2014.12.02
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意外と知らない"教育委員会制度"~変わる教育委員会制度(vol.1)

平成26年6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第76号)」(以下、新地行法)が公布され、平成27年4月1日から施行されることとなりました。これは、現行の教育委員会制度を抜本的に改革する大きな改正となりますが、とても長い法律名で、一見して何が変わるのか想像できない方も多いと思います。そこで、今回から3回にわたり、本法律の全容を説明したいと思います。

「委員会」って何?

役所に行った際、なぜ教育行政分野だけ「○○部○○課」ではなく、「教育委員会○○課」とされているのか? と、不思議に思った方もいらっしゃると思います。

そもそも教育委員会とは、生涯学習、教育、文化、スポーツ等の幅広い施策を展開する合議制の執行機関で、全ての都道府県及び市町村等に設置されています。通常5名の合議体をとっており、全国で見るとその構成員は、「無職」が一番多く、その次に「医師・教員等の専門的・技術的職業従事者」、「会社役員等の管理的職業従事者」の順となっています。また、65歳以上が約4割を占め、教職経験者は約3割となっています(平成25年度教育行政調査より)。

ではなぜ教育委員会、つまり「教育分野」だけこのような特殊な形態を必要としているのでしょうか。

教育の内容については中立公正であることが極めて重要であり、政治的な干渉を受けるようなことがあってはなりません。そのため、「教育委員会」という機関を置き、教育行政を担当させることで、首長(知事、市町村長等)への権限の集中を防止し、中立的・専門的な行政運営を担保することとしています。

首長が教育委員を任命するものの、独立機関であるため、その長である教育委員会の委員長は教育委員会が決定し、具体的な事務執行の責任者である教育長の任命は教育委員会が行うものとされていました。また、教育委員会が決定、執行する事務を処理するために教育委員会事務局が設けられています(一般的に「教育委員会」と呼ばれているのは、この「教育委員会事務局」を指します)。

教育の中立性の確保という観点では現行制度は特に問題が無いようにも思います。では、何が課題となり、法律が改正されたのでしょうか。

何が問題だったの?

例えばいじめ等の問題に端を発して、現行制度の弱点がいくつか見えてきました。

まず、責任が明確でない点です。教育委員長と教育長について述べましたが、ここでいう教育委員長は、あくまで教育委員会の代表者であり、会議の主催者にとどまります。これに対し、教育長は具体的な事務執行の責任者となります。つまり、「長」の名がつく役割が二人いて、主催者と執行者が異なるため(現行法上は教育委員長と教育長の兼務はできません)、何か問題があった際、どちらが責任者として対応するのかわかりづらく、いわゆる「お見合い」の状態になってしまいます。特に現行制度上、教育委員長は「非常勤」であることも多く、「常勤」の教育長とスピード感が異なり、結果的に対応が遅れてしまう恐れもあります。

また、教育委員会の権限は教育行政全般に及びますが、予算の編成や執行権は首長にあるため、「予算を策定・執行する人間」と「予算策定・執行に必要な状況を理解している人間」が異なります。

更に、定期的に行われている教育委員会の会議は、今までも公開はされていたものの、傍聴者数も少なく、また、議事については公開が義務付けられていませんでした。そのため、事後的に十分な議論がなされているかチェックすることができず、透明性が担保されているとは言い難いものでした。加えて、民意を代表する首長が教育に関しては不可侵と認識してしまうため、教育行政に関し民意が十分に反映されていない状況でした。こういった状況に照らし、教育委員会制度の形骸化が批判されていました。

これらの課題に対応するため、「政治的中立性の確保」は維持しつつ、新地行法では、大きく四つの柱が立てられています。次回は、本制度改正の四つの柱について説明したいと思います。

参考資料
  • 文部科学省「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 志儀孝典

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