2008.03.08
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フィルタリング問題の本質はどこにあるの?

株式会社オーグメント 代表取締役 渡辺 俊雄

前回、「携帯におけるフィルタリング」では、ある会社が実施し公開した調査結果を採り上げて話のネタにしてみました。しかし、同じようなことを考える人は多いようで、その後もいろいろなところから同様の調査結果が公開されています。

その結果を見ると、数字的な多少の違いこそあれ、概ね中高生の7割から8割がフィルタリングに対して何らかの不満を持っているようです。特に、コミュニティ関連サイトにアクセスできなくなることに対する抵抗感が根強いことから、いまや携帯電話は、中高生にとってもコミュニケーションをする上で欠かすことのできない非常に重要なポジションにあるということが裏付けられた点には興味が湧きます。

ところで、その“フィルタリング”ですが、総務省の要請に応じたNTTドコモとKDDI(au)が採用した「ホワイトリスト方式」に対して、当の総務省から「ブラックリスト方式にしてくれ」という要請が来たみたいですね。(汗;) で、その理由なのですが、いろいろとニュースなどを見ていると、ホワイトリスト方式だとNTTドコモやauが認めた公式サイトしかアクセスできなくなるということで、携帯向けコンテンツ提供会社などから反発が広がったためという“大人の事情”のような……。

あくまで個人的な感覚ですが、“本当に”危険なサイトというのは頻繁にアドレス(URL)を変えるため、実はブラックリスト方式で排除するのは非常に難しという事実があります。昨日は“その”URLだったのに、今日は“この”URLになっているなどということは日常茶飯事ですから。^^;

# 何でもそうだと思うのですが、確信犯は別として、普通、“やばい”ことをしていたら、同じところにじっとしてませんよね。それと同じです。

その意味では、ホワイトリスト方式という選択は必ずしも間違いだとは言えません。問題なのは、「このサイトならアクセスしてもいいよ」という判断が携帯電話会社(携帯キャリア)側に握られてしまうと、彼らの意に沿わないコンテンツ提供会社などが排除されてしまう可能性が出てくるということなのではないでしょうか。

もちろん、大きな会社になるほど社会的責任は大きくなりますから、あからさまな行動が取られることはないはずです。とはいえ、不安がある以上は可能性の芽を摘んでおこうということなのかもしれません。“そのサイト”が有害か否かを第三者が評価する機関を作るべきという意見もあるくらいですから。

本来、フィルタリングの話は、子供を危険から遠ざけるにはどうしたらよいかという問題に端を発しているはずです。しかし、現状では携帯キャリアとコンテンツ提供会社の綱引きばかりが目立ち、一番大切なはずの子供の利益が置き去りにされているような気がします。

何度も繰り返し言っていることではありますが、フィルタリングは、有害なサイトを遮断するための一手段に過ぎないということを忘れてはいけません。それなのに、現状ではあまりにも“フィルタリングありき”で話が行われています。これが残念でなりません。

本質的な解決のためには、子供に対して何が安全で何が危険かということを自分の頭で考えさせていくことこそが大事で、そのためには話し合うことが一番効果的です。押しつけではなく、お互いが納得できる形を作るための努力こそが、いま求められているような気がします。

渡辺 俊雄(わたなべ としお)

株式会社オーグメント 代表取締役
1958年、東京生まれ。メーカー系システムエンジニア、大手コンピュータ出版社の書籍編集者、インターネット関連組織の広報などを経て2006年に独立。大学生と高校生の二人の子どもを持つ。

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