわずに、自分の夢やなぜ働くべきかなど全人的な育成を目指すべき」といったように、教科の枠を越えてスキル教育を行うべきでるという意見も見られた。

Q7.キャリア教育を行う場合、費用負担はどのような形が適切だと思いますか?

キャリア教育の費用の負担は「企業・NPO・ボランティア等の協賛により無料で」を望む意見が最も多く、183件の回答のうち36%にあたる66件となった。ただし、「学校(行政)で負担」すべきという意見も56件(31%)あり、この2つには大きな差は見られなかった。「生徒(保護者)負担で」という意見も36件(20%)見られることから、どこが費用を負担していくべきかは、今後の課題として残される。

 また、その他の意見の中には、「行政と生徒両方が負担」、「行政、生徒、企業等で分担する」といったように、どこか1つが負担を背負いこむのではなく連携していくことが大切といった意見もあった。いずれにしても「企業などの協賛で費用負担を軽減しながら、不足分を行政が負担すべき」といった回答も見られるように、キャリア教育の実施に向けて、行政に費用的な協力を望む声は少なからずあるようである。

Q8.キャリア教育の実現に向けて、学校と企業が連携を図る必要が生じた場合に、あなたのお考えは?

キャリア教育を学校で実施するのに際して、企業と連携することについて「全く問題ない」とするのは、全体で183件の回答のうち約半数にあたる101件で55%となった。無条件で企業の協力を受け入れることに関しては抵抗を感じるということからか、「NPOが企業と学校との仲介を行うならば問題ない」とするのが55件の28%、「有識者が提供内容を事前評価したプログラムであれば問題ない」が25件の14%となり、信頼のおける第3者が橋渡したり吟味した上でプログラムの導入を望む声もある。

 校種別に見ると、学年が下がるほど、企業との連携によるプログラムに対する抵抗があるようで、「全く問題はない」との回答は、小学校45%、中学校63%、高等学校67%となっており、小学校では企業との連携に対して慎重な様子が見られた。また、「学校と企業が連携して行うが、内容については学校が設定する」「学校と企業との事前の打ち合わせを充分にする」といった意見もあり、学校と企業だけでプログラムを進める場合でも、学校側がしっかりと内容をチェックする必要性を感じているようである。

Q9.キャリア教育実施にあたって課題として想定されることは何ですか?(複数回答可)

キャリア教育を実施するにあたって課題となるものとして、最も回答が多かったのが、「企業等への交渉などプログラム開発のための時間確保が困難」の94件で、全体の回答の51%にあたる。次いで「規定の時間内のへの組み込みが困難」の89件で49%。こうしたことから、プログラム開発に向けて準備を進めたり、実際に授業に取り入れていくためには、絶対的な時間が足りずに困っているという先生の様子がうかがえる。

 また、「キャリア教育を実施する教員不足」との回答も86件(47%)と、次いで高くなっている。特に中学校では、上記3つの回答数が高いことから、キャリア教育を実施したくても、時間と人手が足りないという現状が見て取れる。

Q10.どのようなイベントやプログラムを貴校では実施されていますか?(複数回答可)

まず小学校の先生からの回答を見た場合、「工場見学」と「『将来の夢』作文」が群を抜いて実施されており、この2つのプログラムは、「キャリア教育と関係なく実施」「キャリア教育の意味を含め実施」の回答を合わせると、70%を超えるものとなっている。その他の回答では「インターネットなどでの職業調べ学習」(48%)、「農業の勤労体験学習」(47%)が高いものとなっているが、いずれも「キャリア教育の意味を含め実施」しているというのは一部に過ぎず、最も高かった「『将来の夢』作文」でも7%であった。

 中学校の先生からの回答となると、「工場見学」(34%)の実施が小学校に比べ少なくなり、その代わりに「企業での勤労体験学習」(78%)が高くなる。また、小学校に比べてプログラムの内容もキャリア教育に結び付けたものが多くなっており、「企業での勤労体験学習」、「インターネットなどでの職業調べ学習」、「商店街での勤労体験学習」などについては、約3割が「キャリア教育の意味を含め実施している」と回答している。

 これが高校になると時間が限られるということからか、プログラムを実施することが少なくなり、最も多い「『将来の夢』作文」でも66%にとどまっている。ただし、そんな忙しい合間を縫って実施されるプログラムは、「キャリア教育の意味を含め実施」しているというものが多く、「キャリア教育関連資料による座学」、「企業での勤労体験学習」「経営者、技術者など企業人による講演」などのプログラムは、キャリア教育に結び付けることを前提に行われることが多いようである。

Q11.工場見学や企業見学の実施について(Q10で「工場見学」「企業見学」を実施していると回答した人のみ)

工場見学や企業見学を実際に行ってみた上での評価は、「非常に評価している」18%と「どちらかといえば評価している」48%で、その合計は66%。「どちらともいえない」との回答も25%あったが、プログラムに不満を感じたという回答は少なかったことから、概ね満足できる内容になっているようである。評価しているという理由としては、「大人が真剣に働く姿は、仕事内容に関わらず、子どもたちにも十分訴える力を持っている」「学校で体験できないことを見たり聞いたりできるので評価できる」などがあがった。

 児童・生徒の評判と関心も「非常に良い」(20%)と「どちらかといえば良い」(60%)の合計が80%となり、「校外学習の機会が少ないため、興味関心はおのずと高まる傾向にある」などの理由があげられているように、多くの児童・生徒の関心が寄せられるプログラムであることが分かる。ただし、高等学校になると「どちらともいえない」との回答が25%となり、年齢が上がると、工場や企業を見学することへの興味が多少薄れていることがうかがえる。

 この工場見学・企業見学の実施における最大の課題は、受け入れ先企業を見つけることが難しいことにある。また、無計画に訪問しても、子どもに働くことの重要性を伝えられる場面を見せられないこともあるようで、プログラムを生かしていくためには、学校と企業が綿密に打ち合わせ連携を深めていくことが重要と考えられる。

Q12.勤労体験学習の実施について(Q10で「勤労体験学習」を実施していると回答した人のみ)

実際に「勤労体験学習」のプログラムを実施した先生からの回答では、「非常に評価している」との回答が117件中38件で、全体の約3分の1にあたる。これに「どちらかといえば評価している」と回答した40%を合わせると72%となり、かなり高い評価が得られるプログラムだということがうかがえる。評価できる理由としては、「子どもたちの意欲が高まっている」「職業がどういうものかを知る良い体験になっている」など、実際に働くという貴重な体験が子どもの意識変化を生み出せるということがあげられていた。

 「児童・生徒」の評判と関心となると、「どちらかといえば良い」との回答が最も多く、全体の半数近くとなる47%。「非常に良い」とした回答も31%に上っている。このように勤労体験学習をやって良かったとする生徒が多かったという反面、高等学校では「非常に良くない」との回答も8%あり、勤労体験学習の実施する意義について理解できなかったり、勤労体験を面倒くさいと考える生徒も一部にはいるようだ。

Q13.講演会の実施について(Q10で「講演会」を実施していると回答した人のみ))

講演会の実施においては、校種に関わらず約40%が「どちらかといえば評価している」と回答している。ただし、小学校においては「非常に評価している」との回答が7%と少なく、その半数近くにあたる46%が無回答となっている。中学校と高等学校は24%が「非常に評価している」と回答しているが、高等学校では「どちらかといえば不満である」「非常に不満である」との回答も、それぞれ7%ずつ寄せられている。

 講演会では、誰を呼んでどんな話をしてもらったかにより評価が異なるようで、「OBによる話が聞けるので、生徒にとっては貴重な経験となる」「スポーツ選手を呼んだ時などは、自分の夢は努力次第で実現できることを知らせることができた」などの回答がある一方、「話が子ども向けでなくわかりにくい」「講演の内容が生徒の意識にマッチングしていない」との回答もあった。

 講演会の実施に際して、児童・生徒の評判と関心については、「非常に良い」(17%)と「どちらかといえば良い」(37%)という回答で全体の半数を占める。「非常に良くない」との回答は1件も無かったが、「どちらかといえば良くない」との回答は全体で8%、高等学校からの回答になると17%にもなった。自分にとって興味のある内容ならば、しっかりと話を聞いているが、興味が持てないと退屈する生徒も多いようである。

 学校の先生が講師に求めるものとしては、大人に話す感覚で講演するのではなく、児童・生徒に合わせた内容と話し方で、子どもの興味を引き付けてほしいとしている。

Q14.企業から提供されたビデオ、CD-ROM等の視聴の実施について(Q10で「企業から提供されたビデオ、CD-ROM等の視聴」を実施していると回答した人のみ)

どのような内容のビデオやCD-ROMを視聴させているかを聞いたところ、環境関連のものや、製品のできるまでや流通を紹介したもの、盲導犬の働きなどとなった。こうしたプログラムの評価については、「非常に評価している」が18%、「どちらかといえば評価している」が45%となり、工場見学の事前学習としてビデオを見たりするなど、有効な使われ方がされているようである。  児童・生徒の評判と関心については、64%が「どちらかといえば良い」と回答しており、「どちらかといえば良くない」「非常に良くない」との回答は1件も無かった。児童・生徒の興味を引くための教材として、ビデオやCD-ROMは、かなり有効なようであり、アニメや映像に対する、子どもの関心の高さがうかがえる。ただ、同じ教材を全学年で共通して使うことが多いので、学年別に使える教材がほしいとの要望もあった。

Q15.キャリア教育専門企業やNPOが実施するプログラム実施について(Q10で「キャリア教育専門企業やNPOが実施するプログラム」を実施していると回答した人のみ)

「キャリア教育専門企業やNPOが実施するプログラム」を実際に行ったのは、小学校1件、中学校1件、高等学校2件の合計4件で、回答数自体が少なかったことから、このデータだけで判断するのは多少無理があるかもしれないが、実際に行ってみての評価に関しては、「非常に評価している」が2件、「どちらかと言えば評価している」が1件、「無回答」が1件で、その評価は極めて高い。

 また、児童・生徒の評判と関心も、「非常に良い」1件、「どちらかといえば良い」2件、「無回答」1件で、概ね好評だったようである。こうしたことから、現時点では実施している学校は少ないが、これだけ評価の高いものならば、今後導入が進んでいくプログラムになるのではと考えられる。

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