2016.12.21
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意外と知らない"教育と予算"(vol.2)

意外と知らない

前回は、国家予算に占める文教関連予算の割合や、文教関連予算のうち「義務教育費国庫負担金」や「教育振興助成費」がその大半を占めることを説明しました。今回は、この文教関連予算に含まれないものの、我が国の文教政策に極めて密接に関連する「地方交付税」について説明します。

地方交付税とは?

地方公共団体は、教育・警察・消防等の様々な行政サービスを提供していますが、これらの財源として地方税を徴収しています(住民税もこれにあたります)。但し、地域によって経済状況や人口等の格差が存在し、自前の地方税徴収だけで等しく高品質な行政サービスを提供することは不可能です。

そのため、各地方の財政格差を是正するものとして「地方交付税交付金」が国から支出されることとなります。

地方交付税は、全ての地方公共団体が一定の水準を維持し得るよう財源を保障するため、国税として国が代わって徴収し、再配分する「国が地方に代わって徴収する地方税(地方固有の財源)」と言われています。具体的には、国が徴収した所得税及び法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の22.3%、地方法人税の全額が総額となり(地方交付税法第6条)、それを後述する算定式の下に地方に再分配する形となります。総額は平成28年度で約15.7兆円であり、社会保障費(約32兆円)、国債費(約23.7兆円)に次いで大きな予算となっています。

また、地方公共団体であれば必ずしも地方交付税交付金が支出されるということではありません。地方交付税の趣旨を「財政格差を是正する」と書きましたが、地方公共団体単独の税収等で十分な行政サービスが期待できる団体(需要を上回る収入がある団体)は、「不交付団体」として、交付金の支出対象から外されています。平成28年度現在、都道府県では東京都の1団体、市町村では76の地方公共団体が不交付団体とされています。

地方交付税は何に使われるの?

では、地方交付税交付金は何に使われるのでしょうか。ここでポイントとなるのが、前述の「地方固有の財源」であるとの考え方です。国から支出するもののあくまでこれは「地方固有の財源」であり、その使途は地方に委ねられています。

お小遣いに例えるとわかりやすいかもしれません。妻や母(国)は、夫や子(地方)に対し、食事代がいくら、交際費がいくら、書籍代がいくらというように使途を想定して一定額が入った財布を渡しますが、財布の中身をその通りに使うよう制限するわけではなく(ご家庭によっては制限される所もあるかもしれませんが……)、実際には食事代でほとんどなくなってしまう場合もあると思います。これと同様、国は地方に対してその使途を制限したり、条件を付けたりすることはせず、地方が必要とする行政分野に交付金が活用されることとなります。

財布の中身は?

では、その財布の中身はどのように計算されるのでしょうか。これを計算するためには、各地方の需要と収入の差を計算し、必要な額を算出する必要があります。

この需要が「基準財政需要額(地方が必要な額の基準)」、収入が「基準財政収入額」とされ、その差が地方交付税交付金となります。

地方交付税による財源措置のイメージ

出典:総務省

基準財政需要額とは?

基準財政需要額は地方が必要となる額の基準を示したものですが、これは、「単位費用(地方行政を行うために必要とされる経費)×測定単位(各費目ごとの需要を表すのに適切な単位)×補正係数(前提条件の違い(地方ごとの気象環境や面積、人口密度、都市化の程度等)を反映するためのもの)」で表わされます。

前置きが長くなりましたが、この基準財政需要額の「単位費用」に、文教政策に密接に関連する事項が含まれています。具体的には、第1回で述べた教員の給与の残り3分の2や、ICT環境の整備費、教材備品整備費、学校図書館の整備費、公立大学の支援等が含まれています(この場合の「測定単位」は適宜教員数や学校数、学級数とされています)。

ICT環境の整備

ICT環境の整備については、特に「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」として、平成26~29年度で総額約6,712億円(単年度約1,678億円)の地方財政措置が講じられています。この措置額の中には、第2期教育振興基本計画で目標とされている整備水準を達成するため、教育用コンピュータや電子黒板、実物投影機、無線LAN整備等が含まれており、1校当たり小学校(18学級)564万円、中学校(15学級)563万円、高等学校(600人程度)434万円、特別支援学校(35学級)574万円が積算され、21世紀に相応しい学校教育を実現できる環境の整備を図ることとされています。

もっとも、現状のICT環境整備の状況に照らすと、実質は1,678億円全てが活用されているわけではなく、実質的にはその6~7割の活用率なのではないかと推定されています。「意外と知らない“ 学校図書館”(vol.1)」でも別の用途に使われてしまっているという話を紹介しましたが、ICT環境の充実を図るため、この財源を効果的に活用することが求められています。

目標実態
教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数 3.6人 6.2人
電子黒板の整備 学級当たり1台 21.9%(普通教室)
超高速インターネット接続率 (30Mbps以上) 100% 84.1%
無線LAN整備率 100% 25.9%(普通教室)
校務用コンピュータ 教員1人1台 116.2%

(実態:「平成27年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」より)

教材備品の整備

教材備品については、文部科学省から「教材整備指針」が公表されており、それに合わせて、平成24~33年度の10年間の「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」が発表されています。これは、「教材整備指針」に沿った教材備品を整備するために、10か年総額で約8,000億円、単年度約800億円(小学校:約500億円、中学校:約260億円、特別支援学校約40億円)を措置するもので、具体的には、現在の学習指導要領に対応するため、小学校の外国語活動(音楽プレイヤーやカード教材など)や中学校の武道等の対応教材の整備、小学理科教材(標本や人体模型など)の整備等が掲げられています。

まとめ

以上、2回にわたり「教育と予算」について説明してきました。一口に「教育に関する予算」といっても、教員の給与から私学・大学の助成、教科書等まで、本当に多岐にわたることがわかります。また、これに加えて、地方交付税として教材備品やICT環境の整備も入ってきます。

ただ、これを生かすも殺すも、行政の取り組みにかかってきます。特に、総額15.7兆円にも及ぶ地方交付税については、その使途が地方に委ねられていることから、単位費用として計上されている意義や趣旨を十分に理解し、それぞれの取組を進める必要があります。

私達も地域住民の一人として、地方財政がどのように使われているのか、きちんと教育に活用されているのかを意識していく必要があると考えられます。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 志儀孝典

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