2020.04.08
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意外と知らない"教育費の補助"(第2回) 無償化/保護者への補助

第1回は学校法人への補助金についてご説明しました。第2回では児童生徒や保護者への補助制度(保育料・授業料等の補助金を受け取るのは学校法人)について説明します。
2019年5月10日に、幼児教育・保育を無償化する「改正子ども・子育て支援法」と、低所得者世帯を対象に大学等の高等教育を無償化する「大学等における修学の支援に関する法律」が成立しました。今回はこれにより新設された2つの制度と、同じタイミングで始まった「私立高等学校授業料の実質無償化」と呼ばれている高等学校等就学支援金制度の拡充についてご紹介いたします。

幼児教育無償化

2019年10月から消費税率が10%に引き上げられました。過去消費税の増税は日本では3回ありましたが、いずれも増収分は高齢者福祉や医療等の社会保障に充ててきました。今回、子育て世帯の負担軽減を狙いとして、新しく得られる1年あたり約4兆6000億円のうち約8858億円(2020年度予算案)を財源に、約300万人の子どもを対象とする幼児教育無償化が2019年10月から同時にスタートしています。少子高齢化社会に突入している日本にとって、とても重要な制度です。

3~5歳児はほとんどが対象

政府広報より転載

対象は主に3~5歳児、いわゆる幼稚園の年少~年長の3年間です。世帯収入に関係なく全員が対象です。通っている施設によって3つのパターンがあります。
1つ目は、保育所や認定こども園、子ども子育て支援新制度に移行した幼稚園に通う場合で、保育料は全額無償になります。
2つ目は、認可外保育施設に通う場合。保育の必要性の認定を受けている場合、37,000円/月が補助されます。
3つ目は、従来の制度の幼稚園に通う場合。この場合は、全国平均を基に算出された利用料25,700円/月が補助されます。しかし、都市部では保育の必要性の認定を受けていながら待機児童問題により保育所に入れず幼稚園に通う児童がいます。この場合は幼稚園が実施する預かり保育の費用が最大11,300円/月補助されます。

細かいところでは幼稚園の場合は満3歳になったその日から無償化対象になりますが、保育園の場合は満3歳になった翌4月から無償化の対象となります。幼稚園の預かり保育利用料についても満3歳になった翌4月からが対象です。
他には、保育園では今まで主食費は実費、副食費(おかず・おやつ等)は利用料に含まれる形でしたが、幼児教育無償化以降は両方とも実費となり無償化対象となりません。(ただし住民税非課税世帯及び世帯年収360万円以下の世帯は、副食費は免除になります。)
また、入園料や交通費(スクールバス代)や行事費は無償化の対象にはなっていません。
既にアメリカやイギリス、フランス、スウェーデン、韓国等海外でも幼児教育が無償化されています。移民や貧困層の子どもたちがその国の公用語や習慣をある程度学んでから就学することは、ドロップアウト防止にもなります。

なお「幼稚園類似施設」と呼ばれる、幼稚園と同様の教育を行いながら、園庭が狭い、自然体験活動を中心とした活動をしている、預かり時間が短いなど幼稚園設置基準を満たしていない認可外幼稚園は、今回の無償化の対象外であるため、救済方法が検討されています。

0~2歳は住民税非課税世帯が対象

住民税非課税世帯の場合は0~2歳児も無償化の対象となります。こちらも通っている施設によって2つのパターンがあり、いわゆる保育所や認定こども園、地域型保育や企業主体型保育事業の場合は、今まで月1000~4000円程度の保育料を負担していた人も全額補助になります。認可外保育園の場合は42,000円/月が補助限度額となります。
なお、地域型保育には主に次の4種類があります。
1つ目は定員19人以下の小規模型保育(認可保育所は定員20人以上が原則です)。待機児童が多い都市部に見られます。
2つ目は家庭的保育。家庭福祉員(自治体により家庭的保育者、保育ママ等の名称があります)1人につき3人の児童を預かることができます。保育場所は家庭福祉員の自宅等様々なスペースを利用可能です。この家庭福祉員は保育士の資格がなくても市町村の指定した研修を修了していれば従事可能です。
3つ目は事業所内保育。企業などの従事者のための福利厚生として保育所を開設しているケースです。
4つ目は居宅訪問型保育。これは障がいや疾患等の個別ケアが必要な場合や保育施設がなくなってしまった地域で維持する必要がある場合などに保護者の自宅に訪問して保育を行うものです。
企業主体型保育は、事業所内保育と似ているのですが、認可外保育所扱いになります。複数の企業が主体となって設置者になったり、従業員の働き方によって夜間や休日の受け入れを行うなど比較的柔軟に対応できるものです。

私立高等学校授業料の実質無償化

2010年度から「公立高校」は実質無償化されていました。これは「高等学校等就学支援金制度」というもので、年収910万円未満の世帯に限り国立高校では年間11.5万円、公立私立高校では11.8万円が支給されるというものです。公立高校ではこの11.8万円で授業料がまかなえます。
私立高校の場合、年収290万円以下の世帯は29.7万円、年収350万円以下の世帯は23.7万円、年収590万円以下の世帯は17.8万円と支給額が階段状になっていましたが、2019年度授業料の全国平均は約40万円となっており、私立の多い五大都市圏の都道府県は、学力不足で公立に進学できない場合もあることから、独自で補助金を出して実質無償化を実現していたところもありましたが、多くの地方都市では公立高校に比べ保護者の負担が大きいことが課題になっていました。
そこで、2020年4月~国の就学支援の制度が拡充され、年収590万円以下の世帯については一律39.6万円まで引き上げます。「うちは裕福じゃないから私立には通わせられない」という悩みを持った世帯を助ける補助制度となっています。

高等教育無償化

2020年4月から、同じく消費税の増収分のうち約4880億円(2020年度予算案・約51万人分)を財源として、最大で学生全体の2割・約75万人を対象とした高等教育(大学や短大、専門学校等)無償化制度もスタートしています。申し込みは2019年11月から開始されています。
日本学生支援機構の「学生生活調査」(2016年度)によると、奨学金を受給している学生の割合は、大学学部(昼間部)で48.9%、大学院修士課程で51.8%、大学院博士課程で56.9%となっていますが、大学進学には多額の費用がかかるため、返還の負担も大きく、保護者の経済力によっては進学を諦めざるを得ない子どもたちが多くいました。日本では高卒者と大卒者の生涯年収は約4000万円の差があると言われています。低所得者世帯の子どもが十分な教育を受けられず、結果その子どもが低所得者世帯になってしまうという負のスパイラルを打ち切り、格差を是正するための制度です。
具体的には「入学料+授業料の減免」+生活費の支援(給付型奨学金)となっています。補助額は、国公立大学と私立大学、自宅生と自宅外生等の要件によって定められています。生活費の額は、上記の日本学生支援機構の調査結果の平均値から算出されています。

国立大学 公立大学 私立大学
入学金の減免 入学金(28万2,000円)を免除 国立大学の入学金(28万2,000円)が上限 私立大学の入学金の平均額(26万円)が上限
授業料の減免 授業料(53万5,800円)を免除 国立大学の授業料(53万5,800円)が上限 国立大学の授業料+私立大学の平均授業料(約90万円)と国立大学の授業料の差額の1/2程度を加算した額(70万円)が上限
生活費等の給付型奨学金 自宅生 35万400円
自宅外生 80万400円
自宅生 45万9,600円
自宅外生 90万9,600円

「授業料等減免額(上限)・給付型奨学金の支給額」
「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果」より作成

3つの条件

対象となる世帯は次のように3段階に分かれています。(家族構成によって異なります。)
住民税非課税世帯(年収270万円未満)⇒ 満額支援
年収300万円未満の世帯 ⇒ 住民税非課税世帯の2/3
年収300万~380万円未満の世帯 ⇒ 住民税非課税世帯の1/3

そして、これらの条件を満たす人が全員補助を受けられるわけではありません。生徒側は高校時代の成績や学習意欲、また大学等入学後の学習態度等(単位修得状況や出席率)が見られます。留年すると支援が打ち切られます。
また、高等教育機関側にも、実務経験のある教員が授業科目担当として配置されているか、財務状況や教育状況等の経営情報をホームページ上で一般公開しているか等の要件があります。9割以上が対象となっていますが、受験しようとする学校が対象外という場合もあるので文部科学省のホームページで確認する必要があります。

このようにすべての子どもたちが幼児から社会人になるまで質の高い教育を受け、社会で活躍していけるように様々な補助金事業が成り立っています。

構成・文:株式会社内田洋行 教育ICT事業部

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