2011.12.19
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

学期末にはこんな通信を!

米子市立福米東小学校 教諭 西村 健吾

gakusyukyokusen kumitate gakusyu

 

 3.節目にはこんな通信を(学期末編)

 いよいよ学期末を迎えます。学校現場の先生方は,大忙しの日々をお過ごしのことと推察します。かく言う私も,目の前の成績処理,通知票の所見作成に追われる毎日です…。

 

 そんな忙しい中ではありますが,この時期の学級通信は普段の時以上に大切にしたいものです。それは,子どもにとっても保護者にとっても,学期末という節目の時期である今だからこそ,すっと心に入っていく…,或いは心に響くことがあると思うからです。できればこの時期に,より効果的な通信を発行して,保護者との連携を強めたり,子ども達のさらなる成長へとつなげたりしていきたいものです。

 

 さて,そんなこの時期の通信のキーワードは「ふり返り」です。「人生は前向きに進むしかないが,後ろ向きにしか理解できない」。19世紀のデンマークの哲学者,セーレン・キルケゴールの言葉です。今回は,子ども達に,「過去をふり返り,成長の道筋や課題を理解する作業」から,「次なる成長」へとつなげていってほしいと願って作成した記事をご紹介。(この事例は小学校高学年以上が対象かと思われます…)

 

実例4.学習曲線から考える

 心理学で,学習曲線または努力曲線と呼ばれるグラフが存在します。X軸が学習や練習の量を,Y軸が成果を表します。

 普通,私たちは無意識のうちに,学習や練習の量が増えれば成果も上がると思いがちです。(→理想上の努力曲線)しかし,心理学で研究されている学習曲線によると,事はそう単純ではありません。

 

 実際のグラフ(↑)を見ると,子ども達の成長は,スロープ状(比例するもの)ではなく,階段のようなものです。つまり,成果がグンと上がるときと上がらないときが交互に表れるのです。

 最初は時間をかけてもちっとも上達しない状態が続きます。それがやがて努力の成果が出始め,急激に伸び始めます。ところが,ある一定の段階に到達すると,突然成長が止まったように見える状態に入ります。学習や練習を続けても一向に成果が表れないこのような足踏み状態のことを,心理学用語で「プラトー(高原現象)」と言います。 

 どんな学習においてもこのプラトーは必ず表れます。この状態の時は,努力を続けてはいてもなかなか成果が形になって表れません。場合によってはそれがかなり長く続きます。そういうときは努力が無意味に思えてきます。人が努力をやめるのは,多くの場合この状態の時です。 

 

 ですが,この状態の時こそ,次に大きく飛躍するためのマグマを養っているのです。この状態の時にこそ,努力を続けることが大切なのです。努力し続けていれば,それまでの状態とは見違えるように突然伸びるときがやってくるはずです。

 

 

 子ども達が本当に成長した2学期。その成長の営みは,この学習曲線から考えても,決して単純なものではなかったことでしょう。何度もあきらめ,努力をやめたくなるときがあったことでしょう。でも…,そんな時を,「自分に勝つ」強い心で乗り越え,努力を続けてきたからこそ,大きく成長した「今」があるのだと思います。

 いよいよ冬休み,少しだけ立ち止まり,その階段を上がってきた道のりをふり返りながら,来るべき飛躍の時に向けて,英気を養ってほしいと願います。

 

 ご家族お揃いで,良い年をお迎えください。

 

 

 

 学習・運動を問わず,日々のパフォーマンスの結果に,子どもも親も一喜一憂してしまいがちになります。かなり短期的な視点で…。良いときはそれでよいのですが,悪い時は,「こんなはずはない…。」「なぜ?」と,その結果に落胆し,悩み,時に憤るものです。そして,急激な成長が楽しくて楽しくて…といった頃の気持ちとは対照的に,成長が止まったように思えて,興味や意欲を失いやすくなるものです。

 しかし,この状態を,「こういうもの」「踏ん張り所」「次に発射するロケットの発射台を作る時期」と思えば,取り組みは180°変わるのではないかと思います。さらに,「より大きな発射台を作れば,ロケットをより高く打ち上げることができるんだぞ。」なんて教師の一言が加われば,子どもも親も,かえってこの時期をプラスととらえることができるのではないでしょうか?

 

 (1)子ども達への労いと励ましを,(2)保護者への安心感を,そして,(3)学期末業務が滞る自分自身への励ましをと願って作成した記事です。

 

西村 健吾(にしむら けんご)

米子市立福米東小学校 教諭
「豆腐のような通信を!(1.マメで 2.四角く 3.やわらかく 4.面白く)」をモットーに、学級経営に果たす通信の役割を見直し、日夜創意工夫に励んでいます。一つの実践提供になれば…。

同じテーマの執筆者
  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop