3-2.節目にはこんな通信を(3学期冒頭編)
新年を迎え,いよいよ3学期がスタートしました。
心身ともに束の間の休息を挟み,心新たに登校してくる子ども達の目は,皆一様に輝いて見えます。
さて,「1月は行く」「2月は逃げる」「3月は去る」と言われるように,あっという間に過ぎ去っていく3学期は,短いながらも,1年間の学級経営の総仕上げをしたり,来るべき進級・進学に向けて様々な面で準備を整えたりしなければならない大切な時期。
そんなこの時期の私自身が考える通信のキーワードは,「時間」「まとめ」「新学年への見通し」などです。是非,3学期冒頭は,こうした概念をしっかりと子ども達に意識付け,良いスタートを切らせたいと思っています。今回は,今年の干支「竜」にふれて,そんな担任の所感を述べた記事(対象:5年生児童及び保護者)をご紹介。
実例5.2012年「辰年」に臨む
「辰」と言えば…「竜」。というわけで,新年第1号はこの「竜」にふれて所感を…。
「竜」を用いた代表的な四字熟語に,次のようなものがあります。
「竜頭蛇尾」…初めは勢いがよいが,終わりは振るわないこと。
【頭は竜のように立派なのに,尾は蛇のようにか細くて,前と後とのつりあいがとれない意から。】
「画竜点睛」…最後に大切な部分に手を加えて仕上げをすること。
【竜を描いて最後の仕上げに睛(ひとみ)をつける意から。中国南北朝の梁(りょう)の画家・張僧ヨウ(ちょうそうよう)が南京の安楽寺の壁に,睛のない2匹の竜を描き,「睛を入れればたちまち飛び去る」と言ったところ,人々は「妄想を言うな」と難じたので,1匹の竜に睛を入れると竜は瞬時にして壁を破って昇天し,睛を入れない竜のみ残ったという。 (出典:歴代名画記)】
通常,「画竜点睛を欠く」という形で,「ほとんど完成しているが,肝心なところが抜けているために,全体が駄目になっている」という意味で使います。いずれにせよ,物事を完成させるには仕上げが肝心であるということです。その仕上げを怠ると,それまで積み上げてきたことが水泡に帰することがあるということです。
それにしても…,上の二つの四字熟語そのものは,同じ「竜」という漢字を用いているのに,全く相反する意味になるのですね…。
さて,「竜」と言えばもう一つ,次のような言葉があります。
「昇竜が淵に潜むは,昇らんがためなり」
こちらも中国の三国志でお馴染み,劉備玄徳の言葉です。
物事を成就させるには,仕上げが肝心です。しかし,同じ時を過ごしているのに,取り組み如何によって結果は全く相反するものになります。最高学年への進級(昇る瞬間)に向けた5年生の総仕上げである3学期(淵に潜む時期)をどのように過ごすか…。決めるのは子ども達一人一人です。
保護者の皆様,3学期もどうぞよろしくお願いいたします。
(1) 子ども達の登校前に,教室の黒板にあらかじめ同様の(焦点を絞った)内容を記しておく。(担任)
登校してきた子から黙って読む。(子ども達)
(2) 教室に上がり,子ども達に問う。
『君たちが目指す5年生3学期は「竜頭蛇尾」と「画竜点睛」のどちらなのかな?』(担任)
「画竜点睛です。」(多くの子ども達)
(3) 読みの必然性が高まったと思われるこのタイミングで学級通信を配布。補説・確認。(担任)
(4) 再び子ども達に問う。
『君たちにとっての3学期の「点睛=足りない部分・仕上げの部分=課題・めあて」は何かな?』(担任)
「わたしは,6年生から最高学年のバトンを引き継ぐことです。」(Aさん)
「ぼくの点睛は,宿題を忘れずにすることです。」(Bくん)
「それは最後の睛(ひとみ)ではなく,(胴体を支える)足の辺りじゃな~い?」(別の子)
「あははは。」(みんな)
『点睛は一人一人の心の中にあるものだから,「宿題をきちんとする」でもよいのだよ。』と補説(担任)
「その証拠に,Bくんはみんなにとってはまだ不十分なこと(例えば大きな声で自分からあいさつをするとか)がちゃんとできているでしょ。」とさらに補説(担任)
「ぼくは発表がまだ不十分だから,6年生になるまでに発表回数を増やしたい。」(Cくん)
「うんうん。」(みんな)
「がんばれ。」(何人かの子)
(5) 一人一人の点睛(=めあて)を「知」「徳」「体」(伯仙小の教育方針「やさしく・賢く・たくましく」を意識させ)に分類し,紙に書かせる。
…といった感じで,学級通信をもとに,子ども達とこんな3学期開きを行いました。
残り3ヶ月。「私がまだ引き出し切れていない,子ども達一人一人の持っている力を最大限に引き出し,最高学年へとしっかりと送り出すこと」を,担任の『点睛』とした2012年初頭です。

西村 健吾(にしむら けんご)
米子市立福米東小学校 教諭
「豆腐のような通信を!(1.マメで 2.四角く 3.やわらかく 4.面白く)」をモットーに、学級経営に果たす通信の役割を見直し、日夜創意工夫に励んでいます。一つの実践提供になれば…。
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