2008.03.04
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「これ○○産?」――「よい物」をとるか、「安い物」をとるか

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「これ、中国産?」
お皿に盛られた給食を指差し、5年生が叫びます。
「春雨って、中国産なんでしょ?」
ほかの子どもたちも不安げな顔に。五目スープに入っていた春雨を発見したのです。
「だいじょうぶだよ。墨田区では、区の教育委員会が検査の結果を確認したものしか使っていないんだよ。」「そうだよね、春雨って、中国産だよね。えらいね。ちゃんと産地を確認しているんだね」

実は、春雨を食材から外すかどうか、一度は迷ったのですが、春雨など、中国産しか手に入らない食材もあることに気づいてもらうよい機会ではないかとあえて使うことに。給食後も、何人かの子どもが確認にやってきました。
食材の産地に関心が向くようになったことは、とてもよい機会でした。

(区としては、農薬の検出率の高い「きくらげ」については使用を避けるように注意がありました。)

教育委員会から、中国産食材の取り扱いについて、毎日のようにFAXが送られてきます。
特に最近は「マッシュルーム」。幸いにも本校は、ずっと国産のものを使用してきたので、「あ~またかぁ」と文書にちらりと目を通すだけで済んでいますが、「中国産マッシュルーム」を使っていた学校現場は、献立や注文の変更、保護者への連絡など忙しい毎日を送られていたのではないでしょうか。ぎりぎりの給食費で運営していくと、「国産がいいことはわかっているが、値段が高くて使えない」と渋々、輸入食材を発注することも度々あります。前回紹介した「給食費の改定」についても、「これだけの食材を使いたいから」と要望しても、「輸入食材で十分。国産にこだわることはない」といった具合。保護者も両極端になりつつあり、「よりよいもの、安全なものを第一に」と望む保護者もあれば、「とにかく、食べさせてくれればいい」という保護者も。アレルギーについて「個に応じた給食」と対応を求められていますが、いずれ、「食材」についても「希望するもので」となりかねない状態です。

給食費の未納問題もあり、給食の事前申し込みが注目を浴びつつあります。給食が食材も含めて外部委託された場合、栄養面だけでなく「安い物」と「よりよい物」の選択肢も加わっていくのでしょうか。

「食材の取り扱いについて」というFAXを見るたびに、「子どもたちみんなが“安全”な食事をとれるような取り組み」に国(特に文部科学省)が動かないことに歯がゆさを感じずにはいられない毎日です。


写真中 給食では、肉まんも手作りです。
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宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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