2026.09.28
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もっと知りたい"教育データ利活用"(第1回) 教育データ利活用とは

デジタル学習基盤*の整備が進み、デジタルドリルの単元毎の正答率や学習時間・回数などの学習履歴を確認することは当たり前になりました。2024(令和6)年3月に文部科学省が実施した「教育データの利活用に関する実態調査」では、複数のデジタル教材等で蓄積したデータの集約・見える化を行うダッシュボード機能を有するシステムを利用する自治体が全国の約15%、「今後利用を検討(検討予定)」の自治体が約54%と、小規模なものから大規模なものまで、教育データ利活用は普及と実運用のフェーズに入りつつあります。

本シリーズでは2回にわたり、改めて教育データ利活用を取り上げます。第1回は、今年2026年に改訂版が公開された、文部科学省の「教育データ利活用のステップ(β版)2.0」を軸に、「何のために」・「どのように」・「何を用いて」という問いを通して「教育データ利活用」の基本的な考え方をみていきます。

*1人1台端末と高速通信ネットワークを前提に、デジタル教科書・教材、学習支援ソフトウェア、CBT、学習eポータル、情報セキュリティ対策などを組み合わせて整備される、学校教育の総合的な基盤

「データを活用する教員の1日」のイメージ

「教育データ利活用」と聞いて、どのような光景をイメージするでしょうか。6年前に掲載した「意外と知らない"教育におけるデータ活用"(2020年公開)」では、2017年度~2019年度に実施された総務省や文部科学省の実証事業を取り上げ、当時先進的な学校・自治体で見られた取組事例や導入手順を紹介しました。

2020年に取りまとめられたガイドブックでは、朝、自分の学級に行く前に昨日の子どもたちの様子をチェックして声掛けが必要な子どもに気づき、授業中は子どもたちの学習活動を見取って授業を調整し、放課後に学級内の理解度を一覧でチェックし、学年の担任同士で具体的なデータを見ながら状況を共有する、というような1日が例示されていました。

また、養護教諭・スクールカウンセラー、保護者、教育委員会など、関係者との連携の際にデータを見ながら相談することで、より客観的にスムーズに状況共有したり、研修の際の取組の振り返りや課題意識の共有に活かしたりすることもできるとあります。さらに、複数の専門家が複数ツールのデータを集約して確認することで、多角的に状況を分析し、支援にあたる取組も紹介されていました。

教育データとは

これらの例では、健康観察、授業支援システム、デジタルドリルの正答率や取組状況、出欠状況、教育相談の記録など、様々なデータが登場しました。

上記では、子どもに関するデータだけでしたが、現在、文部科学省は、教育データを、児童生徒・保護者、教職員、学校運営に関するデータとして幅広く捉えています。教職員の在校時間や研修の受講履歴、学校評価の結果も「教育データ」と定義されており、また、場合によっては、予防接種の記録やひとり親世帯かなど教育委員会の外の部局のデータを組み合わせて活用することとも想定されています。

先の例では、主に教職員によるデータ利活用の事例を見てきましたが、データを活用するのは教職員だけではありません。児童生徒自身や教育委員会による活用、そして大学等の研究機関と連携して活用することも考えられます。

教育データ利活用の目的―文部科学省とデジタル庁の考え方

ここで、このような「データ利活用」を何のために行うのか、考えてみたいと思います。

■文部科学省の考え方

「教育データ利活用のステップ(β版) 2.0」および「教育DXロードマップ」を基にAIで作成

文部科学省は「教育データを利活用する目的は、端的に言えば、全ての子供一人一人の力を最大限に引き出すためのきめ細かい指導・支援を可能にすること」としています。この基本となる目的は、「教育データ利活用のステップ(β版)」の改訂版においても、前版から引き継がれている、一貫した考え方です。そして、目的の類型として、下記の5つを挙げています。

  1. 授業改善
    日々のデジタル教材上での正答率・学習時間や、定期・単元テストの結果、全国/地方の学力・学習状況調査の結果等をもとに、児童生徒が躓いている箇所や、家庭学習の状況等を見える化・分析し、授業改善に役立てる。
  2. 個別支援
    学習データと生活データを組み合わせ、児童生徒の学習状況や生活習慣、心身の健康状態を把握し、個別の支援に繋げる。
    学習や生活の目標、日々の学習状況・生活習慣等を見える化し、自らの振り返りを促すことで、学習・生活習慣の改善や定着を図る。
  3. 要配慮児童生徒への組織的な対応強化
    教育委員会保有データと、福祉など子ども支援の他部署保有データを組み合わせ、見守り対象とすべき児童生徒を抽出。就学前のこどもの情報も含め、学校と連携することで、早期対応や継続的支援に繋げる。
    不登校児童生徒への配信授業の参加状況やデジタル教材の取組状況等について、学校及び教育センターなど支援担当部署で共有し、出席認定や児童生徒・保護者とのコミュニケーションのきっかけとして活用する。
  4. 学校運営・学級経営
    児童生徒の学力・学習状況や生活状況、学校の課題や、教育委員会が進める施策の推進状況等を見える化し、課題がどこにあるかを検証。特に支援が必要な学校を特定し、支援を実施する。
    教員の在校等時間やストレスチェック結果等の見える化により働き方の改善方針を検討し、施策を実施の上、効果を検証する。
  5. 教育委員会による施策立案
    児童生徒の学力・学習状況や生活状況、教職員による学習指導や生活指導、教育委員会・学校が推進する施策の状況等を踏まえ、効果的な教育施策を立案・効果検証・改善する。

■デジタル庁の考え方

一方で、デジタル庁では、 2025年6月に「教育DXロードマップ」を策定し、少し違った角度から「教育データ利活用のミッションは『誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会を実現すること』」としています。そして、教育データ利活用を含む教育DXの関係施策として、以下の4つが挙げられています。

  1. デジタル化による教職員の負担軽減
    目指すべき方向性として「校務DXにより必要なすべての業務がデジタル完結し、システムの相互連携により入力はワンスオンリーとするとともに、生成AIを校務で積極的に活用することで、教職員の事務作業等の負担が大幅に軽減され、子供に向き合う環境が実現されている。」が掲げられています。
  2. 多様な学びのための学習環境の整備
    目指すべき方向性として「それぞれに興味関心や特性、キャリアの方向性などが異なる学習者が、1人1台端末から多様な学習リソースへのアクセスが可能となっているとともに、1人1台端末を活用し、いつでもどこからでも、誰とでも学習できる環境が整備されている。」が掲げられています。
  3. データによる学習者の自己理解・教師の見取りの充実
    目指すべき方向性として「システム・ツールがセキュアな環境において標準規格によって相互に接続され、教育データが標準化されることで、ツールを越えた安全・安心なデータ利活用が可能となり、学習者の自己理解や教師による見取りを支援できる。」が掲げられています。
  4. 生涯を通じて学びのデータを活かせる環境の整備
    目指すべき方向性として「転校・進学・卒業等に関わらず、データが適切に管理され、連続性が担保されるとともに、データの真正性が保証されることで、学習者が自らの意思に応じて学修歴証明やデータの提供を行うことで、自己実現や必要な支援のために活用することができる。なお、こうした方向性を目指しつつ、就学前や高等教育機関においては、まずはデジタル化を徹底し、教職員等の業務負担の軽減や学生・利用者の利便性向上につなげる。」が掲げられています。

文部科学省とデジタル庁で切り口は異なりますが、どちらも子どもを中心に、子どもが自分らしく学んでいけることを支えることを、目指していると考えられます。

教育データ利活用を整理する「3つの問い」

次に、その目的達成のために、どのように「データ利活用」を設計するのが良いか、考えてみましょう。

「教育データ利活用のステップ(β版)2.0」では、教育データ利活用の在り方を、次の3つの問いとして整理しています。

  1. 何のために――データ利活用の目的
  2. どのように――データ利活用の方法
  3. 何を用いて――システムなどの実装手法

「教育データ利活用のステップ(β版)」の改訂前と2.0版の目次を比較すると、改訂前の版では「何を用いて」構築するかを軸として構成されていたのに対し、2.0版では「何のために(目的)」、「どのように(方法)」、「何を用いて(システム)」の組合せで考えることができるよう構成されています。

「何のために」は上で紹介しました。「どのように」は、4つに分類されています。

  1. 見える化
    データを視覚的に把握しやすい方法で示し、課題を特定の上、個別の状況に応じた対応をとる。
  2. 共有 
    教職員間や学校・教育委員会間等でデータを共有し、協働で課題解決に取り組む。
  3. 検証 
    データの分析による効果を検証し、課題背景の深掘りを行い、ネクストアクションに繋げる。また、ネクストアクションの論拠とする。
  4. 予測 
    データを用いて顕在化していないリスクを予測し、早期対応に繋げる。

また、「何を用いて」も4つに分類されています。

  1. 個別アプリ・システム
    各種学習ツール、校務支援システム等と保存データを、それぞれ単独で利活用する。
  2. データ連携機能付システム
    データ連携機能を含むシステムを活用し、複数ツール・システムのデータを利活用する。
  3. 表計算
    複数ツール・システム等のデータ等を、OS標準の表計算ソフト等を用いて利活用する。
  4. 独自構築システム
    独自にデータ連携基盤やBIツール、分析ソフト等を組み合わせ、複数ツール・システムのデータを利活用する。

「3つの問い」を「データを活用する教員の1日」の例に当てはめてみる

AIで生成

初めに紹介した事例に、「教育データ利活用のステップ(β版)」の各類型を当てはめてみましょう。

朝、前日までの子どもたちの様子を確認する例は、「個別支援」のために、学習eポータルや校務支援システムなどの「個別アプリ・システム」に蓄積された健康観察データの推移から、体調を崩す可能性のある児童生徒を「予測」し、ハイライトされた結果を確認する事例です。

一方、放課後に学級内の理解度を確認する例は、「授業改善」のために、デジタルドリル(「個別アプリ・システム」)のデータを教員同士で「共有」し、次の授業について相談する事例です。

最後に、教員と養護教諭などが連携する例は、「要配慮児童生徒への組織的な対応強化」のために、デジタルドリルと校務支援システムなど複数システムのデータを統合し(「独自構築システム」による「見える化」)、専門性の異なる教職員間で「共有」して、支援方針を相談する事例です。

今回は少し抽象的な事例から、教育データ利活用の基本的な考え方を整理しました。次回は、具体的な事例を通じて、教育データ利活用を日常の導線にのせる工夫、AIなどの登場による最新動向、さらにその先の研究段階の試みを紹介します。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 主任研究員 堀越 泉

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